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42、成り行きで……

 星、カノン、ディオネ、そしてクレアは、クレイドの方を向き、彼の言葉に意識を集中させる。

「昨夜、ディオネ殿から色々と話を伺った。ファイにこの城へ来るよう言われたこと、リフレルム山を目指して旅をしていること、そして──」

 王は、星に視線を送る。

「貴殿が救世主であること」

 一国の君主に視線を送られ緊張する星だが、救世主らしく顔を引き締める。それでも長卓の下の足はしきりに動いていたが。

 しばらくの間星を凝視していたクレイドは、うむ、と一つ頷くと、表情を緩める。

「なるほど。天枷星殿、貴殿が救世主ならば私も納得できる」

 星としては、なぜ王がそう思うのかが疑問なのだが、納得できないとか言われるよりはずっと良いに決まっている。

「ありがとうございます」

 礼を述べると共に頭を下げる。

「こちらこそ貴殿に感謝したい。十年前に直に予言を聞いた身としては、こうして救世主とまみえることができるだけで光栄だ」

 それを聞いて星は幾分か気が楽になったが、同時に、こんな大物に期待されているという事実から同じくらいプレッシャーも感じた。

 救世主としての役目をまっとうできなかった場合どうなるかは到底推し量ることができない。

「ところで、クレイド、クレア。ファイが私達を城へ行かせた理由だが、何か国難があるとか、私達にとって非常に価値のある情報があるとか、そんな所か?」

 そう尋ねたのはディオネ。

「ひどい国難があるのは確かだ。そして情報だが、貴殿達に価値があるかは分からないが、ここレフェリアには多くの情報が飛び交っている。中には何か有益な情報があるやも知れぬ」

「そうか……。では、国難について聞かせてくれないか?」

 それは自分達にできることなら解決する、という意味を含んでいる。

 レフェリアの王は重々しく口を開いた。

「では。……ここから数時間程西へ行った所にちょっとした山があるのだが、そこに山賊が蔓延っていて山の向こう側からの旅人や商人の来訪が途絶えているのだ」

 そんな奴らとっとと駆逐してしまえばいい、と安易には誰も言わない。それができるのなら直ぐにでも実行しているだろう。事実、それができないからクレイドはこんなに深刻そうなのだ。

 ディオネ達は黙って続きを聞く。

「我が国の兵達はこのところモンスター退治に手いっぱいで、とてもではないが山賊を相手取るのは難しいのだ。そしてその山賊だが、物見の言によるとどうやら五千はいるらしい」

「五千!?」

 驚きの声をあげるのは星。

 五千人ともなればもはや軍隊並の数だ。そんな数がよくも集まったものだと賓客の三人は思う。

 おそらく大半は悲しいかなモンスターによって家をわれた者達なのだろう。だからといって賊に堕ちるのが正しいのかと言われれば、答えは否に決まっている。

「賊共は周辺の村や町をも襲い、略奪や虐殺を繰り返している。放っておけば被害は増すばかりだ」

 なるほど、とディオネは相槌を打つ。

「それでは『私が』始末しよう」

「!? ディオネ殿、しかしあなたといえど一人では……」

「なに、問題ないさ」

「だが……」

「私の力は君達も知っているはずだが?」

 そう言われてはクレイドもクレアも押し黙ってしまう。二十年程前、二人は色々あってディオネの実力を目の当たりにしていた。

「ちょ、ディオネ!」

「なんだ? カノン」

「そんな、勝手に……。それに、あなた一人で行くような言い方だけど」

「ああ、私が一人で行くつもりだが」

「……なぜ?」

 探るように尋ねる。返答によるということだろう。

「お前や天枷には無駄に人を殺めて欲しくはない」

「悪人であれば何人でも殺すわ、私は」

「だが、天枷はどうだ?」

「っ!?」

 カノンは言葉に詰まる。星に人を殺して欲しくはないとカノンも確かに思っているからだ。

 と、黙っていた星が思いきったように口を開く。

「俺は、必要とあらば殺す覚悟はある。ここは地球じゃないんだ、ウェリアルなんだ」

 と威勢よく言ったものの、実際に人間に刃を翳した時は、指や腕、延いては全身が震えるのだろう。

 少し時が経った。時間にしたら一分程しか経過していないのだが、彼らにはとても長く感じられた。

「どうしても行くというのなら、私を倒してみろ」

 場を再び静寂が包み込んだ。

 発言主であるディオネ以外はポカンとしている。

「カノンと天枷、二人がかりでいいから私を倒してみろ。そうすればお前達も共に連れていく」

 無理、という台詞を星とカノンは寸でのところで抑え込む。

 星では相手にならない筈だし、カノンよりも強いときては勝てる見込みがない。

 ディオネは最初から二人を連れていく気などないのだろうか。

 大賢者は挑戦的な笑みを浮かべる。

「どうだ? やめておくか?」

 星とカノンは互いに目を合わせ、深く頷く。

「受けて立つわ、ディオネ」

「ふふ、そうこなくてはな」

 ディオネは事の成り行きを見守っていたクレイドとクレアに言う。

「確かこの城には闘技場があったな」

「兵士達が使用しているのがあるが……」

「かまわない」

 ディオネは再び星、カノンを見据える。

「それでは、今から二時間後に始めよう」

「ええ、分かったわ」

 こうして、成り行きとはいえ、星、カノンはディオネと闘うことになった。

皆さん、こんばっぱ~。そしてお久しぶりです。


今回は結構ツッコミどころが多いんじゃないかと、読み返しながら思いました。

次回も未定ですが、ゆっくりお待ちいただければ、これ幸いです。

それでは

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