~叶人編~
俺は関根叶人。突然だけど俺は結構モテる。ノリのいいお調子者だから好かれるらしいけど、男女関係なくモテるのは困る。ちなみに、困るのは男からの好意じゃなくて、女子からの好意だ。俺はゲイだから想いに応えてあげられないから。片思いする気持ちも、告白するのにどんなに勇気がいるのかもわかるから余計にね。まあ、そんなことはおいておいて、つまり俺は相手に困ったことは一度もない。
叶「おはよう、悠ちゃん」
悠「おはよう。叶人、ちゃん付けはやめろっていつも」
叶「はいはい」
この人は松本悠汰。家が隣で幼馴染で親友。クールに見えるけど意外と熱くてすごく優しくて頼りになるんだ。でも、優しすぎて自分よりも他人のこと優先してすぐに我慢しちゃうクセがあるんだよね。
悠「叶人聞いてる?」
叶「え?ごめん、ぼーっとしてた。」
悠「何かあった?叶人すぐに一人で抱え込むから。」
叶「何もないよ。でも、俺ってさノリのいいお調子者のイメージじゃん?だから誰にも相談とか出来ないっていうのは悩みだけどね。」
悠「俺にはそーやって相談できるんだから俺に言えばいい。叶人が実は真面目って知ってるの学校で俺くらいだろ」
叶「ありがとう、悠ちゃん!」
悠「だから悠ちゃんはやめろってば」
叶「それで、さっきなんて言ってたの?」
悠「今日数学あたるけど大丈夫かって聞いたんだよ。難しかったから」
叶「あ!忘れてた!!」
悠「やっぱりな」
叶「やばい!悠様お助けください。ノートを見せてください。お願いします。」
悠「全く、しょうがないな」
そんな話をしていたら学校に着いた。
A「叶人おはよう!」
B「おはよう!」
叶「おはよ!」
悠「相変わらず人気者だな」
叶「まあねー」
教室に着いて悠にノートを貸してもらった。
?「かーなと!」
声のするほうを見ると今の彼氏の杉田貴広がいた。
叶「おはよう」
貴「何やってるの?数学?」
悠「ノートあとでいいから」
叶「あ、悠!」
貴「叶人アイツと仲良すぎ。数学のノートくらい俺が貸してやるから。」
叶「だって貴広の字読めないし…」
貴「俺よりあいつがいいのかよ」
叶「そうじゃない。わかった、ノート返して来るから貴広のノート貸して。」
貴「もちろん!取ってくるよ」
そう言って自分の教室まで取りにいった。その間に悠の元にノートを返しに行った。
叶「ごめんね。気使わせちゃって。ノートありがとう」
悠「今回はどう?」
叶「わかんない」
悠「いつもみたいなことにならないといいな」
叶「うん。ありがとう」
俺が席に戻るとちょうど貴広が戻ってきた。
貴「はい、叶人」
叶「ありがとう」
写そうと思ってノートを開いてみると、まるで象形文字のようなふにゃふにゃの文字が現れた。
叶「じゃあ貴広がノートを読んでくれない?それを俺が書くから」
貴「いいよ。えーと、エヌの…2?3?あっ2だ。2乗、マイナス12。…あ、違う、プラス2だ」
…自分でも読めてないし…。でも、可愛いかも。
叶「貴広ありがとう。もう時間だから教室に戻った方がいいよ」
貴「叶人と同じクラスがよかったなぁ。ここで授業受けちゃおうかな。」
叶「怒られちゃうでしょ?」
貴「はーい」
そう言うと貴広は教室を出ていった。
A「叶人なんかあいつの母ちゃんみたいだったぞ。大変なやつに好かれてんだな。」
叶「そうか?」
確かに言われてみれば、あいつ子供っぽいし保護者の気分になること多いな。手かかるし…あれ、なんかめんどくさいかも。
叶「別れようかな…(ボソッ)」
悠「その方がいいかもな。」
叶「わ!悠、驚かせないでよ。」
悠「ああいう奴はストーカーになる可能性高いし」
叶「うーん…」
どうしようかな…。
B「叶人くんもうすぐフリーになる予定なの?次の相手に立候補していい?」
D「抜け駆けよくない!私もー!」
叶「さぁどうかな。どっちにしても今はいるから」
いつ話そう。一方的にするのは好きじゃないから別れる時はちゃんと話し合いたい。お昼は約束してないから無理かな。やっぱ言うなら帰りかな。今回は一ヶ月か。続かないな。
〜昼休み〜
叶「悠、お昼食べよ!」
悠「彼氏はいいのか?」
叶「今日は約束してないから大丈夫。」
悠「そう。」
俺が悠の前の席に座ってお昼を食べていると、貴広が教室に来た。
貴「叶人!お昼一緒に食べ、よ…」
俺が悠と食べているのを見て固まった。
叶「貴広?大丈夫?」
貴「なんでそいつと一緒に食べてるの?」
