暴漢に襲われたその後(3)謎の達成感
第10話からナイフを持った暴漢に襲われた件について書いている。第10話はその事件のこと、第11話ではその当日のこと、第12話ではその後1週間のことを書いた。今回第13話はさらにそこから約1週間のことを書こうと思う。前々回は警察、前回は病院、今回は大学(学校)に関係する。
10月11日(金)予定通り、大学事務所の人とミーティングを行った。そこで言われたことがなかなか渋いものだった。①まず休学するならば即帰国しなければならないということ。②次に提出した診断書は受理できないということだった。一つひとつ話していこう。
①まず、休学は認められないということだった。こっちでスポーツのチケットとかもすでに買っているし、家賃も帰国日までの分を全て払っているし、帰国時の飛行機のチケットももう買っている。それを全てキャンセルするのは単純に金の無駄だ。面倒以上にいくらドブに金を捨てることになるのか分からない。とはいえ、もう学校に通い続けるのは精神的に無理だ。英語力を身につける前に何かが壊れる。
学校がどうしてここまで厳しいのか。それには理由がある。私が今通っている語学学校は「大学」に附属している。私がミーティングをしたのはれっきとした大学の事務所の方たちとである。本当に正規のちゃんとした大学だ。キャンパスがあるし、そこに大学生がいる。アメリカの大学の一部はこのような附属語学学校を有している。その附属語学学校のカリキュラムをクリアするとその大学や大学院に入ることができるらしい。語学以外にもおそらく試験は課されると思うのだけれど、そうではないと言っている人もいた。正確なところは知らない。私は語学のプログラムさえ受講できればよく、その大学に入るつもりはないから、大して興味もないからちゃんと調べていないのだ。(だから、前回も書いたけれどもう一度念のために言うと、これはあくまでも私の経験や私の知識での話なので、これを参考にして生じたいかなる損害も私は一切の責任を負いかねる。もちろん嘘を書くつもりはないけれど、私が事実誤認をしている可能性は否定できないので。)
こうした大学付属の語学学校は、そうではない民間企業が経営している語学学校よりも、フォーマルだと言われている。よく聞く話だが、ビザの更新目的のためだけに民間の語学学校に行く人もいるらしい。そのような人たちが行く語学学校は料金を低く設定しているし、また教育にコストをかけていないそうだ。仮にそこの生徒が欠席を繰り返していても、大して問題にはしないらしい。全部噂だから実情は分からない。あくまでもそういう噂があるという事実だけを記そう。
一方で大学の語学学校はそういうルーズなところはないと思われる。移民局にきちんと生徒の出席日数を報告しているようだ。F1ビザという学生ビザは基本的に週18時間以上授業にで続けないとビザが失効するらしい。私が通っている大学に関していえば、週2回、14週間の授業で、合計5回欠席するとアウト。この場合もビザが失効する。その場合、すぐに帰国しなければならないらしい。正確にいえば、ビザがすぐさま失効するというよりも学校が発行しているI-20とかいうのが終了になるとかだったかもしれない。このF-1ビザだの、I-20だの、ゴチャゴチャしていて私も完全には把握していない。なんにせよ、休みすぎるとかなり面倒な事態に陥ることだけは確かだ。前回書いたように私が出席日数を気にしていた理由の一つはそこにある。こうした出席日数に対して大学の語学学校はシビアだ。
※※※ビザの話は難しいので、本当に話半分でだいたいそんな感じというくらいに聞いて欲しい。何度も同じこと言うけれど、本当にこのエッセイを参考にして、その結果失敗しても、私は責任を一切取りません。私が置かれた状況の説明のために書いているけれど、警察制度に関しても、病院制度に関しても、そして今回の大学やビザに関しても、記述が完全に正しいとは私は思ってもいませんし、そんな風にも書いていません。間違いがあるかもしれないということはしつこいほど念を押して言っておきます。訴訟大国にいるせいでこういうところに関しては過剰と言われても念を押しておきます。
