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人間②

「実は…好きな人が出来ました!」


 キャ~!と拍手と共に歓声をあげる佳子だが、ここはもう場所を移動して、ドーナツ屋である。

 思春期の女の子なら二人だけで十分かしましいらしい。

 甘い匂いに紛れて鋭い視線が二人を刺す。


「出来ればカレカノになりたい!…協力してくれる?」


「もちろんだよ!でも、この時期に作っちゃって大丈夫?」


 そんな視線を気にもせず話を続ける佳子。

 彼女達は中学生3年生。しかも2学期。この先の人生を決める大事な分岐点はもう始まっている。


「それがね、出会ったのが志望校別の補習の時でね。情報交換してたら気があって、志望校同じなら良いかと思って」


 話しながらその時を思い出すのか、可奈の顔が少しづつ赤くなる。

 何故か佳子も同じ様に赤い。


「凉くんって言うんだけど、背が高くてバスケしててね」


「うわ~いいね!それで!?」


 もじもじしたり、ジュースを飲んだり。動作がほとんど同じ様になっていく。

 髪長さが同じだったらきっと鏡のようにみえるんじゃないかと思うほど、二人は仲良しだった。


「それで…今度の日曜、デートに誘おうと思うんだけどさ」


「良いじゃん。行っておいでよ」


「違うよ、そうじゃなくて。ダブルデートなんて、どう?」


「ダブルデート?」


「佳子のカレシも誘って4人で映画行こうよ。買い物とか」


 佳子の顔がぱっと華やぐ。


「いい!それいいよ!行こう」


「何?急にコーフンして」


「実はさっき出掛けようって話ししててさ。でもルゥはぜんぜんノリ気になってくれなくて。もしかしたら、それなら行くって言ってくれるかなぁって」


「オトナが恋人だと大変だね~」


「何か恋人って言い方ヤラシイ」


「うん」


 二人同時に吹き出して盛大に笑う。


「は~。じゃあそろそろ帰るか」


「じゃあその前に可奈に前祝いとして、ドーナツ買ってあげようではないか!」


「言うと思った」


「うん?あ~だから、奢らせるつもりだったって言ってたのか」


「そう。絶対言うと思たし、いいって言っても聞かないだろうし」


「さっき普通にお金払ってたから、変だなとは思ってたけど」


「ホントに思ってたわけ?佳子ぬけてるから絶対気づいて無かったでしょ」


「うるさいな」


「まぁ、もう遅いしドーナツは食べちゃったからいいよ。ポップコーンでも奢って」


「そっちのが高いじゃん!」


 まだ空はかなり明るいが、二人は帰路につく。夏の太陽が沈むのが遅いだけで、もうとっくに子供は帰る時間だ。

 二人は自分達を子供だなんて思ってないだろう。


 けれど。


 夜の闇達はそんなふうに思ってはいない。

 早く帰らなければ。予想外の危険が子供を狙っているのだから。







「可奈」


 夕暮れの路地。街灯と街灯の間。わざわざ暗がりから現れた男。呼び止められた人間に印象を与える演出だ。


「徹兄ぃ!どうしたの?」


「可奈が遅いからおばさんが探してこいって」


「ほんと?ごめん。お手数おかけしました」


「こんばんは!所で可奈さんこちらはどちら様です?」


「ああ、佳子はじめて会うっけ?こちらはお隣で1つ上で只今家庭教師もしてもらってる幼馴染の徹也お兄様です」


「なんだその説明。こんばんは。佐々木徹也です」


「こんばんは。はじめまして!可奈と同じクラスの本堂佳子です」


「よしくね。えーと、佳子ちゃん。悪いんだけど、可奈の親から早く連れて帰って来いって言われてて…」


「ああ!良いですよ、大丈夫です!」


 謝り合いが続いてそのまままた長話しに入りそうになった所で徹也が止めに入った。

 佳子は仲良く帰って行く二人を見送った。寄り添う後ろ姿は兄妹の様だ。あるいはそれ以上の。

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