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紅色の薔薇

 積もるほど雪が降っているある夜、僕はただ呆然と歩いている。

 寒かった。凍えるほど寒かったはずだ。

 だけれど、僕は寒さなど気にも留めていなかった。


 ──僕はただ、彼女を探すこと以外に興味がなかったから……。


 雪の積もるこの道を歩いていると思い出す。

 彼女の編んだマフラーが長すぎて、顔をほんのりと紅く染めながら二人で巻いたこと。

 どちらともなく自然とお互いに手を繋ぎ合って初めて二人きりで出掛けたこと。そして、    

 なによりも──

 いつも彼女が優しく微笑んでくれたこと……。

 思い出す度に胸が締め付けられるように痛む。

 ──彼女に会いたい……。それだけが今の僕を動かしていた。

 だけど、それは無駄な足掻きだった。

 そんな事は知っている。

 ただ、認めることが恐かった。

 だから僕は、時間がかかったけれど決意した。


 ──何があったってでも、彼女にもう一度会う……と。


 決めたからにはもう戻ることは出来ない。

 そもそも、戻る気など微塵も無かった。

 僕の初恋の人……世界で唯一、特別な感情を教えてくれた人。

 そんな彼女の居ない人生など考えられなかったから。気がつくと目的の場所に……彼女と最後に会った場所に佇んでいた。

 最後に見た彼女の顔は、酷く辛そうな笑顔だった。

 思い出す度、瞳から頬を伝って涙が流れる。

 きっと後悔からだろう。

 だが、涙を拭うことなどしない。

 もう少しで目的が叶うのだから……。

 真上にある電光掲示板が音を立てて光る。

―─あぁ、これでやっと彼女に会える。

 ゆっくりと重たい足を持ち上げ前進する。

 人混みを掻き分けて前へ、ただ前へと進む。

 頬を伝って流れる涙など気にせず、屈託のない笑顔で口を開く。

 「やっと……やっと会いに行けるよ夏美……」

 そう小さく呟くと、


 僕は、勢いの殺しきれていない電車が眼前に迫るなか──


 まるで、桜の華が散るように──









 駅のホームから飛び降りた。



初めましてkirinoです。


今回は前々から書こう書こうと思っていた小説にチャレンジしました。


処女作なので気楽に読んでもらえると嬉しいです。



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