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×3 波乱の日常  作者: 有栖川優悟
4/7

*弐拾

しのぶ

「えっ、もうすぐなんだ!」

 おうぎちゃんの机の前で、見慣れたメンバーが騒いでいる。

「ごめん、何の話?」

岸波きしなみさんの誕生日がね、六月八日なの」

 二一〇六年六月八日、その日は火曜日だ。そして、九十八年前に通り魔殺傷(さっしょう)事件が朝葉原ともはばら――当時はまだ秋葉原あきはばらと呼ばれていたらしいが――で発生したとされる日でもある。

「じゃあその日さ、九十九堂つくもどうに行く?」とは陽菜はるなちゃんの提案だ。

「いいよー?扇ちゃんは?」

「大丈夫、空いてる」

「よかったぁ。他、行けない子は?」

 誰も、手を挙げない。勿論、私もだ。

「それなら決まりってことで!」



***



 ここ、「九十九堂 朝葉原店」は、朝葉原の“はぐれ者”達が集うレストランだ。私も何回かあったことがあり、従業員の一人であるトイレの花子はなこさんとは何回か話したことがある。

「わっ、お久しぶりです」

 扇ちゃんが軽く手を挙げる。

「扇ちゃんって、一度行ったことあったの?」

「まあね。両面宿儺りょうめんすくなの姉妹に会いに行ったんだ」

「両面宿儺か…」


「いらっしゃいませー!ご注文は何に致しますか?あ、それとも私と戦う?」

 黒髪ロングの人が、私達を出迎えるなり、矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。

「…その辺にしなさい」

 それを止めたのはトイレの花子さん、こと川谷かわや花子さん。

「お久し振りね、間宮まみや忍さん。今日はお友達も一緒かしら?」

「あ、はいそうです!友達の誕生日会で」

「そうなのね…で、ご注文は?」

 メニューを渡される。お化け屋敷がコンセプトなので、メニュー名もそれっぽい。

「誕生日ケーキのセットみたいなのはありますか?」

「ああ、デコレーションケーキなら、普通にあるわよ?蝋燭ろうそくやプレートも、つけることができるわ」

「大きいのがありましたらそれで!蝋燭を十五本、『扇ちゃん誕生日おめでとう』で、お願いします!」

 メモを片手に注文を聞く花子さん。

「わかったわ。…真那まな、デコレーションケーキの一番大きいやつ!蝋燭十五本、プレートはこう書いてちょうだい!」

「承知した」


 やってきたのは豪華なデコレーションケーキで、蝋燭も十五本刺さっている…蝋燭の形がどう考えてもお墓に供えるものにしか見えないということには突っ込まないでおこう。コンセプトお化け屋敷だし。

「…それじゃあ、岸波さん!」

 穂香ほのかちゃんの言葉を合図に、私達は声を揃える。

「「…Happy Birthday dear,

 岸波さーん

 岸波ちゃーん

 扇ちゃーん

 岸波さーん

 岸波ちゃーん

 Happy Birthday to you!」」

「うわあ!……ありがとうって言えばいいんだろうけど…なんかびっくりしすぎて、しっくりくる言葉わかんないや…!」

 本人抜きで話していた甲斐があったのか、さすがの扇ちゃんも面食らったようだ。



***



「はい、扇ちゃん!」

 皆で買ってきたプレゼント詰め合わせを扇ちゃんに渡す。

「…何入ってるの」

「え、秘密!」

「じゃあ後で開けるね」

「是非そうして!…解散!」

 扇ちゃんの姿が見えなくなるまで手を振って、私達はその場から立ち去った。

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