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決戦

「ふははははははは、僕は魔符の力に打ち勝ったぞ! まだ正気を保っている!」

 のたうち回っていた王子だったが、すぐに起き上がる。正気を保っているのかはよく分からないが。

 そう言えば変異種は別にバーサークして知性を失う訳ではなかった。魔術を使えるようになっている個体もいたし、知性は増すことすらあるのかもしれない。

「殿下、味方にそんな魔術を使ってくるやつが相方で本当にいいのか?」

「何でもいい。僕の覚悟はその程度ではゆらがない。目的を達するまでは手を組んでやるさ」

 目的のために諸々を見失った人間というのは恐ろしい。しかし、本当にやばそうなので俺は最強の魔符を取り出す。様子見から入るほどの余裕はない。


「アイスコフィン」


 途端に王子は巨大な氷の檻に閉じ込められる。圧倒的な魔力の前にはどれほどの物理的な力があろうと無力だ。が。めしめしという不吉な音とともに王子の腕が動いた気がする。まさかSSSランク魔法を筋力でどうにかしようというのか?

「残念だけどあなたたちの相手は一人じゃないわ。ディスペ……」


「させない!」

 メリアが王子に向けて何か魔法を唱えようとしたところへイリアが剣を構えてとびかかる。が、次の瞬間、カキン、という金属が弾き合う音とともにイリアの体は後方に吹き飛ばされる。

「くっ」

「私の周囲には二重の魔法防御結界が張られているの。普通の剣程度では私に触れることは出来ないわ」


「しゃべっている場合か? アイススピア!」

 メリアの四方八方に氷の槍が出現する。が、メリアは落ち着いて王子を包む氷の塊に触れる。


「ディスペル」


 氷の塊にひびが入り、ほぼ同時に無数の氷の槍がメリアに迫る。ガガガガガキキキキン、と氷がすりつぶされるような音が鳴り、溶けた氷が水蒸気となり彼女の周囲に舞い上がる。魔法防御結界とやらは俺の魔法さえ防いだらしい。一方の王子は亀裂が入った氷を手で強引に二つに広げるとその中から脱出する。

「ふう、君の魔術はなかなかだね。でももしそれがとっておきだとしたら無力という他ないね。自分の力を過信して挑んではいけない戦いを挑むなんて愚かな」


「アイススピア!」

 再び大量の氷の槍が王子に襲い掛かる。が、王子は剣を構えると四方八方から飛んでくる氷の槍を全て斬りさいた。バキバキと音を立てて周囲に氷の槍が散らばる。


「ふう、変異種というのも意外と悪くないね、おや」

 確かに変異種となった王子は恐るべき力を発揮していた。が、王子は変異種になっても剣は普通の剣だった。いつの間にか途中から先がなくなっている。

「だめね。マナソード」

 おかしいな、王子にアイススピアを撃つどさくさでこの女にも三発ぐらい撃っていたんだが。メリアはぴんぴんした様子で手元に魔法の剣を呼び出すと王子に向かって無造作に放り投げる。


「させるか!」

 イリアが投げたアイススピアの破片が飛んでいって魔法の剣にぶつかり、それを叩き落す。

「ちっ、この私の魔法をそんなちゃちな手段で妨害するなんて」

「それなら私も本気を出させてもらおうかしら」

 イリアは一枚の魔符を剣に貼り付けると再びメリアに斬りかかる。


「へー? 錬成師の分際でこの私に戦闘で勝てると思ってるんだ。はい、ファイアーボール」

 メリアの手から火球が飛び出し、イリアを襲う。イリアは火球を剣で斬る。魔符で強化を施されていた剣は火球を斬り裂いた。が、その瞬間イリアは地面に伏せ、その上を後ろから飛んできた火球が通り過ぎていく。

「あら、よく気づいたわね」

「くっ」

 が、イリアの戦いは無駄ではなかった。その間俺と王子は一対一になる。王子は剣を失っても俺が撃ち続けるアイススピアをひたすら回避する。しかも一回二回と回数を重ねるにつれ、攻撃を見切っているようでもある。


「ブリザード」


 王子の周りに吹雪が出現する。吹雪とはいえ霰に近く、魔法学園にいたゴーレムも滅多刺しにした氷の破片が飛び交っている。が、王子は目にも留まらぬ速さで体を動かすと、こちらに跳びかかってくる。体中に氷の破片が突き刺さっているがお構いなしである。くそ、吹雪程度では足止めにもならないか。王子は俺に向けて目にも留まらぬ速さで蹴りを放ってくる。

「アイスシールド!」

 が、魔法の盾も王子の蹴り一発で亀裂が入った。どんだけ無茶な身体能力になっているんだ。が、氷の盾が王子の蹴りを一瞬だけでも止めたのはファインプレーであった。


「凍結」


 氷の盾に触れた王子の靴から先がぴしぴしと音を立てて凍っていく。さしもの王子も咄嗟のことに反応がわずかに遅れた。ここか。


「アイススピア!」


 すぐに王子は足に力を込めて氷を割ろうとするが、その一瞬の間が命取りとなった。無数の槍が飛来して王子を襲う。

「うおおおおおおおお!」

 王子は咆哮すると何と素手で氷の槍を掴んだ。そして槍を振り回し、他の槍を撃墜する。一本、二本、三本。しかし片足を封じられた状況で、しかも慣れない武器では限界があった。


「ぐはっ」


 ついに何本目かの槍が王子の背中を刺し貫き、彼はその場に倒れた。


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