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Ωneiloss -夢の世界で変身!-  作者: 薪原カナユキ
5章 -金月が煌めき花咲き乱れる-
28/52

28.砂漠の前夜

「アリスに会ったって、あの夜合流できなかったと思ったら、またドッペルと会ってたのね」

「うん。しかも助けて貰っちゃった。もしかしたらもう優月さんにも何もしないかも」

「どうだか」


 ここは優月さんの世界。

 いつものお城の一室ではなく、城下町の建物にテラス付きのお店みたいな建物があったので、そこで優月さんと一緒に作戦会議。


 世界の主は優月さんだけど細かい所は把握していないらしく、本人も初めて知ったらしい。


「何ならアイツをぶつければ、二人の救出も楽になりそうだけど、そんな都合の良いことは無いわよね」

「わたしたちでやるしかないから、仕方ないよ」

「そうなったの、貴女のせいでしょう。プーケすら戦力にならないって、それでどうしろっていうの」

「えーと」


 わたしたちのできることははっきりしている。

 まずわたしは、正面から突っ込むことしかできない。

 優月さんはあの眠気に耐えられるかだけど、それさえできれば色んな事ができる。


「正面突破、かな」

「考え無しね、知ってたわ。良いからソイツのこと洗いざらい教えなさい」


 あの時は眠っていた優月さんに眠くなること、それに彼の見た目とかを伝える。

 世界の見た目は参考になるかは、いまいち分からない。


「……たぶん一定以上のモルフェスの力が無ければ、眠気に襲われるのね。略奪者って言われるぐらいだから、リングのことも含めて奪う対象は様々。戦闘スタイルは超接近戦として」


 色々と考えた結果、優月さんは深くため息を吐く。


「――撫花の上位互換って所かしら。世界からの影響を突破すれば、後はモルフェスの殴り合い。奪取能力が厄介だけど、そんな小手先の技を多用する奴じゃ無いわね、そいつ」

「なら優月さんがメアたちを助けるのが一番かな」

「どうかしら。それだと私が起きれているかどうか、それで白黒はっきりしちゃうわ」


 わたしだけ起きていても、助けられる確率はそうとう低い。

 かといって確実に優月さんが起きている可能性も、高いとは言えない。


 あの眠気は彼への挑戦権とも取れる。

 起きていたわたしが挑まなかったから攻撃されただけで、眠っていた他の人には目もくれなかった。

 眠ってしまえば安全とは言えるが、それではメアたちは助けられない。


 もしアリスさんにこの事を頼んだら、受けてくれるだろうか。

 出会った時にそれを思い付かなかったのが悔しい。


「……そうだ」

「何よ私の顔を見て。何を思い付いたの」


 席を立ち、優月さんの後ろへ回る。


「ちょっとごめんね」

「髪? 貴女不器用なんだから下手なことはしないでよね」


 優月さんの髪を一度と解どき、黄色のヘアゴムとは別に色違いのヘアゴムを作り出す。

 淡い桃色の、同じヘアゴム。

 それを使って、結った髪を一束から二束に変える。


「これ、どういうつもり」


 結った髪を前に移すと、優月さんはバラついた髪を持って振り返る。

 出きり限り慎重にやったつもりだったけど、とても綺麗にできているとは言えない。


「その、ヘアゴムを見て元気を出してるって前に言ってたから。二つにしたら二倍元気になるんじゃないかなーって」


 失敗をごまかすようにわたしは笑う。

 そのつもりでやったことだけど、こうなったら言い訳臭くなってしなった。


「優月さん?」


 こっちを振り向いたまま、固まってしまった優月さんの目元から、雫が零れる。

 心の赴くまま手を伸ばして拭うと、慌てて顔を逸らされてしまう。


「なる訳無いでしょう。こんな下手くそで」

「ごめん、やっぱり駄目だよね」


 わたしとは違い、慣れた手つきで髪を結い直しているけど、決してもう片方を外さず形を整えるだけ。

 崩れた髪型は瞬く間に戻されていく。


「――まぁ、やる気は出たわ。有り難う」


 小さな一言だけど、とても気持ちが熱くなる言葉。

 頬が緩むし、優月さんを抱きしめたくなる。


 一度自分でも雫を拭った優月さんは、わたしへ向き直る。


「撫花。十秒で良いからソイツを止めなさい。私、モルフェスは自信が無いから短期決戦で行くわよ。二人を助けたら速攻プーケの力で逃げる。それでいい?」

「もちろん!」


 念入りに作戦を考えそうな優月さんがそう言ってくれたのだから、言われずともやり遂げる。

 あの銀色の鎧のことだから、パンタスを使った途端に妨害してくるだろうけれど、一回や二回なら耐えて見せる。


 十秒。

 たった十秒だ。

 それだけで、丸く収まるのならいくらでも立っていられる。


「こんなの作戦でも何でもない。だから貴女はひたすら敵を止める事だけに集中して。他は私とプーケに任せなさい。――良い? 振り向く必要はないから」

「……うん!」


 振り向かず、ザント=アルターを止める。

 何があっても振り向かない、それは信頼や信用と言えるのかは分からない。

 もし他に敵が現れたら?

 彼に仲間がいて、優月さんが危ない目にあったら?


 その時は――

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