修行
木刀を握り締め、ガイアに打ち込む。余裕の表情で受け止めながら、一旦距離をとった。
「なるほどね。なかなか悪くない攻めだ。じゃあ、俺も行くよ。」
殺気もなく、ゆっくりとした振りが来る。何度か受け止めるが、少しずつ防ぎきれなくなっていく。
「隙あり。」
目の前に木刀を突き立てられた。ふぅ、と一息つきながらゆっくりと剣を下ろす。
「なんでだ。ゆっくりしてるのに、全然追いつかないなんて。」
「んー、動きに無駄が多いんだよね。俺はゆっくり振ってるけど、無駄な動きは極力してない。それに比べて、ファウルスは力みすぎたり、いなし方や足運びに無駄があるね。攻める時も一緒だ。とりあえずは基本の反復だな。型は我流か?」
「あぁ、親父の型を真似しているがしっかりと教わったわけじゃないしな。」
「別に俺の真似をしろとは言わないが、素振り200回からしようか。相手をイメージしながら、力加減にも注意しながらな。あと足運びくらいは基本のものは教えてやるよ。」
「わかった。よろしく頼む。」
構え直し、相手をイメージしながら剣を振る。一日に何百回と振ってきたこともあったが、がむしゃらに振ってきた時と違って、精神力を使う。半分くらいのところでやめの合図がきた。
「はぁ、はぁ、はぁ。まだ半分くらいだぞ。」
「まぁ、少し休憩しようか。意外と疲れるだろ。休憩がてら足運びでも教えてやるよ。」
しばらくガイアの動きを見ていた。何気ない一連の動きだがスムーズで美しいと感じた。
「さて、真似してみなよ。」
同じように動いているつもりが、ぎこちなさを感じる。
「まぁ、大体そんな感じかな。毎日続けな、空いた時間でもそれくらいならできるだろ。」
ガイアは剣を構えると素振りを始めた。ガイアがどんな相手をイメージしているのかわかるようにしなやかな流れだ。そこに自分のイメージを重ねる。勝てるどころか何度もやられるイメージしかわかなかった。
「ふぅ、こんなもんだろ。明日からは副隊長と修行な。俺は用事あるから。」
「わかった。何か任務でもあるのか?」
「いや、昼寝だ。副隊長、スパルタだからな。俺は自由に一日過ごしたいだけさ。」
「昼寝するなら、教えてくれよ!」
「夕方な。ふぁーあ、眠いから今日はここまでだ。しっかり復習しとけよ。」
ガイアはそういうと人ごみに紛れていった。俺は教えられた通り、素振りと足運びの練習をする。
「あいつが戻ってくるまでに早く強くならなきゃな。」
次の日からはセレンと一緒にメーテルの指導を受ける。
「休んでる暇はないわよ!次は筋トレね、腕立て伏せから私がいいと言うまで!」
「クソッ、外周終えたばっかだぞ。何で今日はこんなにキツいんだよ。」
「ほら、無駄口叩いてんじゃないわよ!そんなことだと、新入りにすぐ抜かれちゃうわよ!」
持っていた棒でセレンを引っ叩く。
「いってぇー!ぜってぇ、やり返す!こんな奴に誰が負けるかよ。」
午後になるとようやく休憩が入った。
「お昼にするわよ!30分後にここに集合ね。」
『はぁ…、はぁ…はぁ…。』
水を飲みながら握り飯を頬ばる。
「おい、セレン、いつもこんななのか?」
「いや、いつもはもう少しマシだよ。てめぇが来てからだ、このすかし野郎。」
「誰がすかし野郎だ。」
「殆どしゃべらねぇくせに俺ばっか怒られるじゃねぇか。後輩なんだからそうだな、俺のことはセレン様と呼べ!そしたら困ったときに助けてやらんこともないぜ。」
「呼ぶか!ナルシスト野郎。」
「聞こえなかったなぁ。今、なんつった?」
「ナルシーって呼んでやるよ。ナンシーとかの方がいいか?」
「ぶっ殺す!」
セレンが槍を構えた瞬間、互いの頭に大きな岩が落ちてきた。
「あんた達仲良くできないわけ?休憩は終わりね。次、行くわよ。」