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交易都市でお買い物

 さて、金貨百枚を手に入れた俺たちは買い物をすることにした。符術師の場合、魔符の強さがそのまま自身の強さに直結するので買い物は重要である。とはいってもこの村に大した物は売っていない。

「何かいいところあるか?」

「それならちょっと行ったところある“交易都市バザール”がいいかも。王国各地の都市の名産が集まっている都市だから」

 ここに来るまで旅を続けてきたイリアはすぐに答えてくれた。

「じゃあ行ってみるか」

 それにこの村で一番高難度の依頼はクリアしてしまい、残っているのはCとかDの微妙な依頼ばかりだった。


 俺は何気に村から泊まりで外に出るのは初めてだったが、旅費が潤沢にあるため特に不自由はなかった。街道沿いの村の宿に泊めてもらいつつ、歩くこと五日ほど。

 俺たちの目の前に広がる街は今まで見たこともないほどの広さと人の多さだった。各地の人が集まっているのか、俺たちとは違う衣装だったり頭の上に耳が生えた獣人だったり色んな人種がいる。聞こえてくる言語も様々で聞き覚えのないものもある。並んでいる建物はほとんどが何等かの商店で民家はほぼなかった。


「すげえ、これが交易都市か」

「うん。私も前回来たとき金貨数枚しか持ってなかったから今回は楽しみ」


 そんな訳でとりあえず俺たちはぐるっと街を見て回ることにした。商店と一口に言っても様々な種類の店が雑多に建っている。食べ物の屋台から遠くの地の名産を売るお土産屋、冒険者向けの武器防具やアイテムを売る店、当然宿屋や酒場などもある。そして並んでいるものは大体、初めて見るものばかりだった。


「何か欲しいものあったか?」

「うん、色々。でもロアンも何か買い物するでしょ?」

「うーん……俺はイリアがいればそれでいいかな」

「え……///」


 不意にイリアの顔が赤くなる。

「俺の戦闘力って基本魔符の強さで決まる訳だし、それだったら全額魔符に使ってもらえればそれでいいかなって」

「ああ、そういう……」

 なぜかイリアが少し落胆したような様子になる。おかしいな、せっかく金貨百枚全額魔符の材料にあてていいって言ったのに。


「こほん、それでロアンはどんな魔法が使いたいとかある? 純粋な攻撃魔法用ならいくらでも作れるけど」

「うーん……この間思ったのは“収納”かな。やっぱり魔物を倒しても戦利品をいちいち持ち帰るの大変だったし」

 収納系の魔法はここではない亜空間にアイテムなどをしまい、いつでも取り出せるという便利魔法である。当然亜空間などという概念が出てくるので難度は高いし、効果も地味なので実はかなりのレア魔法である。が、イリアははっとした表情になる。

「収納……確かに収納の魔符をどう作るかで錬成師の腕が分かると言われている。今まで資金がないから作らなかったけど、本気で作ってやるわ」

 突如としてイリアに闘志が宿る。そしてマジックアイテムなどが売っている店を真剣な表情で物色し始めた。

「じゃあ俺は普通の旅行用品でも買ってくる」

 が、俺の言葉が耳に入らないぐらい熱中しているのか、イリアから反応はなかった。


 夕方ごろ。俺は色んなちょっといい旅行グッズ(めっちゃおいしいのに日持ちして腹持ちもする保存食とか、入れた水が腐らなくなるビンとか、防水魔法がかかったマントとか)を買い回ってちょっと満足した。

 ちなみにそんな好き勝手な買い物をしても金貨一枚分にもならず、改めて俺は自分の持っている金額の大きさを実感した。やっぱり予算がほぼ無限の状態で買い物をするのは常に楽しい。


「ロアン、お待たせ」


 するとこちらも買い物を終えたと思われるイリアが現れた。片手にはよく分からない魔法の素材がたくさん入った革袋を、そしてもう片方には先端に大きな七色に輝く宝石がついた仰々しい杖を持っている。


「あれ? その杖は?」

「ん」

 ロアンが無言で俺に杖を向ける。さては金貨百枚を独占するために俺を始末……

「違う、あげるって言ってるの!」

 イリアは激怒した。確かにその勘違いは申し訳ないが、言ってくれないと分からないだろ!

「そうだったのか!? それならそうと最初から言ってくれよ。お、これすごいいいやつじゃねえか」

 俺は杖を手に持って感動する。杖にもいろいろあるが、この杖はシンプルに所有者が行使する魔法の威力を増大する作用があると思われる。先端についている宝石はそれぞれの属性と対応しているらしく、全ての属性に対応した杖のようだ。


「わざわざ俺のために買ってくれたのか、ありがとうな」

「べ、別にそういうんじゃないけど……単にこの私の魔符を使う魔術師には相応の装備を持っておいて欲しいってだけなんだからっ」

 そう言ってイリアは俺から目をそらす。

「確かに。お前プライド高そうだもんな」

(その反応はその反応で不本意なんだけど)

 納得したのになぜか睨まれた。

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