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NYで見た中国人の強さと勢い(後編)

 中国人留学生もエネルギッシュだ。でも、それはチャイナ・タウンで会う中国系移民から感じるそれとはニュアンスが異なる。

私が今通っている語学学校は大学附属だ。私は一般的な英語の授業を受けるプログラムに参加するつもりだったのだけれど、33歳だからということで大学院進学用のプログラムに参加することになった。このプログラムにある程度参加して(2セミスターだったかな?よく知らない)、ある程度の成績を取っていると、大学院に入学するために必要なTOEFLのスコア提出が免除されるらしい。全然興味なくて、あんまり詳しく聞いていないのだけれど、そんな感じだった。要するに、私のクラスメイトはみんな大卒で、これからアメリカの大学院に入り、そこで修士号を取得する予定の人たちだ。さらに言えば、みんな、アメリカで働くつもりだろう。そういう人たちは国内である程度の教育水準を満たしている人たちであろう。そのクラスメイトのほとんどが中国人だ。

 そうした中国人留学生からは自信が溢れている。中国という国が今ガンガンに来ていることを反映しているのだと思う。中国人以外の留学生からは一切感じないことだ。前に通っていた民間の語学学校はブラジル人、ドイツ人、スイス人、フランス人、イタリア人、メキシコ人、日本人等で構成されていて、彼・彼女らからはそういうのを一切感じなかったけれど、中国人留学生からはその自信と表現するに相応しいものを感じる。ある中国人留学生はあるSNSのユーザー名か紹介文かをChina No.1としていた。そんなことを書く中国人留学生は他に見た事がないが、でも、それは中国人留学生が有する自信を表すエピソードだと思う。

 そうした自信を支えるのは中国の経済力だと思う。彼・彼女らはブランド物を身にまとう人が多い。GucciなどのハイブランドからSupremeやKITHのような有名ストリートブランドまで色々だが、まあお金がかかっていることはすぐに分かる。それに結構、買い物に行っているようだ。さらに一部の留学生は大学所有のドミトリーに住んでいるそうだが、月3,000ドルだそうだ。確かにマンハッタンは地価が高い(物価も高い)。それでも、月3000は相当だろう。「高いから近いうちに引っ越す」とは言っていたけれど、いやいやいや…とにかく中国人留学生は基本的に金を持っているのは間違いないようだ。

 ちなみに彼・彼女らは中国国内で紙幣はおろか、クレジットカードでさえこの数年見たことないとかいう人もいた。一緒にご飯食べに行っても、割り勘する時、WeChatというLINEみたいなアプリを経由して、振込をしていた。一時期、ホームレスもQRコードでお金を受け取るというニュースが話題だったと思うが、本当にキャッシュレスが進んでいるんだなということを割り勘しながら痛感した。

 彼・彼女らは別に語学力が凄く高いわけでもない。話している感じでいえば、私と同じか、私に毛が生えた程度だ。クラス分け試験があって、私は二つあるクラスのうちの下の方だった。それくらい私も、彼・彼女らも英語が達者なわけではない。(当たり前だけれど、別のクラスでめっちゃ上手いなって思う人もいた。)人口規模が違うからと行ってしまえばそれまでだが、そのプログラムに日本人が私以外参加していないことにも驚かされる。(別のプログラムには大学の学部生の人たちが数人いた。でも、ただの交換留学で、アメリカで学位を取るために来ているわけではないと思う。)何が言いたいかというと、視線が中国人の学生と日本人の学生では違うのかもしれない。アメリカ全土の大学で統計をとって、それをもとにしたわけではなく、私が通う超有名校ではない大学院進学用の語学プログラムの、1セミスターでの経験で、しかも人口規模の違いがあるから、統計的に正しいかは不明だが、肌感覚で言えば、圧倒的に中国人の学生の方がアメリカ指向が強いのだと思う。逆説的な言い方だが、別に英語力がめちゃくちゃ高いわけではないにも関わらず、である。

 これはアメリカで何年も生活できるほどの経済力が(家庭に)あるかどうかという問題だけではなく、目線とかマインドとかの違いがあると思う。別に私は海外至上主義でもなんでもないけれど、少なくともそこの違いはあるように感じる。かくいう私だって、語学の勉強をして帰るだけだし。

何が言いたいかというと、まとめると、正直、あの語学力でこれから大学院進学して、修士号取ろうという中国人留学生のメンタルの強さが凄いと思うのだ。バカにしているのでは一切ない。その積極的な姿勢を尊敬しているのだ。この事実を知っていれば、私ももしかしたら人生が違ったかもしれない。もっと若ければ、多少語学ができなくても、海外での学位を選択に入れていたかもしれない。私は自分の語学力の無さと語学の勉強が本当に嫌いで海外進学なんて考えもしなかった。とにかくアメリカに来てキャリアを積むというバイタリティを心からかっこいいと私は思っている。そういう意味でも、中国人留学生から強さと勢いを感じるのだ。


 正直、こんなこと言いたくないのだけれど、経済力という観点からしても、日本はもう中国に随分遅れを取っているということを認めなければならないように思う。日本人の中には中国をいまだに見下す人もいるけれど、そういう時代はかなり昔に終わっていたのだろう。経済的な観点だけでなく、中国人留学生の活き活きした姿を見て、私は肌感覚でそう思った。私を含めて、日本人留学生はそんな風ではない。

ニューズウィーク日本版「経済ニュース超解説 日本はもはや後進国であると認める勇気を持とう」(加谷珪一、2019年08月27日(火)15時15分)という記事がある。「後発」をどう定義するかによって議論は異なるように思えるが、印象論で言えば、たしかに日本に勢いはなく、中国には勢いがあるように感じる。数字上のエヴィデンスはこうした記事にお任せするとして、私がNYで中国人留学生と出会った肌感覚として、そう思う。ある種の「負け」を一旦認めてしまえば、ある意味で気も楽になるかもしれないし、何より重要なのは改善すべき問題も見えてくるようになるだろう。

でも、それを認めず、いつまでも高度経済成長や、Japan as No.1というような過去の栄光に囚われるならば、気が付いた時には手遅れなのではないだろうか。今もう手遅れになっているというわけではないことを願うばかりだ。

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