叶「なんでって今日約束してなかったじゃん」
貴「付き合ってもう一ヶ月だよ?毎日一緒に食べるのが当たり前でしょ」
叶「そんなの俺は聞いてないから」
貴「でも、だからってそんな奴と一緒にいる必要ないじゃん」
叶「俺の親友だよ」
貴「俺には叶人だけなんだよ?」
叶「だから?」
貴「だから、叶人も俺だけにするべきでしょ」
叶「何言ってんの?」
貴「叶人には親友なんて必要ないって言ってるの!」
叶「…。」
貴「本当はこんなこと言いたくないけど、叶人は何回言ってもわからないみたいだから仕方なく言ってるんだよ?」
俺は呆れた。呆れてなんて言っていいのかわからない。こんな人に別れるなんて言ったらと考えると怖くなった。貴広は何するかわからない。悠に手を出すがしれない。下手したら、うちの家族にも。俺はもう貴広と別れるのを諦めようと思ったその時
悠「…ふざけんな」
いつもクールでこういうのには入ってこない悠の声が聞こえてびっくりしていると
悠「親友がいらないだって?」
貴「そうだよ!お前がいると叶人は俺だけを見てくれないだろ!お前さえいなければ」
悠「馬鹿だな」
貴「は?」
悠「叶人がお前だけ見るなんてないだろ。 だって叶人は学校の人気者なんだから。お前はそんな叶人が好きなんじゃないのか?人気者の叶人をを好きになったんじゃないのか?」
叶「悠…」
貴「そうだよ。そうだけど今は俺のだもん!俺だけ見て俺の言うことだけ聞いてればいいの!それを邪魔するやつは誰であろうと許さない。」
俺のために反論してくれればしてくれるほど貴広は悠を敵対視してしまう。だから俺は決めた。
叶「二人ともやめて」
悠「でも…。」
叶「ありがとう、悠。でももう大丈夫だよ。ごめんね」
悠を、大切な親友を守んなきゃ。悠なら今の俺の気持ちをきっとわかってくれるはず。これはきっと罰なんだ。好きな人がいるのに他の人と付き合うから。それを知ってて俺を見守ってくれていた悠も危ない目に合うんだ。全部俺のせいだ。
俺は昔からずっと実の兄史人のことが好きだ。二つ上の大学一年生。兄ちゃんが男も好きになれるバイだというのは知ってる。だって兄ちゃんは悠の兄の和兄に片想いしてるから。でも俺にはチャンスなんてない。だって血を分けた兄なんだから。
悠「おい、叶人」
叶「ごめんね。貴広行こう」
貴「うん!」
俺は弁当を持って貴広と移動した。
貴「やっと叶人が俺だけのものになった。それよりあいつムカついたなぁ」
叶「俺は貴広を選んだんだから、悠汰には手を出すなよ」
貴「ん、わかった。」
その日から家に帰らず貴広の家に泊まった。
〜数日後〜
俺はあれから悠と話さないようにしている。今日もいつも通り登校して教室に着いた。でもなんか教室の様子がおかしい。悠の席の周りに人が集まっている。近くの人に聞いてみると
A「杉田に殴られたんだと。」
叶「え…」
人をかき分けて前に出てみると、腕に包帯を巻いて、額にガーゼをし、口元が切れている悠がいた。
叶「なんで…」
悠「あ、叶人おはよう」
叶「おはよう…ってそうじゃなくて。」
悠「ああ、これ?大丈夫だから」
叶「俺のせいだよな。ごめん悠。みんな俺にかかわらない方がいいよ」
そう言ってから席についた。その時
貴「叶人!おはよ!!」
叶「おはよう」
俺はいつも通りに振る舞う。
貴「聞いてよ。昨日さあいつが俺に叶人のために別れてやれとか言ってきたんだよ。余計なお世話だよな。だからシメといた」
叶「そ、そーなんだ。貴広が無事ならそれでいいよ。」
貴「うん!大丈夫だよ!」
貴広と別れるまで家には帰れないな。家には兄ちゃんがいる。兄ちゃんが標的になるのは絶対に嫌だ。そして隣の家には悠がいる。そんなの見つかったら危なすぎる。
叶「今日も貴広ん家行っていい?」
貴「もちろん」
その時周囲の雰囲気が変わった。そしてこんな声が聞こえた。
B「親友じゃなかったっけ?(コソ)」
C「友情より愛かよ(コソ)」
D「親友が殴られたのに冷たい人だね…(コソ)」
B・C「ね…(コソ)」
A「悠汰あんなヤツのために色々してやる必要ないよ(コソ)」
全部聞こえてますよー。貴広には聞こえてないからいいけどさ。
悠「え…」
そこで貴広が話しかけてきた。
貴「叶人さ、家に帰りたくない理由でもあるの?」
叶「なんで?」
貴「家帰りたがらないから」
叶「そんなんじゃないよ。貴広とずっと一緒にいたいだけ。」
びっくりした。兄ちゃんへの気持ちがバレたのかと思った。
