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キューバの悲しい現実(2)

 前回と話が前後するが、4日目の夕方のことを書きたい。マレコン通りのコーヒー屋を出て、ホテルに戻るため通りを歩いていると、一人の男が話しかけてきた。「お腹が空いているから1ドル欲しい」。用件は実に単純なものであり、マラカスを待たせるでも、コインを握らせるでもなかった。単純に1CUCが欲しいというそれだけだった。

 現地の人がどこで食事をするのか、何を食べるのかに興味があった私は彼にご馳走するから連れて行って欲しいとお願いした。前々回書いたように一軒だけそういう店に行ったが、一軒では物足りない。サンプル数が少ないと思っていた。彼は了承してくれて、徒歩で数分の店に二人で入った。

 その店は表のメイン通りに面しているわけではなく、観光客ではすぐには見つけることができない場所だった。観光客向けの飲食店も決して多いわけでもないが、それはオビスポ通りあたりにある。でも、街全体で見ても屋台も見かけないし、とにかく飲食店が少ないのだ。現地の人がどこで何を食べているのかは本当に分かりにくかった。私が声をかけてきた若い男と入った店は、正直店とは言えない構えだった。入り口には扉があるわけでなく、看板などはない。奥には民家があり、メニューが置かれているわけでもない。厨房も隠れていてすぐには分からない。カウンターとテーブルがあることだけが、かろうじて飲食店であることの雰囲気を出しているだけの店だった。

 注文は例の如くキューバ人に任せた。料理が来るまで彼と話していた。彼は20歳無職。お父さんは亡くなっており、お母さんと二人で暮らしているらしい。ただ、全然会話は続かず、その程度で終わった。


そうこうしていると料理が来た。前に食べたのと同じような感じのものが二人分出てきた。白米ではなかったが、お赤飯のようなライスがあり、それに肉と野菜が添えられていた。残念ながらスープはなかった。その肉は炒めた肉ではなく、骨付きの焼いた肉だった。値段は一人2CUC。合わせて4CUCだから極めてやすい。

味も悪くなく、その骨付きの肉は美味しかった。骨にどこまで火が通っているのか分からなかったから、骨にあまりかぶりつかないよう気をつけて食べた。それでも、多少は骨周りの肉を食べるためにかぶりついた。そして、全てを食べ終えた。

 しかし、若い男は「それ食べて良いか?」と聞いてきた。何を言っているのか意味がわからなかった。それでもなし崩し的にYesと応えた。すると彼は私がかぶりついた実質もう骨になっているものをしゃぶり始めた。私が多少であれ骨にかぶりついたことなど気にせず、彼はガッツリとその骨にしゃぶりついた。骨の周りにわずかに残った肉を食べるためなら、見ず知らずのアジア人の唾液など全く彼には関係なかった。

 私の説明では上手く伝わらないかもしれない。こう言えば伝わるだろうか。骨付きのフライドチキンを見ず知らずの人が食べていて、骨のせいで食べにくいから肉の部分が少しだけ残っている。そのもうほぼ骨になっているけれど、少しだけ肉が残る骨を他人がかぶりついたことなど気にせずに、しゃぶって食べる。そういうことだ。

 なりふり構わずに他人が食べた骨をしゃぶる彼の様子はかなりショッキングだった。彼はどれだけお腹を空かしていたのだろうか。


 帰りに彼は「お母さんのご飯を買うからもう1ドルくれ」と言った。「もう君に食事をご馳走したじゃないか」と私は断ろうとした。そうすると、彼は怒ったように「なんでだよ!良いじゃないかよ!1ドルくれよ!!」と語気を強めた。私は同じように答えると、彼はさらに語気を強めて1CUCを要求した。私にとっては金額の問題ではない。なんでもかんでもお金を「取られる」のは単純に良い気持ちはしなかった。食事をご馳走してまで、さらに1CUCとられるのは釈然としない。しかし。私は正直彼が怖かった。私が断ったら、彼は私を殴りそうな雰囲気さえあった。やむなく、私は彼に1CUCを渡した。彼は不平そうな顔をしながら”Thank you”と言った。

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