紫苑ちゃんへ
『紫苑ちゃんへ
これを読んでいる、ということは、もう、わたしはいないのかな。
こんな、手紙をのこすなんて、少しはずかしいし、みれんがましいと思うかもしれないけど、さいごまで読んでくれるとうれしいです。
はじめて紫苑ちゃんと会ったのは、四月のはじめごろだったよね。紫苑ちゃん、とっても寂しそうで、思わず話しかけちゃった。紫苑ちゃん、わたしに消えてほしくて、ひどいこといったよね。いまでも根にもってるんだよ!
でも、わたしが花をもって近づいたら、どこかうれしそうにしてたの、きづいてたからね。ゆるしちゃうよ。
名前もおしえてもらったし、あのとき、とってもうれしかったんだ。わたしの余命が先生からおしえられたころだったから。あの時のわたしには、花をそだてることだけが、わたしの生きがいだったから。花言葉をおしえる。それが、わたしがそんざいする意味にも思えて。希望が見えたの。あの時、あげた花はなんだったかな? おぼえてるかな? あなたにあげると同時に、わたしも、紫苑ちゃんから希望をもらったんだよ。
二回目、いや、三回目だったかな。紫苑ちゃんが花を持ってかえるとき、少しめんどうそうにしてたの、気付いたんだ。だから、うえきばち、用意しちゃった。紫苑ちゃんは、顔には出さないけど、よろこんでくれたよね。
お母さんと紫苑ちゃんがはじめて会ったとき、おこってるお母さんをなだめてくれたのも紫苑ちゃんだったよね。紫苑ちゃんがあのとき動いてくれなかったら、きっと、あの日でわたしたちの関係は終わってたと思うんだ。ありがとう。
そのあと、紫苑ちゃんが学校にも行かなくて、れんらくが取れなかったんだよね。紫苑ちゃんがたいへんな目にあってるって知らなくて、ベッドからずっと紫苑ちゃんをさがしてた。友だちしっかくだね。でも、病院で会えたときはほんとうにうれしかった。紫苑ちゃんがわたしのこといやになって通学路をかえたんじゃないかってかんがえてもいたから。
紫苑ちゃん。わたし、紫苑ちゃんが大好きだよ。
紫苑ちゃんが大好きだから、いまからひどいことをいいます。
わたしのことをわすれてください。
紫苑ちゃんはこれからを生きる人だから。かこの人にこだわってちゃ、ダメなんだよ。
紫苑の花言葉を、紫苑ちゃんにはせおってほしくないから。だから、おねがいです。
わたしのことをわすれてください。
でも紫苑ちゃんはやさしいから。
わすれたくないっていうとおもうから。
だから。
どうしてもできないというなら、おねがいです。
いっしょに入っている写真の花を、しらべてください。
それがわたしのほんしんで、さいごのじゅぎょうです。
紫苑ちゃん、大好きだよ。
いままで、ありがとう。
菊より』
菊からの手紙に目の前をにじませながら、便箋とは別に入っているもう一枚の紙を取り出す。
そこにあるのは、菊の花びらを桃色に染めたような花だった。
ネットを駆使して、キク科の花から徹底的に調べる。
花を、花言葉を。
そして、それは――――――