貴「そうだよね。叶人は俺のこと好きなんだもんね。」
叶「違うよ、大好きなの。」
こんな話をして貴広は教室に戻っていった。貴広がいなくなると皆が来た。
A「い、いつも通りラブラブだな」
B「お似合いだよ…」
叶「ありがとう。」
その日から人気者だなんて言ったら笑われそうなほど全く人が話しかけてこなかった。帰りのSHRが終わると貴広が迎えに来る。
貴「叶人、帰ろ!」
叶「うん!」
E「男子同士とかキモいよね(コソ)」
F「ねー(コソ)」
気にしちゃダメだ。小学生の頃に決めたのにダメだな…。
貴「…と、叶人!大丈夫?」
叶「え、うん。大丈夫」
貴広は俺が貴広だけを見てれば普通に優しいいい彼氏だ。こんなに暗いこと考えてちゃダメだな。
貴「今日うちのクラスもやっと『こころ』終わったよ。本当国語無理。わかんない!」
叶「俺も現文苦手。古典は暗記だからいいんだけどさ」
貴「それなー」
他愛もない話をしていたら貴広の家に着いた。
貴「今日家族みんないないけど大丈夫?」
叶「そのつもりで来てるから大丈夫」
ハズレかと思ってたけど、周りの人や親友と関わらなくなって貴広だけになったら、普通のお付き合いができた。
俺は家に上がってから貴広にシャワーを勧められ先に入ることにした。俺はシャワーを浴びている時ふと思った。俺はいつまで家に帰れないんだろう。あまりにも長い間帰らないと母さんと父さんと兄ちゃんが心配しちゃう。誰にも愚痴を聞いてもらえない。いつ別れられるんだろう…って、俺大事にしてもらってるのに最低…。
コンコン
叶「あ、はい」
貴「タオルここに置いておくよ」
叶「ありがとう」
考えるのやめよ。なるようになるさ、多分…。俺が風呂から上がると、貴広が入った。寝室の戸が少し開いていた。覗くと枕は二つ置かれて戸が少し開いていた。覗くと枕は二つ置かれているが、その横にはしっかりコン〇ームとローションが置いてあった。
貴「叶人」
叶「あ、ごめん。ちょっと待ちきれなくて先にベッドに行こうかと」
貴「仕方ないなぁ」
あまりにも優しい声で呟くのでドキッとした。そして貴広は俺の手を引いて寝室に入った。
俺と貴広は腰にタオルを巻いているだけだったのですぐにハラリと落ちた。落ちると同時にキスをした。そのまま深くなると力が抜けてベッドに倒れた。貴広の家に泊まるようになった日俺は初めて貴広と一つになった。思っていたよりもずっと優しく俺を抱いた。まるで女子のように。それから毎日シていた。シているときは考え事をしないですんだ。
貴「叶人、気持ちよかった?」
叶「うん」
でも、貴広が寝たあとやっぱり思った。これから先この人だけの世界で生きていくのかな。母さんや兄ちゃん、悠と前のように戻れないのかな。そんなのいいわけない。そして俺は今度こそ決心した。別れようと言おうと。決心が揺らぐ前に悠にだけは言っておこう。色々迷惑かけちゃったから。
【俺貴広に別れようって言うことにした。】
用件だけの短いメール。送信した直後
貴「ん…叶人、どうした?」
俺は咄嗟に後ろにスマホを隠した。
叶「な、なんでもないよ」
貴「嘘だね。見せて!」
半分寝ぼけた状態の貴広にスマホをとられた。画面を見た瞬間貴広の目つきが変わった。
貴「ちょっと叶人、これどういうこと?」
叶「そ、そのままの意味だよ。貴広とはもう付き合えない。」
貴「なんで…」
叶「俺は周りの人と普通に話したい。親友も必要なんだよ。」
貴「…。」
貴広が何も言わないのでいけると思った。
叶「俺には貴広だけじゃダメなんだ。どんなに優しくてもらっても」
貴「…わかった。」
俺がホッとしたその時
貴「じゃあこうするしかないね」
と言ってベッドの側の引き出しから手錠を取り出して俺の両手をベッドに繋いだ。
叶「な、何してんの?」
貴「外に出すから俺だけじゃダメなんだよな。優しくすれば大丈夫だと思ってたけど違ったみたいだからもうこうするしかないよね。」
叶「自分が何しようとしてるかわかってるの?監禁だよ?犯罪だよ?俺が叫べば貴広の家族が気づくはずだよ。」
貴「残念ながらそうはならないよ。」
叶「え、どういうこと?」
貴「ここね、亡くなったじいちゃんとばあちゃんの家なんだよね。だから俺はこの家で一人暮らしなんだよね」
俺は震えが止まらない。
貴「それにじいちゃんが昔音楽やってたのもあってこの部屋は防音なんだよね。」
