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第10話 続・洞窟にて

指摘いただいたので、ちょっとプロット練り直ししてました。

間が空いてしまいましたが、説明シーンはカットする方針で。

 メイドは魔晶石を全部ポケットにしまい込むと、両手を向かい合わせに構える。

 その手の間に浮かび上がったのは、光の球だった。魔力で編んだ構成なのだが、ユキやエルヴィナがつくる平面の物と違い、文字が3次元に絡み合っているのだ。

「デコイ、出てこーい」

 ダジャレめいた呪文に呼ばれ、光の玉から小さな人形が飛び出す。着地するまでの間に大きくなり、あっという間にメイドと同じ姿になった。

「前方警戒索敵よろしくー」

 表情が無い事しか違いの無い幻影のメイドは、手に持った杖で洞窟の床を探りながら歩きだした。

 その姿を眺めつつ、エルヴィナは首をかしげて呟く。

「やっぱり3属性使ってるよね? 土と風と雷」

「せやで、モトリは魔力量はイマイチやけど、こういう魔法使わせると天下一品やねん」

「アーベル様、胸張ってないで進んで欲しいっす」

 メイドにせかされ、アーベル・ゴールドティンカーは鎧をちょっとガチャつかせながら歩き始める。

幻影のデコイを先行させ、その少し後に主戦力であるアーベルが続く。その後魔法戦力であるユキとエルヴィナが来て、最後にメイドのモトリが後方警戒する隊列だ。

洞窟の出っ張りに躓かないよう気を付けながら、ユキはアーベルに声をかける。

「アーベルさんはさ」

「アーベルでええよ」

 そう言われて、ユキとしてはちょっと詰まる。最後に同級生の女子を呼び捨てにしたのはずいぶん前のことだ。しかも姓じゃなくて名前の方となると。

「えっと、あ、アー」

「クァァァ!」

 しどろもどろになるユキを遮って、クゥちゃんが鳴く。カバンの中で眠っていたのだが、目が覚めたらしい。内側から器用にカバンのフタをはね上げると、アーベルの周りを唸りながら飛び回る。

「うちは財宝持ってへんし、あんたの財宝も取らへんよ」

「ごめん、アーベルさん。こっちおいで、クゥちゃん」

 呼んだだけでは離れないので、仕方なく干し肉を取り出すユキ。するとたちまち戻ってきて、ユキの頭の上で干し肉をかじり始めた。

「ドラゴンに警戒されるとは、これでアーベル様も立派なドワーフっすね」

 モトリがクツクツと笑う、ユキには今一つピンとこないが。

「そういうもんなの?」

「ドワーフとドラゴンは財宝を巡るライバルなんは常識やろ、ってそういうのも知らんのやったね」

 自己紹介した時に、ユキが異世界から来たことは話している。それは、学園長からの助言でもあった。どうせこの世界の常識がないことはすぐにばれるのだから、変に素性を隠すよりも異世界出身だと明言しておいた方が疑われる事も防げるだろうという考えだ。

「エルフはおる世界から来たのに、ドワーフはおらんかったん?」

「元の世界だと人間しかいなかったよ。こっちに来てエルフになったんだ」

「世界移動すると、種族も変わるんすね。私がドワーフになるような世界もあるんすかね?」

 モトリの反応からしても、さほど違和感のない言い訳になっているようだ。実際、ロキの事を伏せているだけでほとんど事実だし。

 エルヴィナは少し飛ぶ速度を緩め、モトリの隣に並んで話しかける。

「モトリは、人間なのにアーベルのメイドしてるんだね」

「ええ。ドワーフの中でも、ティンカー氏族は人間やエルフとも接点が多いんすよ。で、私の里が氏族長に助けて頂いたことがありまして、そのお礼が私」

「子供を渡されてお礼や言われても、ってお父様は困っとったけどなぁ」

「ニンジャの里では良くあることっす」

 干し肉を食べ終えたクゥちゃんが、ユキの頭上で長く細く鳴く。囮の幻影が立ち止まって、こちらを振り返っている。

「ちょっと止まってくださいね」

 そういうと、モトリはするすると前に出て、幻影が指差したあたりの床をまさぐる。

「石の罠っすね」

 モトリが天井を指さす。よくよく見ると、拳ぐらいのサイズの石が細い糸で吊るされている。

「床スレスレに糸が張ってあって、うっかりそれを切るとあれが上から落ちてくるんよ」

「落ちてくると、どうなるの?」

 運悪く当たると痛いのは間違いないと思うが、正直当たる可能性は低そうに思える。

「あたしが持ってこようか?」

 空を飛べるエルヴィナが提案するが、モトリが首を振った。

「触んないほうがいいっすよ。石に魔術が仕込んでありますから。アーベル様、分かります?」

「衝撃に反応して轟音がするタイプやね。魔晶石使ってても小粒やと思うけど、どうする?」

「どうするって言われても」

 選択肢が分からないまま任されても困る。そんなユキに、モトリが助け舟を出した。

「エルヴィナさんが回収したら、売ることもできるっす。元々そのために来たんですし」

 わざわざダンジョン探索に来たのは、学園祭でやる出し物の資金集めだ。魔物を倒して魔晶石を回収して売るのが一番手っ取り早く儲かるから、とアーベルに連れてこられた。

「でも、金貨1枚にもならへんぐらいやと思うし、それやったら逆用して前の方にいる伏兵にぶつけてやるのもおもろいかなぁて」

「いるの!?」

「いるっす。こういう罠だと、かかった相手が朦朧としてる間に襲い掛からないと意味ないですから。クゥちゃんも、それに気づいて鳴いたんす、たぶん」

 ユキはクゥちゃんを見ようとするが、まだ頭の上に居るので上手くいかない。

(ちょっとでも稼ぐなら回収、楽にクリアするなら逆用って事か……)

 ただ、目標額である金貨2万枚を考えると、金貨1枚以下に必死になっても仕方がないというアーベルの考えも妥当に思える。

「……慣れてる方にお任せします」

「ほな、前で大きな音がするからユキとエルヴィナは耳ふさいどき。敵がよろけて出てきたら魔法で潰して」

 言われたとおりに二人が耳を手で覆うと、モトリが床を蹴る。その足が、床すれすれに張られた糸を切るのが見えた。

 落ちてきた石を上手くキャッチし、そのまま洞窟の奥に投げるモトリ。アーベルが斧を構えて石の後を追う。

 10mほど離れて石が床に落ちた瞬間、音の衝撃が来た。これだけ離れて、手で耳をふさいでなお五月蠅い。

 それを間近で聞いては、ひとたまりもなかったのだろう。壁に貼り付くように隠れていた人狼が頭を抱えてよろめき、天井からボタボタと人間サイズのコウモリが落ちてきた。

「風よ、矢となりて彼の者らを穿て!」

 エルヴィナの呪文に応え、5本の光る矢が放たれる。それはアーベルの背を器用に避けながら追い越し、2体のコウモリと人狼に突き刺さった。

 1本しか矢が当たらなかった人狼には、アーベルが斧で一撃を入れる。

 斧を構えなおしたアーベルはしばし周囲を警戒したが、もう敵はいないらしかった。

「楽勝でしたね。ユキさん、クゥちゃん拾ってあげた方がいいっすよ」

 モトリに言われて気づいたが、頭の上が軽くなっている。耳をふさいでいなかったクゥちゃんは、目を回して洞窟の地面に落っこちていた。

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