話を戻そう。大学附属の語学学校はとにかく移民局に対してきちんとその責務を果たす。学校自体の国からの評価とかに関わるのかな?分からない。民間の語学学校でも同様なところもあると思うけれど、噂によればそうでないところもあるそうだ。
大学は移民局の手前、自分たちの判断で勝手に私を休学させることができない。だから、大学事務の方は、私が休学できないという決定は大学の決定ではなく、SEVIS Immigrationの決定なのだ、ということを繰り返していた。(私のリスニングが正しければ)
しかし、意外なことに、その事務所の方は私にとってより良い選択肢を示した。〈現在、4つの授業に出ているが、その内の一つに出席し続けるならばアメリカに滞在することを認める〉という選択肢だった。これなら移民局も認めるかもしれないということだった。私はこうした選択肢があるとは想像していなかった。Reduced Course Loadという制度?方法?仕組み?らしい。事務所の方達はこの選択肢を事前には教えてくれていなかった。ミーティングの最初に私の希望を聞いたが、そんな選択肢があると知っていれば私は休学を望みはしなかっただろう。事務所の人たちがこの選択肢を事前に、あるいはすぐに提示しなかった理由は分からない。私がそういう選択肢もあることを知っていると思っていたのかな。まあ事務所の意図がなんであれ、私にとっては最高の選択肢だ。高い授業料を払っているのだから少しは元を取りたいし、1週間丸々暇を必要とするほど精神が蝕まれているとも思えない。1コマ(週2日、合計5時間)の授業に出ることはむしろ、ちょうどいいとさえ思えた。
②一つめのもう一つの話に移ろう。診断書が受理されない理由は病院のオフィシャル・レター・ヘッドと医師の印がないことだった。(医師のサインも必要だったが、それはあった。コピーではダメだと言われたが、オリジナルも持っていた。)言われてみれば、確かにどれも重要なポイントである。でも、私としては医師にお願いして、渡されたので、それで正直「勘弁してくれ、、、」と思った。なぜなら、この先、手続きにあと何週間かかるのだろうか、という不安が強かったからだ。精神的に緊張感を保ってなんとか1週間乗り越えたが、先行きが見通せないことがストレスだった。より良い選択肢は提示されたけれど、果たしてそれが有効になるにはどれくらいの時間がかかるのだろうか。最速でいつ新たな診断書を入手できるだろうか、それを提出したら移民局の審査はどれくらいかかるのだろうか、審査で無事に承認されるだろうか。そうした「分からない」という不安はメンタルに良くない。
翌日12日(土)に病院の予約が取れ、すぐさま、よりフォーマルの形式の診断書を発行してもらえた。この日はもう身体もバキバキで限界を迎えていたので、ボディ・マッサージに行った。疲れがほんの少し取れ、ほんの少し元気になった。13日はゆっくりしていたが、14日(月)はほとんど寝ることができなかった。睡眠不足で思考もおかしくなっていた。学校の先生と課題や出席日数のことで話していたのだけれど、もうメンタルがギリギリすぎて、それどころではないというのが正直な感想だった。この日に意識がぼーっとしながら、大学事務に最新の診断書を提出に行った。
15日(火)の午前中はもう限界を迎え、自分でも分かるレベルで表情は死んでおり、もう目線を動かすのさえ面倒だった。この国の事務作業というのは基本遅いので、あと何日すれば自分は休みが取れるのか、いや、本当に休みが取れるのか、ということは分からない状態だった。
しかし、幸いなことに16日(水)、ついにSEVIS ImmigrationからReduced Course Loadが正式に承認されたという連絡を受けた。やっと休めるという事実自体が安堵を生み、ストレスを一気に軽減させた。私は謎の達成感があった。もちろん色々な方のご助力の結果でもあるだが、少なくはない部分で、この異国の地で、上手くもない英語で、自分の主張をしたり、現状を把握したりし、最終的にReduced Course Loadを勝ち取った、そういう達成感である。
この日の帰り道、私はカキフライと餃子とラーメンをお腹いっぱい食べた。