俺は目の前が真っ暗になった。もうここから出ることはできない、みんなに会うこともできないと思った。
貴「叶人が別れようとか言わなければね、こんなことにはならなかったんだよ?明日からは学校も行かせないから。」
次の日貴広は本当に学校に行かせなかった。俺はどうしたらいいのかわからなくなった。
監禁されてから数日経った。あれから外には一歩も出ていない。もっと言うとこの部屋からも出ていない。トイレは簡易トイレに、風呂は入れてもらえず、貴広が体を拭くだけ。それらに関してはもう恥なんてなくなっていた。兄ちゃんに会いたい。家に帰りたい。貴広は俺が学校を休む理由なんて言ってあるんだろう。そんなことを考えていたその時
貴「ただいま」
貴広が帰ってきた。玄関からそのまま俺のいる部屋にまっすぐ来た。まるでペットのように俺をなでた後トイレをキレイにして戻ってきた。
貴「いい子にしてた?」
叶「こんなこといつまでするつもり?」
貴「叶人が俺だけを見てくれるまでいつまでも」
そう言いながら俺の体をなでて少しずつ服を脱がしていく。
貴「今日も一緒に楽しいこといっぱいしようね」
と、その時
ピーンポーン
とチャイムが鳴ったが貴広は無視していた。しかしまた
ピーンポーンピーンポーン
としつこいので
貴「誰だよ、こんな時に」
貴広が玄関に行ってホッとしていると玄関から声が聞こえた。
貴「誰だよあんたら…ちょっと!人の家に勝手に入るなよ!」
誰が来たんだろうと思った次の瞬間この部屋のドアが開いた。
?「いたぞ!」
入ってきた人はそう言うと上着をかけてくれた。
?「大丈夫かい?」
叶「あの…」
P「俺は警察だよ。」
叶「え…」
P「君のご家族とお友達から捜索願いが出されてね。」
よかった…
貴「俺は悪くない!悪くないんだ!」
貴広の叫ぶ声が聞こえた。
叶「あの、貴広はどうなるんですか?」
P「一旦警察に連れていってからだね。」
俺はやっと解放されるんだ。
P「立てるかい?」
叶「はい。」
俺は警察の人に付き添われて外に出ると貴広がパトカーに乗って連れていかれるところだった。
史「叶人!」
母「叶人!」
悠「叶人!」
と三人が駆け寄ってきた。母は無事でよかったと泣き崩れた。悠も静かに泣いていた。兄は俺を強く抱きしめた。
史「無事でよかった…ほんとによかった」
叶「…っ心配かけてごめん。」
その後俺は警察署で事情聴取を受けた。驚いたのは俺が監禁されてからもう一ヶ月近く経っていたことだ。時間の感覚が狂っている。そして貴広はしばらく少年院に入ることになった。
母「無事でよかったわ。警察の人に色々な可能性を聞かされて…ほんとによかった」
悠「ごめんな。俺がもっと上手くやれれば…」
叶「悠のせいじゃないよ。むしろお礼言わせてよ。貴広の家にいるかもしれないって言ってくれたの悠なんでしょ?それなかったら俺はまだ監禁されたままだったよ。」
史「そうだね。悠汰くんのおかげで早く見つけることができたんだよ。ありがとう。」
母「悠くんありがとうね」
そして家に着いた。
叶「悠、ありがとう」
悠「うん。じゃあまた」
そう言って悠が家に入っていった。そして俺も家に入った。家に入ると父さんが待っていた。
父「おかえりなさい。無事でよかったよ。お風呂沸かしておいたからはいってくるといい」
俺はすぐに入った。自分で入るのは久しぶりだ。俺は思っていたよりも怖かったらしく服を脱ぐ時の手は震えていた。風呂にゆっくり浸かったあと、体を洗うために出ると鏡に映った自分を見てびっくりした。体中にあとが付けられていた。これは誰にも相談できない。親に見せたら余計にショックを与えてしまう。いくら俺がゲイなのを知っていても…。それにこんな体を兄ちゃんに見られたくない。俺は跡が消えるまで隠していこうと決めた。その日の夕飯はとても豪華だった。久しぶりに家に帰って来れたと実感できた。食べ終わって自分の部屋に行こうとすると母さんに声をかけられた。
母「明日もし行くのが辛かったら休んでもいいからね」
叶「大丈夫だよ。しばらく行けてなかったからむしろ楽しみ」
母「そう、ならいいけど」
俺は自分の部屋に入った。実は明日行くのは少し怖い。久しぶりだから楽しみな気持ちもあるけど、貴広とのことで皆と変な空気になっちゃったからなぁ。でも…とそんなことをグルグル考えていたらいつの間にか寝てしまっていた。次の日の朝久しぶりに自分の部屋で寝たからか目覚めはよかった。朝食をとって支度をした。
