*拾漆
*岸波 扇
この作品の主人公。平凡な無能力者の少女だったが、異形のクラスメイト達を見返すためにアヴァロンへ入り、“破壊の狂戦士”ベルセルクとして異形を抹殺する行動に出始める。
*笹部 穂香
無能力者とクタニドのクォーターで、嶋村の従姉妹でもある。ちなみに目が金色なのは遺伝である。また、怒ると怖い。
*吉野 陽菜
サバサバした性格のクトゥグアの少女。炎を操ることができる。いちごミルクをこよなく愛する。
*間宮 忍
穂香と扇の間の席の少女。イモータルであるためか、異常なまでの自殺願望を持っている。紅茶に飴玉と練乳を入れて飲むくらいには甘党である。
*時坂 神楽
このクラスには数える程しかいない無能力者。不幸体質で、スクールバッグにいつもお守りをつけている。
*駿河 東香
三年B組の、ハスターの少女。生徒会長を務めている。基本的に何でもできるので、扇に劣等感を持たれている。
*日笠 しきみ
三年B組の、雪女の少女。コードネームは「エンジェル」。
*能前 菊里
三年C組の、妖狐の少女。コードネームは「エクスカリバー」。
*皇 昏羽
アヴァロン本部長(長官)を務める、死神の女性。
「五月二十九日に始末した異形は、無能力者であることが明らかになった」
岸波扇は、アヴァロン本部にて皇昏羽の証言を聴いていた。
「人工的に異形になろうとでもした結果だろう」
「無能力者が、人工的に異形に…?」
「こちらが調査の結果です」
ニアによってモニターに映し出されたのは、何らかの液体が含まれているであろう、茶色のボトルだった。
「中国語読みで雷管、か」
雷管。
黄色のビニールパッケージに赤字で書いてあるそれは、“起爆装置”を指す中国語である。
「おそらく朝葉原の裏路地で何者かが配っているのだろう。…だから私の仕事の多さが安定しないのか」
皇昏羽の仕事は、願いを叶える代わりに魂を加工して強さを付与すること。もう一つは願いを叶えた者を、異形の始末に赴かせることだ。
「これを何者かが配った直後は私の仕事が減り、服用者が暴走すると仕事が増える。…こういう仕組みになっていたんだな」
「無能力者には能力を付加し、異形の能力は底上げするという効能が書いてあります」
「なるほど…」
「扇は知らなかったのか?」
「いえ、全然。無能力者が異形になる――もしそんな方法があったら、私は苦労してませんよ」
扇は無能力者である。
それ故、異形から疎外されたり、同情されたりという苦労を幾度となく味わってきた。
「扇は、異形になりたかったのか?」
「違います。私がしたいことは異形になることではなく、異形に認めさせることです。自分が異形になってしまったら元も子もないですから」
「そうか。…まあ、いずれ暴走したやつが出てきたら指令を下す。このまま銀庭学園への潜入を続けるように」
「はい!」
扉を閉めると、扇はすぐに駆け出した。