47、意外と良い人
星、ギャノンは、ちょうど今終了した二人の戦いをカノン、ディオネ、メイドに仔細に話した。
話し終える頃には皆、驚嘆を禁じ得ない、というように星を見ていた。
無理もない。星とギャノンでは誰がどう見てもギャノンの方が強いと思うだろう。
しかしカノンとディオネはその点に関して驚いているのではない。彼女達自身が、単純に見た目では推し量れない程の強さを有しているからである。
とすれば、彼女達が驚いているのは、星の戦闘中の一挙手一投足それ自体だ。
ディオネが呟きつつ確認する。
「天枷には、ギャノンの拳が遅く見えていた、か」
疲れから未だに身につけたままだった兜と鎧を外してくれるカノンに礼を言い、星は返答する。
「ええ、俺でも反応して回避できるぐらいには」
「だが、ギャノンはおそらく……『常人』の中でも相当な手練れだと思うぞ?」
どこまでが常人なのかは考えないとして、少なくとも日本のとある町で日々ゲームに興じていた頃の星より強いことは確実だ。寧ろ星自身、勝ったことに驚いているくらいだ。
ギャノンの拳が遅く見えたことの他にも、不思議なことはあった。
砲弾のような一撃を腹部に受けても立ち上がれたし、逆に自身の攻撃の威力は凄まじいものだった。無防備の背中に木刀で一撃、とはいえ、あの鍛え抜かれた身体を一撃――手にも一撃入れたが、それは置いておこう――で打ち倒したのだ。これはもう、星に何かあったとしか思えない。
メイドに介抱されているギャノンが真面目な顔で言い放つ。
「そいつの強さは本物だ。実際にやられた俺が言うんだから間違いねぇ。かならずもっと強くなるぜ」
「ああ。なんてったって天枷は、私とカノンの仲間だからな」
「ディオネ……」
自慢気なディオネに、星は感激の眼差しを送る。カノンもにっこりと優しい笑みを浮かべている。
「よお救世主、良い仲間を持ったな」
二カっと笑いながらギャノンは星に肩を組んでくる。
「当たり前だろ。カノンもディオネも、俺にはもったいないくらい良い仲間だ」
「星君……」
「天枷……」
コホン、とメイドが咳払いをした。
「会談は、半刻後に食堂で行います。少し前になりましたらわたくしが向かいますので、部屋にいてください」
「悪いな、たびたび」
「いえ、仕事ですので」
淡々と告げた。
「よし、行こう。天枷、平気か?」
「ええ、だいじょう、って、あれ」
立ち上がった途端、フラっと視界が揺らいだ。
自身を受け止めるカノンの姿が、最後に見えた。
「しかし、お前ももうちょっと感情を露わにしてもいいんじゃないか?」
星達が去った後の闘技場。
呆れたように、そして心配そうにメイドに言うのはギャノン。
「…………」
「お前だって、救世主のことが気になるんだろ?」
「多少は」
「なら、いろいろと話してみたらどうだ? きっとお前にとっても有意義な時になるだろうぜ」
「しかしわたくしは、ただのメイドにすぎません」
「ったく、よく言うぜ。『ただのメイド』が皆お前程の強さだったら、俺は今頃シュリテアみたいになってただろうよ」
別にシュリテアを馬鹿にしているのではない。メイドが皆強かったら、鍛える気すら失せる、ということだ。
「しかし……」
「分かった。それじゃあ、後で親父達の話し合いが始まった時に救世主の意識が戻ってなかったら、側にいてやってくれ」
「それではギャノン様はどうされるのですか? 彼よりあなたの方が肉体的ダメージは大きい筈です」
「心配すんな。少し休めば治るだろ」
「…………」
「…………」
「はぁ。分かりました。ですが、きちんと医者に見せてください」
それだけでギャノンは顔を輝かせる。
「おう!」
◇
五十分後。
星達が滞在する客室へメイドがやって来た。
「そろそろ時間です」
彼女は軽く室内を見渡す。星は……
「悪いな、まだ天枷の意識が戻っていないんだ」
「ご心配無く。あなた達の仲間はわたくしが見ていますので。彼が起きるのを待つのならば、そう伝えておきますが」
ディオネは少し考える素振りを見せ、言った。
「話し合いの方は問題ない。後は、こんなことを聞くのはなんだが……お前を信用してもいいか?」
「もっともな疑問です。彼は救世主、いえ、あなた達の仲間ですから、何かあっては一大事でしょう」
「すまない」
「お気になさらず」
ディオネはカノンを軽く見やる。
カノンは真剣な表情で頷いた。ディオネは改めてメイドと目を合わせる。
「天枷を、頼む」
「はい」
機械的、ではなく、確かに少しの感情を込め、メイドは頷いた。
皆さん、こんばっぱ~。
とりあえず投稿です。短くて話もそこまで進まないので、タイトル付けに苦労しました。
次回は未定ですが、来月までには投稿したいです。
それでは