二人の少女の思い出
かつかつと革靴が石畳をたたく音がする。
音を奏でる少女――黒月紫苑――は、どこか不機嫌で、うつむいて小さくため息をついている。
紫苑が纏っているのは、高校のセーラー服で、白い布にワンポイントとして青い線、リボンは青く紫苑が歩くたびにゆらゆらと揺れる。白い布は、木々の影の合間からこぼれる光によって、赤く染まる。
紫苑が歩くのは、学校から家までの通学路。
ふと、紫苑が顔を上げれば、紫苑が親友と出会い、親友との時間の大半を過ごした公園に来ていた。
紫苑は何かに導かれるように公園の中へ入っていく。
公園の敷地は小さく、すべり台と鉄棒、そして花壇とベンチだけで事足りてしまうほどだ。昔は、すべり台の下にシーソーがあったとの話だが、危険だと判断され撤去されたらしい。
そんな小さな公園のベンチは、花壇を一望できる位置にあり、それでいて近くに木があるためか落ち葉などで薄汚れている。
紫苑は気休め程度にベンチの汚れを手で払い、腰をかける。
持っていた荷物は横に置いて、花壇を眺める。
花壇は紫苑の記憶より質素で、お世辞にも綺麗とは言えない。ちらほらと雑草と見間違えそうな草花があるだけだ。
過去がただただ遠くて、寂しくて、紫苑は目を閉じる。
今なら夢の中であの子に会えそうで、紫苑は微睡みに身体をゆだねることにした。