第五話
「皆さん、転校生です。この子です。じゃあ自己紹介宜しく」
そう言ってその先生はやる気をなくしてしまった。
結構変わった先生だなぁ。
そんなことを思いつつも、俺は自己紹介をする。
「橘 始です。宜しくお願いします」
そう言うと、辺りから拍手が聞こえる。
俺は空いていた椅子に腰を沈める。
そして隣の席を見ると見覚えのある顔が……。
「……なんで橘くんが一緒のクラスなの?」
それは、登坂だった。
「仕方ないだろ、監視役なんだから」
「はぁ、今日は厄日だわ」
そう言って登坂は腕の中に顔を埋めた。
そんなに嫌がらなくても……。
そうして、俺と登坂は一時限目を終えた。
すると、一人の女子が俺に声をかけた。
「ねぇ君、何の能力を持ってるの?」
単刀直入だなこの子。
「……自己紹介はちゃんとした礼儀だと思うのだが」
「あ、ごめんね。私、茨木 美香だよ! まぁ、能力なんて簡単に教えてくんないよね。じゃあ代わりに、こっち来て!」
そう言って彼女が俺の手を掴もうとした瞬間、俺は何か、彼女から悪意を感じた。
俺は彼女の手を振り払う。
「ごめん、まだテキストに名前書き終わってないから」
そう言って俺は誘いを断った。
「……そう! じゃあ仕方ないよね、無理なこと言ってごめんね」
彼女は立ち去ってしまった。
「良かったの? 断って」
登坂が俺にそう聞いた。
「いいよ、絶対あれなんかあるじゃん」
「……まぁ君の選択は正しかったよ。あの子、このクラスの女王だから」
「ん? どういうこと?」
俺がそう聞くと、登坂はどうでも良さそうに答えた。
「あの子、転入してきた子や、クラスで目立たない子を、仲間と一緒に虐めてるのよ」
なるほど、それがあの悪意の正体か。
「多分橘くん、これからもっときつくなるよ?」
「あはは……」
俺は顔では笑っていたが、心の中では笑えていなかった。
登坂の言う通り、確かに虐めの誘いが毎日のように相次いだが、俺はことごとくそれを回避していった。
ある日、登坂が聞いてきた。
「橘くん、なんでそんなに回避できるの?」
「んー、なんかそういうの元々分かるんだよね、嘘とか、いたずらとか」
「へぇ、面白い特技だね」
そうしていると、またもや茨木が現れた。
何か書類のようなものを持っているみたいだ。
「ねぇ橘くん、これサインして! 今すぐ!」
俺はその行為に悪意を感じてはいたが、もう面倒臭くなっていたので、俺は適当にサインして渡した。
「はい、これでいいだろ?」
「うん! ありがとう!」
そう言って茨木は急いで教室を出ていってしまった。
「今度は更に危ない奴みたいだったけど、なんて書いてあったの?」
「えーと……」
俺はうっすらと見た書類のタイトルを思い出す。確か………。
「『PVP権の合意書』、て書いてあったな」
登坂は思わず立ち上がってしまう。
「はぁっ!?」
「え、なに? どうかしたの?」
「橘くん、本当に考えなしだね!?」
登坂は呆れたようにしてまた椅子に座った。
え、なんなんだろう、一体……。
そうしている内に、