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第16話 学園祭の朝

ずいぶん間が空いてしまいましたが、再開です。

更新ペースを保てるかどうか……

美麗な装飾を施された錠前は、鍵を引き抜く時にも全く音を立てなかった。

だから、それで閉じられた檻の中にいるクゥちゃんも、干し肉に抱きついてかじりついたままで顔も上げようとしない。

「これだけ食べ物置いておけば、多分足りるよね」

 錠前と同じく装飾された檻の中には、水の入った器、干し肉、リンゴをたっぷり入れてある。幼竜の体積の3倍はあるのだから、足りないことはないはずだが。

「大丈夫だと思うけど……途中で一回様子を見に来た方が良いかも?」

 なんとなく不安をぬぐい切れないのはエルヴィナも同じらしい。

 なにせ、今日はついに学園祭当日。学生だけではなく、その父兄である大商人や有力貴族らが客として学園内に入るのだ。お忍びで王族だって来るという噂も聞いた。

 餌が足りなくなったクゥちゃんがひと暴れするとかなりマズいことになるのは、この世界に来て間もないユキにだって分かる。

「先生は頑丈な檻だから大丈夫って言ってたけど、檻はいいとして、火のブレスは大丈夫かな……」

 檻の隙間から漏れた火で部屋中焼き尽くされてはたまったもんじゃない。

 そんな懸念を、エルヴィナが檻のふちを指でなぞりながら打ち消す。

「火の元素力を抑える魔術が書いてあるみたいだし、多分大丈夫、うん、きっと」

 最後の方は自分自身に言い聞かせるような口調だった。

 一抹の不安は残るが、いつまでも心配だけしていても仕方がない。クゥちゃんの気を引かないようにそっと自室の扉を閉め、教室に急ぐ。

「遅いぞ、ユキ! さっさと着替えろ」

 教室に入るなり怒鳴ってきたのはライルだった。いつものぞろっとした制服ではなく、黒いベストとズボンの給仕服を着て、高級レストランで働いていそうに見える……目つきの悪さを除けば。

「これがユキさんので、こっちがエルヴィナさんのっすよ」

 二人にも同じデザインの給仕服を押し付けてくるモトリ。彼女はいつもと同じメイド服だが、ちょっとヨレてるし髪も整っていない。

「……大変だった?」

「細かいサイズ直しは魔法じゃできなかったんで、徹夜作業っす」

 逆を言えば、給仕服の大まかな作成は魔法で行われたのだ。触手に操られた5つのハサミが全く同じサイズに布地を裁断していくのはなかなか見事だった。そういう細かい作業に適性のあるモトリはこの数日ほとんど休みなしで動いている。

「表はうちらに任せて、裏で休んどき」

 メイドを気遣う女主人だけは、給仕服を着ていなかった。

「アーベル、かっこいい!」

 エルヴィナのストレートな賛辞に、ユキも慌てて同意する。

 銀のボタンが並んだ純白の上着、金糸で竜が縫い取られたロングスカート、頭には鈍い輝きを放つ鉄色のティアラまで乗せられている。

 来賓の上級貴族だと言われても、誰も疑いはしないだろう。

「よしよし、流石はティンカー氏族の次期氏族長様だ。高い金を払ってレンタルした甲斐があるな」

 満足げなライル。その言葉に引っかかるものを感じて、ユキは疑問を口にする。

「レンタル?」

「このドレスはうちの私物やねんけどな」

「私物を使っちゃダメなんだよね」

「だったらお金払って借りればええやろ、ってこの商人が言い出してな」

 ため息をついて肩をすくめるアーベル。肩章の金糸がそれに従って揺れる。

「理屈は正しいから先生も許可したんやけど、お金払って自分の服を借りて自分で着るってなんか訳の分からん状況や。いくらで貸すのが適正かって親に手紙で聞いたら、正気を疑われた」

「必要な投資をしただけだ。それ着て交渉すれば、値切られるどころか上乗せが期待できる」

 そう言って、ライルは既に教室に飾られた家魔製品を示す。元々の値段を知ってる身としては既に驚くべき価格が付けられているのだが、まだ上を目指すつもりらしい。

「商人ってえげつないね……」

「お前も値札つけて売られたくなきゃ、とっとと着替えてこい。始まっちまうぞ」

 ライルに脅迫され、ユキはカーテンで仕切った向こう側、裏方用のスペースに入り込む。

 お茶や軽食が準備できるようになっているスペースのさらに奥に、着替え用のブースが作ってあるのだ。もう他のクラスメイトは着替え終わっており、裏方役が雑談している。

 隅っこで丸まるように仮眠しているモトリの前に、それをガードするかのようにリエル先生が座っていた。

「おはよう、ユキくん。ドラゴンは檻に入れてきた?」

「あ、はい大丈夫です。ありがとうございます」

「いいのよ。私も、学園祭でドラゴンが暴れるような事態は流石に勘弁だし」

 ふとリエル先生の態度にちょっと引っかかるものを感じたのだが、ユキがそれを口にする前に大きな破裂音がした。

 外で花火が上がる音だ。

「それでは、第84回のニオルム魔法学園学園祭を開催します!」

 遠くから聞こえた開催宣言に、ユキは慌てて着替えブースに飛び込んだ。

間が空いた理由は、ミチル企画に参加していたのが原因。

企画参加作品も、少し手直しして載せたいですね。

……なんでGW企画に参加して7月まで更新が止まるのかって?(汗


同居人が増えたから、生活リズムを整えるのに時間がかかったってことにさせてください。

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