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第26話 俺はロキか

「おら、ユキ! 開けろ!」

 部屋のドアをガチャガチャ開けようとする音が聞こえていたが、それでもユキはベッドから出ようとはしなかった。

「ったく。非常事態だからな」

 呪文の後に、鈍い音がして扉が取り外された。蝶番を吹き飛ばしたらしい。

 ずかずかと部屋に踏み込んできたライルは、ユキが被っていたシーツを引っぺがした。

「起きてはいるな。よし、さっさと制服に着替えろ」

「……放課後でしょ」

 顔を上げずに答えたら、無理やり顎を引き上げて目を合わせてきた。

「そう、放課後だ。だが、ロキを殺したくて仕方がない覆面のお兄さん方がおいででな。お前をご指名なんだよ」

 ユキはぼんやりとライルを見上げた。言葉は相変わらず乱暴だが、怒っている風ではない。だからと言って、平静でもないが。

 ライルは不満げに鼻を鳴らすと、ハンガーにかかっていたユキの制服を取って投げつけてきた。

「しばらくは、委員長が話を繋いでてくれる。出ていくにしろ逃げるにしろ、制服ぐらいは着とかねぇと格好つかないだろ」

 そういう当のライルは、制服ではなく厚手の鎧下を着ていた。剣の訓練でもしていたのだろうか。

 いずれにせよ反抗する気力もないので、ユキは仕方なくベッドから立ち上がり、制服のローブを頭からかぶる。

「襲撃してきたのは、覆面をした手練れの魔法使い達だ。十数人は間違いなくいるが、二十よりは少ないと思う。どうも、人が減るタイミングを狙われたらしい。さらには、学園の主要戦力を魔法で校舎外に吹き飛ばして結界を張った」

 そう言えば、さっきから妙な音は聞こえていたっけ。

そんな事を思いながらローブを整え、腰のところで帯を結ぶ。

やる気がな無いからかなりゆっくりなのだが、ライルは急かさずに状況の説明を続ける。

「そのうえで、ロキを出せと来たわけだ。委員長がロキなんて知らないってすっとぼけてみたが、ユキを名指ししてきた。かなり下調べしたうえで来てるのは間違いないな」

「詳しいんだね」

「どうするにしろ、情報はいるだろうが」

(どうしたいんだろうね)

 ライルの様子を見ていても、ユキに何を望んでいるのかはよくわからなかった。

「教官や学生は、ほとんど静観って感じだな。元々、ロキと関わり合いになんてなりたくないってのが多数派だったんだ」

「そうだろうね」

 ライルに比べれば、こちらは分かりやすい。

厄介者はいない方がいい。自分以外の誰かが片付けてくれるなら最高だ。

誰だってそう思う。

「そうだろうねって、お前……」

「いいよ。行こうか」

 外された扉をくぐると、ちょうどこちらを覗き込もうとしていた幾人かがパッと離れる。ユキにとっては、元の世界でも見慣れた動きだった。

 ライルが追ってくるのを背中で感じつつ、ユキは真っ直ぐに歩く。

 本当に真っ直ぐ、廊下を3歩で横断し、開けっ放しの窓枠に足をかける。

「おい、ユキ、待て」

 ライルの制止の言葉を聞くころには、ユキの身体は窓の外を落下していた。

 地面に落下する直前に魔法を使い、衝撃を殺す。

 中庭についてまず感じたのは殺気。濃茶の頭巾と身体にぴったり合ったスーツでそろえた襲撃者たちが、親の仇でも見るかのような憎しみのこもった眼で睨みつけてくる。

(本当に親の仇なのかもね)

 ロキがしてきたという話から考えれば、そう思われていても仕方がない。

 次に感じたのは畏怖と疎外の視線。中庭を囲む校舎の窓から、おっかなびっくりユキに視線を向けている学生や教官たち。

 ユキの視線がそちらに向きそうになると、そそくさと目をそらしたり壁に隠れたりする。進んでユキを排除しようとは思っていないが、排除されてくれる方がありがたいと思っている。そんなよく見たことのある視線だ。

 そうではない視線が1つ。エルヴィナだ。

 なぜかモトリの手が首筋に当てられているが。

「ユキぃぃ」

「大丈夫」

 すぐ終わるよ。

ユキがいなくなれば襲撃者たちも帰還し、全てが問題なくなる。そのはずだ。

その例外になりそうなのが1人。

車いすに座ったまま、ライルと同じ、何を言いたいのかが分からない視線を向けている。

ユキはその視線から目をそらす。

長くつややかだった黒髪はショートに刈られ、顔の右と左で微妙に色が違う。

そして、その足。

長ズボンをはいているが、右足のすそは膝のあたりで結ばれ、そこから先が存在しないことを物語っている。

「アーベル、ごめん」

「詫びなんぞ要らんわ」

 ユキはアーベルの横に立ち、そのすぐ前に立つ襲撃者をみる。

 襲撃者は全員同じ格好だが、アーベルと正対しているということは彼がリーダーなのだろう。

「答えぇや、出席番号13番。あんたはロキか?」

 アーベルが握った斧をユキの喉に突きつける。

(そっか)

 磨き上げられた斧の刃に映る自分の顔を、尖った耳を見て、ユキは不思議と落ち着いていた。


 皆がそう望むなら、俺がロキでいい。

 誰かに望まれるままに、追い出されていくのには慣れている。

 元の世界でもそうやって住所を転々としたし、ついには異世界まで来てしまった。

 その異世界すらも俺を追い出したいなら、

もう、それでいい。

 

 そんな気持ちで、頷こうとした時だった。

「違うよ!」

初めて評価つけて頂いて、作者はハイになってます。

まあ、ユキくんの方は超ローテンション状態ですけどねっ

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