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第21話 自責

「ユキ、ご飯買ってきたよぅ」

 そう言って、エルヴィナはユキがかぶっていたシーツを引きはがした。

 ユキはベッドの上に三角座りしたまま、ゆっくり首を動かしてエルヴィナを見た。

(ありがとう)

 そう言うべきだと分かっている。言いたいとも思ってる。

 でも、言葉は出てこない。

 エルヴィナは気にした様子もなく、ユキに器と箸を渡す。

 流石に三角座りのままでは食べにくいので、足を下ろしてベッドに座る姿勢に変える。

 器の中身は、麺だった。

 無造作に箸を突っ込み、麺を口に運ぶ。

 咀嚼しても、何の味もしない。

「カチャ麺はよくかき混ぜないと美味しくないよ。ほら、貸して」

 エルヴィナはすっとユキの器を取ると、箸でよく混ぜてから返してくれる。

 もう一度、ユキは麺を口に運んだ。

「美味しい?」

 わからない。口の中が少しピリピリするから、多分辛いんだろう。

 何も答えなかったが、エルヴィナは満足したようで微笑みながら自分の器の麺をかき混ぜ始めた。

「あ、そうだ。肉串も買ってきたんだよ」

 紙袋から串焼きを出すエルヴィナ。

 その匂いだけは、ユキにも届いた。

 学園祭のあの日までなら、食欲をそそる美味しそうな匂いだと思っただろう。

 でも、今は。

 火竜のブレスで焼かれ、黒焦げになったアーベルの姿が、ユキの脳裏によぎっていた。

「あ、ごめん。……後で食べるね」

 ユキの顔がこわばったのを見て取って、エルヴィナは串焼きを紙袋に戻す。

 その後はどちらも何も話さないまま、カチャ麺を食べ終わる。

 器と箸を回収されたユキは、再びベッドの上で三角座りをして、シーツを頭からかぶった。

 窓から光が入るので、薄いシーツをかぶると視界は白に染まる。

 目はつぶらない。つぶると見えてしまうのだ。

 あの日、巨竜とクゥちゃんを見送り、アーベルが黒焦げになっているのに気付いた後、ふと振り返った時に見た光景。

 校舎の窓という窓に貼り付いた人々。彼らの百を優に超える、ユキを――ちがう、ロキを見る目。

 恐れと嫌悪、意地の悪い好奇心。

 それを見た後、自分がどう動いたのかは思い出せない。

 ただ、気が付いたら自室でシーツをかぶっていた。

 それから何日経ったのか分からないが、ずっとそうし続けている。

(そりゃ、ロキもこの世界に居たくないよね)

 もちろん、ロキは自業自得なんだろう。

 学園長に聞いた歴史、リエル先生の反応、アーベルやライルから漏れ聞く噂、巨竜の怒り。

 そして、ユキ自身が会った経験。

 どれ一つとして良い印象といえるものは無い。

 それでも、あんな目で見られたら耐えられないだろうなとユキは思う。

 元の世界の浅賀幸正は、おとなしい子供だった。

 でも、良い子だったわけじゃない。ただ、反抗するだけの力が無かったから、何もしなかっただけだ。

(力があったら、俺も何かしてたのかな)

 してたんだろう。ロキはこの世界のユキだから。

 反抗して暴れて、もっと嫌な目で見られて、それに反抗してもっと暴れて。

 そんな負の連鎖を繰り返したのだろう。

「ユキ。あたし、器返してくるね」

 そっと扉を閉める音を聞き、ユキは一つため息をついた。

(エルヴィナは何で、俺なんかに優しくしてくれるんだろう)

参加しないつもりだったイベントに突発参加しちゃったけど、私は元気です。

更新が遅れたら、イベントの方の感想書くのに忙しいんだと脳内保管してください。

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