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エデンのアプル  作者: 仮宮 カリヤ
二章 鷹政学園
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第四話 不良とチビっ子

「………で? 決心はついたかな?」


「はい」


俺は署名した編入届を縦長帽子に見せる。

縦長帽子はそれを空欄がないか確認しているようだったが、すぐに顔をあげた。


「うん、大丈夫だよ。今日から君も、鷹政学園の一員さ! 僕の名前はマッド・ハッター。宜しくね」


縦長帽子と軽く握手を交わす。


「制服やら必要なものは、帰り際に渡すから待っといてね~」


そして俺は、その部屋から立ち去った。

どうやら、俺が帰るまでに少しだけ時間があるようだ。校内を見て回るか。



俺は校内を静かに見て回った。

どの教室も、変わったことは少しもなく、ごく普通の授業に、ごく普通の教科書を使っていた。

やっぱり、おかしかったのはあの先生達くらいか。


そう思っていた。

だがそれは、もうすぐで塗り替えられることとなった。


俺はグラウンドを覗いた。普通にバレーボールをしている様にしか見えなかったが、生徒がボールを打った瞬間、それは発火した。



俺も目を疑ったが、登坂やあの犯人、先生達のこともあったので、俺は即座に理解した。


「セカンドか………」


「その通ーり!」


後ろから突然声音が鳴り響き、俺は即座に後ろを振り返る。

それはマッド・ハッターだった。


「後から言うつもりだったんだけど、この学校は全員、セカンド所持者なんだ」


「つまり、それはどういう……」


俺がそう言うと、マッド・ハッターは答えた。


「この学校の全生徒は、瑠璃ちゃんみたいな超能力者ってこと」


俺はそれを聞いて驚きを隠せなかった。


「凡人は俺だけってことですか?」


「いやいや、僕もそこら辺はサポートするし、学校では体育以外、力は使っちゃいけないというのがルールさ」


だが、何か可笑しい。

なぜこの学校の生徒は、全員セカンド所持者なのだろう。



偶然、の可能性は低い。そんなことが理由で全員超能力者なんてことがあるなら、他の学校にも一人くらいはいるものだろう。



つまり、集められた。と考えるのが妥当だ。だが何故………。


「気になるかい? 何故全員がセカンド所持者なのか」


俺の心を読むようにマッド・ハッターは言った。


「それは、彼らがまた起こるとされる《第三次世界対戦》に向けた、戦争用の兵器として集められたからさ!」


は? 戦争? 兵器?


「どういうことですか?」


「ある『予言』があったんだよ」


マッド・ハッターは、その『予言』について語り始めた。


「ある女性がいたんだ。彼女の名はアストラ。名字は明かされてない。


彼女はセカンド所持者で、『予知』の能力を持っててね。

百年以内に起こることを予知出来る。それが彼女の能力だった。


そして彼女が寿命を迎えかけた時、最後の予言をした。『世界でまた、争いが起こる。その名は、《第三次世界対戦》』そう言い残して亡くなっちゃったんだ。だから僕達は、その時までの準備をしている」


「それが登坂たち、鷹政学園の生徒ってことですか?」


「そういうこと」


「それって、その時が来たら死ぬかもしれないってことですよね?」


「そうなるね、でもその為に楽な暮らしさせてるんだしさ」


俺は怒りの余り、マッド・ハッターの襟首を掴んだ。

だが、俺の手が彼を掴むことはなかった。

代わりに、俺の手はマッド・ハッターを透け通っていた。


「………あんたもセカンド所持者か」


俺はそう理解した。


「……僕も出来ればそんなもの、起こしたくはないよ。だから僕も日々頑張ってるんだ」


「もういい、あんたとの話は飽きた」


俺はうんざりして、その場を去った。

きっと、怖いだろうな、戦争に行くのは。



俺は戦場で涙を流しながら戦う、登坂の姿を想像してしまう。

身の毛がよだつのを感じる。

本当に、恐ろしい想像をしてしまった。



そうしていると、俺は校舎裏にまで歩いていた。

そこでは、所謂虐めというのが行われていた。

一人の背の小さな女子を複数の男子が脅しているように見える。止めなければ。

俺は彼女の前に体を出す。


「「おい、女の子を虐めて楽しいか?」」


………ん?


俺は何か違和感を感じる。

今、誰かが全く同じことを言ったような……。


「あ、レオンだ! 逃げろ! 狩られるぞ!」


そう言って男子共は走り去ってしまった。



すぐ横を見ると、柄の悪そうなアクセサリーをつけ、目付きの悪い男がいた。

きっとこいつが、さっきの違和感の正体だろう。

すると、その男も俺に気付いたようだった。


「お前、見ねぇ奴だな。どのクラスだ?」


「いや、違うんだ。俺は今度から入る転入生なんだ」


「あぁ、そう」


男は興味もないようにそう言った。

なんだよ、お前から聞いた癖に。



さっきの女の子は、俺達の会話に火の粉を感じたのか、男の後ろに隠れた。


「なんだ、お前ら友達かよ」


「そうだよ、なんか文句あるか?」


男が喧嘩腰にそう言うと、女の子はやめてと言うように男の服を引っ張った。

男もそれに気づく。


「………あー、分かったよ」


男は手を俺との間に差し出す。


「俺が無害な奴に何か悪いことをしたときのルールだ。すまなかった」


男はばつが悪そうに首に手を置いた。

なんだ、悪いやつではないのか。

俺はその手を取った。


「あぁ、転入したら宜しくな。名前は?」


「俺は四篠(ししの) レオン。で、こっちのちっこいのは児童(ちごどう) ミヤビ……って痛てぇから」


女の子、ミヤビは「ちっこい」と言われたことを根に持ったのか、レオンを両腕で太鼓のように叩いていた。


「あはは、俺は橘 始だ。これから宜しく」


「あぁ、それじゃあな」


そう言って俺達は各々別の道で帰った。

少し気になったが、根は良い奴等で良かった。


「ねぇレオくん、友達作らないの?」


さっきまで全く話さなかったミヤビが口を開いた。


「あいつとか? 冗談じゃねぇ。お前だけで十分だ」


レオンはそう言ってミヤビの頭をわしゃわしゃと掻いた。

ミヤビは恥ずかしそうな顔をする。


「それに、どうせあいつも偽善者だろ」


その言葉を聞いて、ミヤビは悲しそうな顔をしていた。

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