叶「いってきます。」
そう言うと父さんと母さん、兄ちゃんが玄関に出てきて
父・母・兄「いってらっしゃい」
と見送ってくれた。心配してくれているんだろうな。
悠「叶人、おはよう。」
叶「おはよう。」
ああ、いつも通りの朝だ。
悠「元気?」
叶「何その質問。元気モリモリだよ!」
悠「クラスの奴らも説明すればきっと受け入れてくれるから」
なんでそんなに鋭いかな。悠のこういう所どうすればいいのかわからなくなる。
学校に着くと俺を見てコソコソ話している人でいっぱいだった。そりゃそうか、一ヶ月ぶりに登校してきたんだもんね。でも、挨拶すら返してもらえないとは…
悠「叶人…」
叶「どうしたの、そんな暗い顔して」
悠「え、あ、えっと…」
叶「悠、気遣わなくて大丈夫。俺には悠がいるから人気者じゃなくても一人にはならないからね。」
明るく…明るく…。大丈夫、俺は大丈夫。
叶「そういえばちゃんと言ってなかった。」
悠「ん?」
叶「俺のせいで怪我させてごめん」
悠「ああ、あんなの全然平気。もう元気だしって叶人が謝る必要ないぞ」
叶「ありがとう」
話していると教室に着いた。入るのは少し怖かった。ここに来るまでで十分わかってたから。でも勇気を出してドアを開けた。
叶「おはよう!」
A・B「おはよう」
C・D「おはよう」
何人かは返してくれたけどあとはほとんど無視だった。
悠「おい、みんな…」
叶「悠、いいよ。大丈夫だから。」
俺は笑ってなきゃ。傷ついた顔なんて見せちゃいけない。
悠「叶人…」
A・B「!!」
叶「ごめん、ちょっとトイレ」
ダメだと思えば思うほど涙が出てきて止まらなくなってしまった。俺はトイレの個室に入った。やっぱり来なきゃよかったかなと思った。一人で泣いていると、
コンコン
とノックされた。
叶「…。入ってます。」
明らかに泣いている声になってしまった。でもドアの前にいる人は動かず
コンコン
とノックしてくる。
叶「入ってます」
さっきよりも普通に言えたが、
コンコン
またノック…。もう我慢出来ずに
叶「うるさいなぁ!」
とドアを開けると、誰かが飛びついてきた。
叶「!?」
その人は泣いているらしいが俺は状況が飲み込めずにパニックになっていた。その時聞きなれた声がした。
悠「叶人…無理するな」
抱きついてきたのは悠だった。
叶「無理なんてしてないよ?」
悠「嘘だ!一人で泣いてたのに、傷ついたのに…俺にまで強がるなよ!」
叶「悠ちゃん…」
俺はわんわん泣いた。悠も一緒に泣いてくれた。少し治まってトイレを出ると入口のとこに人が集まっていた。
A「叶人、ごめん!」
B「ごめんね」
同じクラスの人たちだった。
C「さっき悠汰から聞いた。」
悠「勝手にごめん。でも叶人は悪くないってことを分かってほしくて…」
叶「うん。ありがとう。みんなもごめん。ありがとう。」
俺はクラスの人たちと仲直りすることができた。しかし、分かってもらえたのはクラスだけで俺は人気者ではなくなった。でも俺はむしろ気が楽になった。そして、時間はあっという間に過ぎて放課後になった。
悠「帰ろう」
叶「うん!」
俺は悠と一緒に帰った。親友がいて良かったと心の底から思った。
叶「ただいまー」
史「おかえりー」
と兄ちゃんが出てきてぎゅーってしてきた。
叶「兄ちゃん、苦しいよ~」
兄ちゃんはいい匂いがする。同じ洗剤のはずなんだけど。勃ちそうだった。
史「ごめん、嬉しくってつい」
可愛い!兄ちゃんに抱いてもらいたい。まあ、無理だけど。
叶「いや、大丈夫。」
俺は急いで自分の部屋に入って自身を落ち着かせた。こんなんで大丈夫なのかな俺。なんてことを考えていると
母「ご飯にするわよー。降りて来なさーい。」
と呼ばれた。急いで着替えて下に行って食事をした。
母「今日学校どうだった?」
叶「久しぶりに行けて楽しかったよ」
母「そう、よかった。史人はどう?彼女とかできないのかしら」
母さん!それは…
母さんは俺がゲイなのは知ってるけど兄ちゃんが和兄に恋してるのは知らない。俺は聞いちゃいけないことを兄ちゃんに聞いたことにハラハラしていた。
史「実は今日、彼女できたんだ。」
叶・母・父「えっ」
兄ちゃんは和兄のことが好きなはず。どうして。
母「どんな子なの?告白はどっちから?」
父「そんないっぺんに聞いちゃ答えられないだろう。」
史「優しい子だよ。告白してくれたんだ。」
兄ちゃん。なんで?和兄は?
