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桃星人(ももせいじん)  作者: 小林カジノ
1/1

ミネとピーチの出会い

「いいケツしてんなぁ!」


 仕事帰りのコンビニにてグラビア雑誌拝見が、日課になっております。

 いい年したおじさんですけどいいですよね。今日もお勤めご苦労さんしてきたし、一人身だし……。

 僕は、尻にこの上なくそそられ、必ずそこをチェックします。

 やはり、プリっとした桃尻が好みで……

「おおっ! これはっ!」

 僕はものすごい衝撃を受けた。こんな素晴らしい桃尻がこの世にあったとは!……その瞬間、僕は飛んだのか落ちたのか、前世の記憶が鮮明に蘇った……。


 その頃、地球の衛星は月と桃で、隣り合って一緒に周っていた。

 だが、ある時、桃が大爆発を起こし、木っ端微塵に砕け散ってしまった。その衝撃波は凄まじく、地球の地軸が23.4度傾き、桃の欠片は三日三晩、雨アラレのように降り注いだ。

 幸い、桃の欠片は柔らかく、そのほとんどが大気圏で燃え尽きるか、小さくなった。

 ただ、地震、津波、火山噴火、あらゆる災害が勃発した……。

 

 やっとこの天変地異が治まった頃、私は初潮を迎えた。

 夜も寝つけず、

「ほんま、どないなっとんねん」

 月だけ見上げながら、外をふらついていた。

 月灯りに照らされた山河はすっかり形を変え、向こうに見える海は何事もなかったようにいでいる。


「ダルいわぁ! アンニュイってこういう事?……歌お!」

「ブッ殺すで、ヘタレな心を! つんざくで、真っ暗闇を! 脳みそ串刺しにして食ったるで! ツッタン、ツツタン、ツッタン、ツツタン……」


 口太鼓やってたら……


「助けろ〜 助けろ〜」


と弱々しい声が聞こえてきた。

 なんや?「助けろ」って? えらそやな。


「おーい! どこー?」

「こっちで〜す」


 私は声のする森の方へ進んだ。 

 すると木の袂に裸の男が蹲っている。


「ねえ、どうしたん?」


 近づいて声をかけた。


「地球人の方ですか?」

 

「プッ!」


 顔を上げたそいつの顔を見て吹き出してしまった。


「なんやあんた、ケツみたいな顔して!」


 ゲラゲラ笑っていると、


「失礼ですよね! 初対面で!」

「ごめん、ごめん、で、あんた何者?」

「私は、桃から逃れた桃星人、ピーチ」

「あーっ、……そうなんか!」


 私は後ろを向いて、肩を震わせた。やっぱり顔が面白い。声も妙に高いし、ピーチってだっさい名前やし……。


「どうかしましたか?」

「いや、別に……」

「で、あなた、お名前は?」

「私はミネ、こっからちょっといった神阪かみさかてとこに皆で住んでる」


 桃星人や月星人は昔から、いるという噂があり、目撃者もいて、神坂でもかなり信じられていた。

 ただ、まともに接したのは私が初めてだと思う。


「はぁ〜」


 ピーチは力無くため息をついた。


「実は私、おなかが空いて死にそうなんです。何か食べ物を持ってきて下さい。」

「死にそうて大袈裟やな。なんや言葉丁寧やけど、上からやな……。まあええわ、待っときや。食いもんなんてその辺になんぼでもあるんやから」


 森にはみかんやら、りんごやら、バナナやら、いくらでも果物がなっていた。桃の爆発により、かなりやられてはいたが……。

 ごっそり取ってピーチに持っていってやった。


「ありがとう、ミネさん」


 言うと同時に、ピーチは貪り食った。あっさり平らげると、 


「物凄く美味しいです! もっと持ってきて下さい」

「ほんまか⁉ ほなまたちょっと待っときや」

(あいつ何や、けっこう図々しいな)……。


「ありがとう、ミネさん」


 ピーチはまたあっさり平らげた。


「もっと持ってきて下さい」

「ええーっ! もうええやろ! あんたちょっとおかしいで!」

「さっきも『助けろ〜』とか言ってたし。当たり前のように『持ってきて下さい』て、普通は『助けて〜』やろ、ほんで『悪いんやけど、もうちょっと頼める?』とか、そんな言い方せなアカンやろ!」

「ああっ! すいませんでした。実は僕達の星ではお願いする事が極力禁止されていたんです。歴史上月星人を激しく怒らせてしまった事がありまして……。その頃、桃星人と月星人はそれなりに交流があり、それなりに仲良くしていました。桃星人は、人の良い月星人に何でもかんでもお願いしていたんです。例えば、『掃除しといて』とか、『洗濯しといて』とか、『皿洗っといて』等々……。そうしたら月星人は溜まりに溜まっていたらしく、桃星人を一人残らず殴り倒したんですよ! もちろん桃星人に悪気は無く、月星人は喜んでお願いを聞いてくれていたのかと思っていました。それが原因で今後はお願いはしないようにと法律で定められたんです」

「何や、おっかしいな! お願いしないように言うたかて、命令口調になってるだけやん。逆に腹立つで……。アホみたいに何でもかんでもお願いし過ぎたんを、気ぃつけたらええんちゃうん?」

「確かにそうですね! 不快な思いをさせて申し訳ないです。せっかく助けて頂いたのに……」


 ピーチはすっかり傷心したようで俯いて涙をこぼしていた。


「もう、ええって…(極端なやっちゃなぁ)」


と思ってたら


「ぐおおおおお……」


 イビキが聞こえてきた。


「寝てるやん! 何やこいつ!……帰ろ!」

(ふざけたやっちゃなあ!……けど、あの顔笑えるわ! みんなに見せたいな……ププッ!)


 私は月だけ見上げながら笑っていた。



























 



  

 

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