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第23話 敵意の包囲網

二匹目のドジョウが一匹目より大きかったらどうする?

そりゃ三匹目狙いに行くよね。

ということでギリ3桁のPVでも舞い上がる雑魚作者の3日連続投稿です。

皆さんのリアクションで生きているので、ブックマーク、評価、感想等増えればもっと書きます。

 学園に戻ったエルヴィナは、まず教室に向かった。

 しかし、もう放課後だ。ティカたちが魔法の練習をしているだけで、リエル先生は居なかった。

 職員室に向かう途中、教師を表すストールをつけた男性がいたので、知らない顔だが尋ねてみる。

「えっと、リエル先生を見ませんでしたか?」

 振り向くまでは柔和な笑みを浮かべていた男性だったが、エルヴィナの魔晶石の羽を見た瞬間、顔をしかめる。

 嫌悪、あるいは忌避。

 エルヴィナが彼を知らなかったように、彼もエルヴィナの事は知らないだろう。だが、ロキに精霊王が付きしたがっていることは知っているのだろう。

 同じ空気を吸うのも嫌だとばかりにストールの端で口元を覆い、黙って中庭の方を指さすと足早に去っていった。


 中庭には、確かにリエル先生がいた。

 教室からでは分からなかったのは、木が茂りすぎているせいだ。

イラズア襲撃の後に、傷ついた樹木を魔法で治したのだが、エルヴィナが手を貸したこともあって少しやりすぎた。その剪定がまだ間に合っていないのだ。

リエル先生の周囲には大きな魔法の構成が展開されていた。

「言の葉の鳥よ。我が友に繋げ」

 エルフ語の最後の一音が構成から風の元素力で出来た鳥を生み出す。

その鳥はまっすぐ上に飛び上がると、北の方へと飛び去って行った。

「リエル先生、ちょっとお話したいんですけど」

「え、ええ。いいわよ」

 魔法に集中していたのか、リエル先生はエルヴィナの接近に気づいていなかったらしい。

 急に呼びかけられて驚いているが、エルヴィナはそのまま話を続ける。

「ユキの事なんですけど」

「ちょっと待って、その話をするなら」

 リエル先生は唇に指を一本当てて一旦エルヴィナを黙らせると、手早く魔法を組み上げる。

 風の魔法であることを見て取って、エルヴィナは元素力をその構成に注ぎ、発動までの時間を短縮した。

 魔法がさっと広がり、リエル先生とエルヴィナを包むのがわかる。おそらく、盗み聞きを遮る結界魔法だろう。

「これでいいわ。ありがとう。流石は風の精霊王ね」

「みんなに、ユキをロキじゃないって思ってもらえるには、どうしたらいいでしょうか?」

 早速本題に入るエルヴィナ。

「一番いいのは、ユキくん自身が出てきて、普通に過ごすことだと思うんだけどね」

イラズアの言葉以外の証拠なんて無いんだし、と付け加えながら、大きなため息をつく。

「……無理だと思います。あたしですらさっき、別の先生にすごい目で見られましたし」

「そうね。ユキくんも元々そういうタイプじゃないし」

 もう一度ため息をつくリエル先生。

 できない理想を語っても仕方がないので、エルヴィナは別の可能性を模索する。

「入学試験の時の、嘘が付けない部屋は使えないですか?」

「駄目ね。部屋としては使えるし、同じ魔術を別の場所にかけることもできる。でも、あの魔術は誤魔化し方があるの」

 首をひねるエルヴィナに、リエル先生は講義を続ける。

「あれは嘘のつもりで言った言葉にエコーがかかる魔術だから、間違ったことでも言ってる本人が本当だと信じ込んでいたり、本当の事の一部を隠して騙す場合には効かないのよ」

 そう言われて、エルヴィナは入学試験の時を思い出してみる。あの時はユキが東方大陸の出身だと嘘をつこうとしたときにエコーがかかった。その前に、リエル先生がわざと自分が男だって言って確認してたっけ。

「そして、他ならぬロキ自身がそういうやり方であの魔術を突破したことがあるわけ。だから、ロキじゃない証明には使えないわ」

 細部はともかく、既にロキが攻略済みの魔術だから、みんなを納得させることが出来ないことはエルヴィナにも分かった。

「本人が出てこれないなら、うわさが自然に無くなるまで待つのがいいのだけど……」

 それも難しいのだ、とリエル先生の表情が物語っていた。

「一部の先生がね、ユキくんを放校した方がいいって言いだしてるの」

「放校?」

「この学園から追い出すって事」

 思わず涙ぐむエルヴィナ。だが、リエル先生は言葉を止めない。

「実際、学園の立場からすればあり得ない事ではないのよ。ユキくんが本当にロキかどうかはさておき、ドラゴンたちはそう認識した。今回はアーベルさんのおかげで非常に少ない被害で退いてくれたけれど、次の――もっと大規模な攻撃があるかもしれない。さらに言えばロキを殺したがっているのはドラゴンだけじゃない。エルフ、ドワーフ、人間、その他の魔物たち。彼らが本気で動いたら、学園は生徒たちを守れなくなる」

 そこで一旦貯めてから、リエル先生は学園の意志だと言わんばかりに残酷な結論を告げる。

「一人の生徒のために、他のみんなを危険にさらすことは出来ないわ」

「でもそれだと、ユキが……」

 そう、それはつまり学園がユキを見捨てるということに他ならない。ユキをロキと信じて狙う者たちに、学園と関係ないところでユキを好きにしていいと言うことだ。

「エルヴィナさん。あなたは精霊王。世界の安定のために生きるのが本来の使命のはず。契約で縛られているわけでもないのなら、早くここから離れた方がいいわ。ロキに味方する精霊王、すべての生き物の敵と思われる前に」

「でも……」

 流石に耐えきれなくなって、エルヴィナはその場から飛び去った。

 中庭から飛びあがって、そのまま校舎の屋根に向かう。

 ユキの部屋に戻るのは、少し時間が経ってからにしよう。

 リエル先生が結界を2回解除するのを背中で聞きながら、エルヴィナは呟いていた。

「でも、あたし、ユキと約束したもん」


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