母「いつか会ってみたいわ…」
兄ちゃんに彼女…俺は相手が和兄なら諦めようと思ってたのに。食事の間兄ちゃんの彼女の話で盛り上がっていた。食事の後俺は兄ちゃんの部屋を訪ねた。
コンコン
史「どうぞ。」
叶「兄ちゃん、なんで?」
史「何が?叶人どうしたの?顔怖いよ?」
叶「なんで彼女作ったの?」
史「それは…僕だって男だもん。彼女くらい欲しくなるよ。」
と言いながら兄ちゃんは両手をグーにしていた。それは兄ちゃんが昔から嘘つく時の癖だ。
叶「嘘だね。」
史「嘘じゃないよ。絵梨子ちゃん可愛くて優しいいい子なんだよ」
叶「和兄は…」
史「ん?」
叶「和兄はどうするの?諦めたってこと?」
史「!なんで知って…僕誰にも言ってないのに…」
叶「そんなの兄ちゃんの話とか態度とか見てればわかるよ」
史「もういいんだよ。これ以上望んでも和くんは絶対僕を好きにならないんだから。」
叶「そんなのわかんないじゃん!」
史「わかるよ」
叶「その気持ちは和兄にちゃんと伝えたの?」
兄ちゃんは首を横に振った。
叶「傷つくのが怖いんだ。好きになるかならないかなんて言ってみなきゃわかんないじゃん!」
史「どうせ叶人にはわからないよ。当然のように人に好かれて片想いしてる人の気持ちなんてわからないでしょ。」
そんなことないって言おうと思ったのに、もし言ってしまったら…と怖くなって言葉を呑んでしまった。俺も兄ちゃんのこと言えないや…。その時
母「お風呂沸いたわよー」
史「先入っていいよ。」
叶「兄ちゃん…」
史「早く行きなって」
俺は兄ちゃんの部屋を出て急いで風呂に入った。兄ちゃんと話して兄ちゃんはやっぱりまだ和兄のことが好きなんだとわかった。俺にはどうにもできないけど…。でも…と風呂の時からグルグル考えていたら朝になっていた。下に降りると
史「叶人、おはよう」
いつも通りの兄ちゃんがいた。
叶「おはよ」
史「どうしたの?元気ないね…」
兄ちゃんのせいなのに。まったく…
叶「大丈夫!元気元気!」
いつも通りの時間に食べ終わって、家を出た。外にはもう悠がいた。
叶「おはよう」
悠「おはよう…って凄いクマ!大丈夫?昨日の気にしてるの?」
叶「違うよ。実はね…」
俺は兄ちゃんに彼女ができたこと、彼女できたけどやっぱ和兄のことまだ好きなこと、それと俺と兄ちゃんの話した内容を話した。
悠「あー。でも史人さんの言うこともわかるな。片想いのときってそう考えちゃうもんだもんな。叶人もそうだろ?」
叶「まぁそうなんだけど。俺は恋愛対象外だけど兄ちゃんの和兄の恋愛対象になれる可能性はゼロじゃないじゃん。」
悠「叶人もゼロではないでしょ。自分のとこは誰でもゼロだと思っちゃうんだよ。」
その日の授業中俺はずっと考えた。確かに自分の恋はゼロだと思う。でもそんなのは別にいい。どうすれば兄ちゃんの背中を押せるのか考えて俺は決意した。下校の時その話を悠にすると、
悠「そう、頑張れ。」
と応援してくれた。
叶「ただいまー」
母「おかえりなさい」
叶「兄ちゃんは?」
母「部屋にいると思うけど」
叶「ありがとう。」俺は急いで階段を上った。気が変わらないうちに。
コンコン
史「どうぞ」
部屋に入ると兄ちゃんはメールをしていた。
叶「兄ちゃん」
史「叶人、おかえり。昨日はごめんね。」
叶「それはもうらいいんだ。それより話があるんだけどいいかな?」
史「うん、いいよ。どうしたの?」
携帯を置いて俺の前に座った。
叶「あのね…」
手が、声が震えてしまう。すると兄ちゃんが俺の手を握って言った。
史「ゆっくりでいいよ。」
いつもならドキドキするのに今はドキドキしない上に震えがおさまった。
叶「ありがとう。それでね、実は俺…ずっと昔から兄ちゃんが好きなんだ。」
史「ありがとう。僕も叶人大好きだよ。」
叶「そうじゃなくて恋愛対象としてすきなの。」
史「えっ」
兄ちゃんは目を見開いてびっくりしていた。
