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舞踏魔術

 「何か私のせいで大事になってしまってすみません、コーネリアと言います」

 先ほど恰好いい感じでコーネリアの側から飛び出したものの、具体的な対決の予定まで決まってしまった俺はブラックロータスの情報を尋ねに先ほどの喫茶店に戻って来た。ふう、彼女がまだいてくれて助かった。

「俺はロアン。符術師だ」

「私は錬成師のイリア。でも魔符しか作らないわ」

 とりあえず俺たちも自己紹介をする。


「早速なんだがブラックロータスっていうのは何者なんだ?」

「はい、この街には珍しい魔法の品を求めて色んな魔術師が集まるため、同じ魔術師同士でギルドを組むんです。その中でも一番大きいのがブラックロータスです」

「何で奴らが一番大きいんだ?」

「一つ目は純粋に人数が多いこと。もう一つは彼らが領主に取り入っているためです。彼らは領主の頼みで汚れ仕事なども何でも引き受けているともっぱらの噂です」

 噂かよ。正直その手の噂はいまいち当てにならない気がする。それに冒険者などは普通にグレーな仕事も引き受けるし。


「俺たちとの戦いでも汚い手を使ってくると思うか?」

「さあ……。でも、普通に考えて試合みたいなものを仕掛けておいて汚い手を使うぐらいなら最初から汚い手で報復するんじゃないでしょうか」

 確かに俺たちみたいな旅人が暗殺されても誰も気が付かないだろうな。

「それは道理ね。観衆の前で叩き潰すとか言ってたし」

「それに試合自体は実は珍しくないことなんです。ブラックロータスの天下を羨んだ他のギルドが時々試合を仕掛けたり、逆にブラックロータスに楯突いたギルドに見せしめとして仕掛けたり。それでも不正をしていたことはなかったですね。少なくとも発覚したものは」

 日常的にやってることなら大丈夫か。というか奴ら相当大人気ないのでは?

「それなら腹くくって勝負の日を待つしかないか」

 勝てるかどうかは全くの未知数である。というか、そもそも俺自身の実力が未知数だし。


 さて、試合の方は頑張るしかないという結論に至ったところで俺は気になっていたことを尋ねる。

「ちなみにコーネリアさんは何魔術を使うんだ?」

 何せ俺はマルタ村の冒険者しか知らない。符術師と錬成師以外だと、黒魔術師、属性魔術師、召喚術師、使役術師というぐらいだろうか。

「私のは異国の独特な魔法で……こちらでは舞踏魔術と呼ばれています」

「舞踏魔術?」

「ああ、動作を魔法に変換するやつね」

 イリアが知ったかぶっている。ちなみに彼女がもっと詳しい時はやたら早口でまくしたてるので一言しか言わないということはほぼそれしか知らないということだ。俺? 当然何も知らないが。


「後学のために見せていただけないかしら」

「大したものじゃないですが、いいですよ」

 そう言って彼女は椅子に座ったまま両手を上げる。そして右手と左手で、まるで目の前にある見えない何かをかき分けるかのような動作をする。その目も虚空にある俺たちには見えない何かを見ているようで少し怖い。

 すると。テーブルの上にあるコップがすすすっと動いた。

「おおおおおお」

「動作で魔法を使っているので基本的には動作に関係する効果が発動することが多いです」

 彼女は少し照れたように笑い、手を降ろす。

「おそらく動作で魔法を使うという考え方自体が私たちの部族にしかないものなのでしょうね。多分私たちしか使えないです」

「確かに一般的な魔法のイメージとは違うからな」


 基本的に成人の儀は儀式を迎える者のイメージで専門職が割り振られる。なりたい職業になる者がいる反面、そもそも黒魔術師になりたくても見たことがある魔術が属性魔術だけだったりすると属性魔術師になってしまうみたいなパターンも多いらしい。

 それで地域や部族によって固有の魔術というのも稀に存在するとか。そもそも動作で魔術を発動するというイメージがあまりメジャーでないので、目覚めるものも少ないのだろう。


「もし良ければ私、明後日の試合のこと調べておきますね」

 コーネリアは責任を感じているというよりは純粋なブラックロータスへの闘志が強くなってきたようで、何やらやる気を出している。

「ああ、頼む。俺たちはどうしよう?」

「よく分からないけど私はとりあえず魔符作ろうかしら。実技の方では使うだろうし」

「そうだな。俺もまだあのトロール戦以外魔符使ってないから練習しないと」

 そんな訳でコーネリアには泊まる宿だけ教えて解散した。

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