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ブラウニーメンテナンサー

作者: 山吹弓美

「こんにちはー」


 予約の入っているお宅を訪ね、インターホンを鳴らす。音はちゃんと出るし、すぐにカメラが動いてこちらを認識する。IDカードを提示すると、ピントを即座に合わせた。動作は良好、ここは問題なし。


『どちらさま?』

「ブラウニーカンパニー、技術者のハリティアと申します。メンテナンスのご予約をいただきましたので、お伺いいたしました」

『あ、あら。ちょっと待ってね』


 内部との会話も問題なしね。すぐに玄関扉が開き、家人の方が姿を見せる。姿勢を正し、怪しくない技術者としての姿を見せよう。


「来てくださったのね。ありがとう、お願いするわ」

「はい、お任せください」


 門扉の解錠、及び開閉にも問題は見られない。丁寧に扱ってくださっているのが分かって、嬉しいわ。

 家人にきちんとご挨拶を済ませ、制御室に入る。トイレとそんなに変わらないサイズの、小さな小さな部屋。空調は完璧だけどね。

 IDカードを再び提示、システム認証完了。この家のブラウニー、制御AIコート・レンダンとのコネクト、完了。


『やァ、ハリティア』

「コート・レンダンさん、おひさしぶりです。お元気そうで、何よりです!」

『あたぼうよ。これがおいらのしュみ、ッてね』


 メンタル状態の簡易スキャン、完了。異常は見られないわね。これより、詳細スキャンに入る。


「お仕事でしょう? 今日はメンテナンスに来たので、ご協力お願いしますね」

『まかせとけェ。おまえのメンテナンスはきもちいいからなァ、きョうりョくなんていくらでも』


 気持ちいい、か。人家のブラウニーとして設計されているから、人のような言動も可能なのは理解するけれど。

 もっとも、悪性プログラムの侵入などを苦痛と感じるようにも作られている彼らなのだから、気持ちいいという感想は悪くはない。

 表層スキャン終了、異常なし。深層スキャンに移行。


『あ、そうそう。きをつけろよ、ハリティア』

「なににですか?」

『さいきん、ボガードがふえてるッてよ』

「ああ、そうらしいですね」


 何てこと。個別制御AIにまでボガード、悪性AIの情報が伝わってきているなんて。

 情報の過度な伝達、それによるAIへの影響を防ぐために作られている防壁を超えてきている、ということはかなり情報量が増えていると言っていいのだろう。

 ボガードの排除もメンテナンス技術員の任務ではあるけれど、幸いというべきか私は未だその任務を遂行したことはない。その後の新規ブラウニーインストールには、少々手間がかかるので面倒なのだ。


「私は未だ、ボガードには相対したことがありませんね」

『ハリティアにボガードがりさせちャあ、よもすえだぜェ』

「そうでしょうか」


 このAIは、どうも私のことを自身の手下かなにかとでも思っているのだろうか。権限などは、私のほうがずっと上なのに。

 深層スキャン終了、異常なし。これをもって、メンテナンス任務を完了とする。


『あァ、きもちよかッたぜェ。ありがとよ、ハリティア』

「どういたしまして。異常がなくてよかったですよ、コート・レンダンさん」


 コネクト切断。システム、通常モードに移行。スキャン結果をプリントアウト、署名を入れる。

 これでまた、このブラウニーはこの家の全てを安全に管轄し、統率することができる。ボガード化することさえ、なければ。

 そうならないことを願いつつ、家人にスキャン結果を手渡した。


「ブラウニーに異常はありませんでした。プログラムも、問題ありません」

「ありがとうございます。助かりました」


 礼を頂き、電子マネーによる料金の支払いも完了。家を出て、任務終了情報を中央制御AIに送付する。

 私はハリティア。ブラウニーメンテナンス技術員にして、単独行動を許された特殊任務用AIを擬人体にインストールされた存在である。

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