叶「小さい頃、兄ちゃんを好きになって俺はずっと見てた。そしたら兄ちゃんは和兄が好きなんだってわかった。その時嫉妬とかより兄ちゃんが好きな人と幸せになるといいなって思った。もし二人が一緒になるなら俺は諦めようって思っていろんな人と付き合ってきた。でも兄ちゃんは好きな人を諦めて別の人を選んだ。だから俺は諦めるのやめるよ。」
史「叶人…俺は…」
俺は兄ちゃんに顔を近づけた。
叶「兄ちゃんは本当に諦めていいの?傷つきたくないから和兄諦めて俺にキスされちゃうのと、諦めずに和兄に告白するのどっちがいい?」
こんなの半分脅しみたいな気もするけど、兄ちゃんには心から笑っていてほしいから。
史「…。」
兄ちゃん困ってる。もう一押し
叶「もし兄ちゃんが俺にキスされちゃうのを選んだら期待しちゃうから」
史「…叶人は、僕の大事な弟だから…。ごめんね。」
それを聞いて俺は兄ちゃんから離れた。
叶「兄ちゃん、和兄に彼女がいてもちゃんと自分の気持ち言わなきゃダメだよ。上手くいってもいかなくても前に進むためには。」
史「ありがとう」
叶「今和兄家にいるって」
史「僕、行ってくる!」
叶「うん。いってらっしゃい。」
兄ちゃんは走っていった。俺は泣かないぞと心に言い聞かせながら自分の部屋に戻った。すると下から
母「あら、悠ちゃんいらっしゃい。叶人なら上にいると思うわ。」
コンコン
叶「どうぞ。」
悠「どうも。」
叶「今丁度告白タイムだから悠はお邪魔虫だもんね。」
悠「叶人、大丈夫?」
叶「大丈夫、大丈夫。」
そう言ったら悠は両手を広げて言った。
悠「泣いていいんだぞ。胸貸してやるから。」
叶「大丈夫だって」
すると悠がぎゅーってしてきた。そしたらダムが決壊したみたいに我慢してた涙がが溢れ出たきた。
悠「まったく、叶人の大丈夫は信用ならないな。よしよし」
叶「おわっぢゃっだよぉ」
悠「うんうん。よく頑張ったな」
悠の腕の中はとても安心して、悠の手はとても温かく俺は泣き疲れて寝てしまった。起きると悠に膝枕されていた。
悠「あ、やっと起きた。早くどいて、足しびれた。」
叶「えー。急に冷たいなぁ」
悠「叶人一時間も俺の足の上で寝てたんだぞ。」
叶「うん。ありがとう」
悠「まぁでも昨日寝てないみたいだから許してあげるけど」
そう言いながら俺の頭を撫でた。それがとても気持ちよくてまた寝そうになった。
叶「あーやばい…また寝ちゃう…」
悠「えっそれは俺の足がまずい」
俺はゆっくり起きあがった。
叶「んー。なんかスッキリした。悠ありがと。」
悠「…」
叶「ん?どうした?」
と下を向いている悠の顔を覗き込むと急に悠に押し倒された。
叶「悠…ちゃん…?」
悠「ごめん…」
叶「どうしたの?何かあったの?」
悠「ごめん。叶人」
叶「だからどうしたの?なんで誤ってるの?言ってみて」
悠はしばらく黙っていた。そして
悠「…好き。叶人が好きだ。」
俺は固まってしまった。
悠「本当は一生言うつもりなかったし、本当に叶人の恋を応援してた。でも心の奥では嫉妬して、早く別れればいいのにとか考えてた。別れたら叶人が俺のとこに来てくれるから少し嬉しくなってた。」
叶「悠ちゃん…」
悠「杉田とのことも叶人ためとか言いながら、俺の個人的な感情だった。それで今度は失恋した叶人の弱みに漬け込むようなことして…。最低だな俺…。」
悠は俺の上からどいた。こんな悠は初めて見た。
悠「最後に一つだけ許してくれ。」
叶「え、最後って…」
チュッと悠が俺にキスをした。
悠「ごめんな。ありがとう」
そう言って悠は帰っていった。俺は混乱していた。悠が俺のこと好き…。そんなの気づかなかった。悠は自分のこと最低だと言ったけど好きな人の恋の話聞いたら普通そうなる。それと最後ってどういう意味だろう。それに俺、悠とキスしちゃったんだよね。でも全然嫌じゃなかった。変だよ俺。数日前まであんな目にあってたのに、さっき片想い終わったばっかりなのに。
叶「全然わかんないよ…」
でも、あんな悠見たことない。だからちゃんとしないとダメだよね。
