ライバル
「おい、すかし野郎。」
「誰がすかし野郎だ。なんだよ、ナルシー。」
「相変わらず嫌な奴だぜ。暇ならちょっと付き合えよ。手合わせしようぜ。」
初めて会った馬小屋の近くまで移動する。セレンは槍を抜き、構える。
「ん?二本使うんじゃねぇのか?」
「まぁ、お前が強ければそのうち使うさ。来いよ、木刀なんかじゃなく真剣でいいぜ。」
「あぁ、最初からそのつもりだ。」
セレンの槍が雷を纏う。こちらに一気に駆け寄ると突きや薙ぎ払いを混ぜながらリーチを活かし、間合いを詰めることができない。
「ほら、どうした。避けてばっかじゃつまんねぇぜ。」
まともに受け流せば電流が刀身を伝って手に伝わる。以前より成長したとはいえ、それはセレンも同じだった。なんとか、避けながらも攻撃のタイミングを見計い、距離を置く。
「くらえ!」
前に突き出した槍から電が放たれる。剣で受け止めると同時に剣を落としてしまった。
「しまった。」
次の攻撃が来る前に地面に突き刺さった剣を抜く。溜まった電気が流れると思ったが何も感じなかった。
「あれ?」
一度だけガイアとセレンが手合わせしているところを見たことがあった。思い出せば、ガイアは普通に攻撃を受け流していた。
「おい、ぼーっとしている暇はないぜ!」
目の前に迫る攻撃を見よう見真似でさっと受け流した。少し手が痛むが幾分か平気だった。
「よしっ。」
落ち着いて足運びに気を遣いながら、普段通りを意識する。集中力が研ぎ澄まされる。多少はくらいながらも、何度か切っ先をセレンに浴びせる。
「少しは良くなったじゃねぇか。なら、こいつも使うか。」
背中から抜いたものは槍らしきものの柄のみだった。
「凍てつけ、アイシス。」
柄の先端から冷気が漏れ始めると、瞬く間に氷の槍ができる。
「俺の槍は二槍一対、本当の名はナルガイシス。ここからが本番だぜ。」
アイシスを地面に刺すと氷の柱を形成し上へ昇って行った。5メートルほど登ると、跳躍しながらナルギアで雷を放つ。地面に着く前に空中に氷の道を作ると滑りながら宙を舞う。滑りながら雷を落としてくるが、避けるので精一杯で足も出ない。
「クソッ!」
「おいおい、さっきまでの威勢はどうした?……気づいてるか?そろそろ逃げた方がいいぜ。」
雷を放ちながら空中にはいくつもの小さな氷柱が形成されている。それが一斉に俺に向かって飛んでくる。
「しまった!」
剣ではじきながらも頬や腕、足をかすめる。
「おい、逃げろって言っただろ。忠告はしたぜ。」
ナルギアには大量の電気が溜められている。それを勢いよく放つ。俺はとっさに飛び退き、ダイブした。地面に刺さった氷柱が一瞬で溶けると、爆発を起こした。離れたとはいえ、爆風で吹き飛ばされる。セレンは周りを氷で覆い、防御していた。
「さて、そろそろ終わりか。」
その時、街中に警笛が鳴り響いた。