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13 プライド

 重い金属装備の音が歩く足の歩調に合わせてガシャガシャと洞窟内に鳴り響く。

 ワイバーンから逃げのびた四人の傭兵だ。


 二列に並んで歩いているが髪や革装備は焦げつき、金属装備は高熱で形を歪ませていた。


 その表情はダンジョン入り口から入って来た時とは違い、苦い表情で顔をひきつらせていた。

 すでに体力がゴッソリと削られており、重装備が彼らの足取りをさらに遅くしていく。


「クソ!なんだってんだこのダンジョンは。魔物のレベルがまるで無茶苦茶じゃねえか」

「はした金の報酬じゃ割りに合わねえ、もうさっさと帰るぞ」

「あの妖精族ども、俺達を騙しやがったんだ。ふざけやがって!」


 全員満身創意で歩くのがやっとの様子だ。

 多種多様なモンスターと戦い、そしてワイバーンとの遭遇でボロボロになっている。


 そこへ聞き慣れない駆動音が遠方から耳に届いてきた。

「オイ‥‥何か来るぞ?」

「陣形をとれ!‥‥なんだ?すごい速さでこっちに来る」


 身構えながら、猛スピードで飛び込んでくる者を視認した。

 それはダンジョンのガイド役の黒髪少年であった。


「上にいたガイドのガキだ。なんだ?凄いスピードでくるぞ‥‥!」


 その動きはスキルと装備による物であるのだろうが、制御がとても滑らかであり直進していた状態から体を横に捻って急停止の態勢に移行していた。

 地面を削り、小石を飛ばしながら彼らの手前、10歩離れたあたりで静止する。


 ただのダンジョン受付の人間だと思っていたところで、高速移動の制御を顔色ひとつ変えずに滑らかに行う司の姿に驚く傭兵達であった。


「皆さん、無事だったんですね」

「おいお前!何なんだそのスキルは!」


「はい、ワイバーンの出現を確認したので様子を見にきたんです」

「そうだオイ!こんな低層なのにワイバーンが出やがったぞ!」

「それに物理攻撃が効かないヤツばかりじゃねえかよ!」


「ダンジョン内での詳しいガイドのために小妖精のサキを同行させてあったはずです。サキから魔力変換の事は聞いてませんか?」

「今の時代に魔力を内包してる人間がどこにいるってんだよ!」


「いえ、ですから魔物から得られる魔石が魔力の源になるんです。それを得ながら魔法を使って攻略するのが――」

「うるせえ!俺たちは戦士(アタッカー)だ。魔法なんか使ってられるかよ!」


「‥‥いや、そう威張られても‥‥」


 司は呆れてしまった。

 過去の実績を振りかざして案内を聞かない時点で諦めていたのだが、新世代のダンジョン探索に物理攻撃だけのままで挑んで敗走するが威張る。


 暗黒時代の魔術研究によって特に描陣魔法、【ルーン魔術】はその文字を簡略化させる事が出来ているため魔力さえあれば簡単な魔法くらい誰でも使えるようになるものである。だから信じられなかった。形骸化した栄光にすがって頭が固い。


「‥‥頭でっかちだなあ」

「おい!今なんて言った!」

「てめえ!俺たちは今回ギルドから直接声をかけられた選抜部隊だぞ!」


「はあ、すいません。‥‥で、エルフの女性はどちらに?」

「ここにいねえんだから分かるだろボケ!デケエ翼竜が現れたんだから構ってられるか!」


「‥‥!」

 呆れを越えて怒りが込み上げてきた。

 司は憤怒の目を彼らに投げつける。

 ガイドの体面を保とうとした司であったがすでに本音が抑えられない口調になる。


「‥‥見捨てたんだな‥‥彼女を!」

「ガキが口の聞き方に気を付けろ!誰のおかげで平和な世界が築けられたと思ってんだ。全部俺達先人達のおかげなんだぞ!」


「だったら女の子くらい守れよ大先輩‥‥」

「テ‥‥テメェ!黒髪のクセに‥‥ぶっ殺すぞ!!」


「うるさい!アンタらよりも俺にとってあの子の方がずっと貴重なんだよ阿呆!ドアホ!大のオトナが女の子に守られて恥ずかしくないのか!」

「なっ‥‥!!」


 司の超個人的な言いがかりであった。

 地球からの転生者である司はエルフの方が大事という価値観を持っている。

 妖精族は勢力を小さくし、幻想的な自然現象も合わせて消滅しようとしていた事から保護するべきものとして捉えている。


 ハア、とため息をつき、これ以上の押し問答はムダだと判断して視線を遠くへ向けた。


「もういいです、あなた達は早く地上に戻っててください」

「おいテメエまさか‥‥助けにいくつもりなのか?

「どうやったって敵う相手じゃねえよ。俺たちがこんなに大火傷を負って撤退してる位だぞ」


「僕は勝機なしで挑んだりはしません」


 司は先ほどの魔物、大蝿を倒した際に得た魔石を手に持ち見せた。


 そしてそれを握りしめ、拳の中でバキッと砕く。

 すると掌の中から光の粒子が舞い上がり、司の体を包んだ。


『1魔石を|WD-MP《ウェスティンダンジョン魔力》に変換。6MPチャージ』


 目の前でダンジョンスキルを実行して見せた。

 魔力が徐々にチャージされていく。たった一体分の小粒魔石では得られる魔力は通常1MPと少ないが、ネオダンジョン用のMPとして変換する事で6倍の魔力に変換することができる。


 魔物を討伐するたびに大量の魔力を得続けられる仕組み。

 このセオリーに倣う事で効率的なエネルギーサイクルを実現させて延々と魔石を稼ぐ事が出来るのだ。


 司は傭兵達の受けた体のダメージの様子を見て、自身に向けて炎に対するバフ魔法のルーンを描いた。


【耐炎膜】(ディファイア)展開。4MP使用』


 初級の魔法ではあるもののワイバーン対策を目の前で施術して見せ、この新生迷宮においてどれ程魔法が有効なのかを想像させた。


「僕にはどんな相手にでも魔法によって対抗手段があります。けどアナタ達はぶら下げてる勲章(プライド)を外さない限り、いつまでもこの迷宮の深部に挑む事なんてできません」

「てめえ‥‥!」


 そう言って司は再び人工魔装を駆動させる。

 次の瞬間には姿を消すような勢いで疾走し、その場に風だけを残した。

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