次の日の朝、俺はドキドキしながらドアを開けた。
悠「おはよう!」
叶「お、おはよう」
悠「寝不足?叶人はよく無理するから。ちゃんと休まないと倒れるぞ。」
叶「う、うん。」
ふ、普通だ…。昨日のは夢なんじゃないかなと思うくらい普通だ。でも隣を歩いていて気づいたことがある。悠は耳まで真っ赤だった。
叶「悠、顔真っ赤だけど熱でもあるの?」
信号で止まった時に俺のおでこをくっつけようとすると、
悠「大丈夫だから。」
と言ってよけられてしまった。そして続けて言った。
悠「ごめん…。しばらく時が経てば消せると思うから、それまで我慢して」
叶「…消せるって?」
悠「叶人への恋心…って朝からこんな話はやめよう」
悠が俺を諦める…。何故だか俺はそれがとても嫌でイライラした。
お昼休みに悠と弁当を食べていると、
K「松本くんらちょっといいかな…?」
悠「いいよ。ちょっと行ってくる。」
叶「あ、うん。」
あれは絶対告白だよね…。悠断るよね?だって好きな人がいるのに付き合うような不誠実なことはしない。絶対しない。しないよね?しないで…。なんで俺こんなにモヤモヤしてるんだろう。しばらくすると悠が戻ってきた。
叶「告白?」
悠「まあね。断ったけど。」
よかった…ん?よかったってなんだ…。あ、そうか俺は…。
その日の帰り俺はもう一度ゆっくり朝の話をしたくて振ってみた。
叶「今朝の話なんだけどさ」
悠「ん?あーあれか。何週間かはかかると思うけどちゃんと叶人の親友の悠になれるように頑張るから。」
叶「なんで…」
悠「どうした?」
叶「どうして簡単に諦めるんだよ!」
悠「叶人、どうした?ここ道だぞ。」
俺は悠の手を掴んで急いで家まで歩いて俺の部屋に連れてきた。
悠「どうしたんだよ急に。」
叶「俺は悠がずっと想ってくれてたの気づかなくて悪いと思った。だから悠のこと真剣に考えようって一晩中悩んでたのに。今朝会うのも緊張してたのに。当の本人はケロッとしててスッキリしましたって感じで…。」
悠「叶人…。」
叶「すぐに諦めるのは悠のいいところであり悪いところでもあるんだよ。人のことを考えて行動するのは凄いしなかなか出来ることじゃない。大切だと思うよ。でももっと自分のしたいように周りなんか気にせず行動してもいいと思う。無理しないでって悠は俺に言うけど、その言葉そっくりそのままお返しします。」
俺が言い終わると悠は少し下を向いていた。そして話しはじめた。
悠「俺は、叶人と両想いになりたい…。叶人と恋人になりたい…。」
叶「やっと素直になったね。じゃあ付き合おうか」
悠「え?なんで…同情とかしてるなら嫌だ。」
叶「違うよ。好きかどうかわからないけど、悠が俺のこと諦めようとしてたこととか、女子に告白されたこととかすごくモヤモヤしてイライラしたんだ。それに最近色んなことあったのに悠の告白聞いてからそんなこと全然考えなくて悠のことばっかりで、一緒にいてほしいって思ったんだ。こういう気持ちじゃダメかな?」
すると悠は涙目で笑って言った。
悠「ダメじゃない。ほんと叶人はずるいよ。」
叶「ずるいって?」
悠「なんでもない」
叶「そう?これからもよろしくね悠ちゃん」
悠「だからちゃん付けはよせって」
こうして俺たちは付き合うことになったんだけど、これから先はまた別のお話。
はじめまして!黒山ホルテです。初めての小説『おとなりトライアングル~叶人編~』いかがでしたか?私のような素人の学生の書いたもの面白かったでしょうか?私は今までDSのうごメモに夢小説を打ち込んだり携帯で書いて一人で楽しんだりしていました。そして最近たくさんの人に見てもらいたいと思うようになりました。少しでもそう思って頂けると嬉しいです。
この作品はこのあと「史人編」「悠汰編」「和馬編」とそれぞれの目線で出していけたらいいなと思っています。(読んでくださる方がいればですがw)
書いてる間に後書きよくわからなくなってきたのでそろそろ終わります。
これからも黒山ホルテをどうぞよろしくお願いします。