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秘密の部屋

「では手前の部屋から順に開けていこう」

 俺は王子と一緒に順に部屋のドアを開けていく。一番手前の部屋は使用人部屋だった。ちなみに今も使用人はいるが、王子の一声で庭の掃除を始めた。可哀想だが、全部屋を調べなければ調べたとは言えない。仕方なく俺は九割以上何の関係もないと思われる使用人の部屋に踏み入る。見た感じ変なものは何もないが、一応軽く家探しはする。やはり何もない。

「センスマジック」

 呪文を唱えるが何も反応はない。

「よし、この部屋は大丈夫だ」

「では次だな」


 そんな要領で俺たちはクリアリングしていく。使用人部屋を四部屋クリアすると次は応接室であった。

「センスマジック……お、ここは何か魔法の痕跡がある」

 この魔法では魔法の気配があるかどうかしか分からない。キャントリップの魔符なので仕方がないとはいえ、不便である。

「調べられるか?」

「アナライズ・マジック……ただの気分がリラックスする魔法だ」

 俺は魔法を解析する魔法を唱える。手元の魔符が消えていったが、分かったのはただのしょうもない事実であった。魔術師だからってどうでもいいところにまで魔法を使うのはやめて欲しい。

「まあ応接室だからな」

 アナライズ・マジックの魔符はキャントリップではなく使い捨てなので出来ればこんなしょうもないことに使いたくはない。だが、残念なことにこの家には応接室があと三部屋あり、俺は魔符を無駄に消費させられた。当然隠し部屋などもなかった。


 その後俺は王子と一緒にお風呂を荒らし、トイレを荒らし、クローゼットを荒らした。そして湿気をとる魔法や保温の魔法を発見したりしたが、めぼしい収穫はなかった。

「家が広すぎる……」

 俺はげんなりしてため息をつく。そんな俺を見て王子も渇いた笑いを浮かべる。

「はは、僕も悪いことをするときは広い家に住もうかな」

「だからみんな偉い人は豪邸に住んでいるのか?」

「そうかもしれないね。ちなみに僕は質素な一軒家に住んでるよ」

 いきなり庶民派アピールをされた。やっぱりこいつは何とはなしにむかつくんだよな、などと思っていると。


「おーい、こっちに怪しい部屋見つけたけど」


 不意に奥からイリアの声がする。そう言えば姿を消したイリアは別行動をしてたんだったな。忘れていたというよりは見えないから後ろをついてきているのかと思っていたけど分かれてたのかよ。まあ確かに調査はその方が効率はいいが。

「やっぱりもう一人もいたのか」

 王子が急に俺に不信感を抱き始める。そう言えば王子は何らかの手段で姿を隠している俺の存在を見切っていた以上、一緒にいてもばれてしまうから別行動していたのか。しかし王子に斬りつけられたときは焦ったが、何となく気配が分かっただけで一人か二人かもばれていなかったのか。

「いやあ、本当に奇遇だな」

 もはやどう誤魔化していいのかすら分からずに頭をかくしかない。王子はしばらく俺を見ていたがやがてはあっと息を吐く。

「まあいい、とにかく行くぞ」

 幸い怪しい部屋があったおかげで王子はスルーしてくれたようである。俺が怪しいとはいえここで俺とバトルしても仕方ないからな、助かった。

 奥の廊下を曲がるとそこには開け放たれたドアがあった。外から中を見るとイリアが立っている。

「ここか!」


 その部屋は書斎だったようで、本棚が大量に設置されていて迷路のようになっている。すでにイリアが本棚を動かしたのか、床に明らかに地下への扉と思われる謎の入り口が露出している。

「すげえ、よく見つけたな」

「この部屋だけ魔力の流れがおかしかったと思ったら、この扉周辺で遮断されていたみたいだったわ。むしろ本棚を動かす方が重労働だったけど」

 イリアの額には汗がにじんでいる。いや、どう考えても隠し扉見つける方がすごいと思うが。

「さて、行くか」

「分かった」


 扉を開けると下には石の階段が続いていた。いかにも「ザ・秘密の地下室」と言った感じである。俺は進んで一番前を歩く。その後にイリアが続き王子が一番後ろを歩く。何となく一番前に立ってしまったが、冷静に考えると王子は剣が達者だしイリアもまあまあ剣を使えるんだよな。とはいえ王子やイリアを危険な目に遭わせる訳にもいかないか、と俺は無理やり納得させて進む。降りていくとかすかな異臭が鼻をついた。やがて俺は一番下までたどりつく。異臭は鼻をもぎとらんばかりに強まっている。


「ライト」


 俺は魔法の灯りをともした。そして目の前に広がっている景色に驚愕した。

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