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34、ファイ、アゲイン

「天枷、魔法を学ばないか?」

 ディオネがそう星に提案したのは、彼が結構落ち着いてからだ。

「えっ、いいんですか?」

「ああ、もちろん。お前が魔力を内に秘めていることは小屋の一件から明白だし、それならばカノンが言うように鍛練次第では魔法を使えるようになるかもしれない……いや、絶対なる」

 そしてなにより、と言って先を続ける。

「カノンに魔法の使い方を教えたのは私だ」

 自慢気に胸を張る。それは、カノンが魔法を正しく使いこなしているからこそできることだ。カノンがまた違った方向、例えば魔法を悪行に利用したり、微塵も魔法を習得できていなかったりしたら、こんなに誇らしげに胸を張るなど到底できない。

「それじゃあ早速……」

 星が期待しつつ言った。

「いや、今はやめておこう」

「えっ!? 何でですか」

 出鼻を挫かれた星は、あからさまに動揺する。

「魔法を使うには、精神をかなり集中する必要がある。だが、今の天枷の精神状態ではそれは無理だろう。玄人ならば身体が魔法を自然に発生させるが、素人ではそううまくはいかない」

 実際はそういうものなのだ。ゲームのように最初から魔法が使える訳ではない。レベルアップして魔法を自動的に覚えることもない。仮にこの世界にレベルアップという概念があったとして、それはおそらく自らの実力が身体的にも精神的にも上がった時だろう。天枷星を動かす凄腕のプレイヤーなどいないのだ、自分の手で強くなっていくしかない。

「……わかりました」

「悪いな、期待だけさせてしまって」

 いえ、といって軽く笑みを作る。

「代わりといってはなんだが、剣術を磨いてみるのはどうだ? カノンに幾らか教わっているらしいし……と、それもまた後で、となってしまいそうだ」

「?」

 疑問符を頭に浮かべる星を他所に、カノンは既に気づいているようだ。

 ディオネ、カノンは、道の来た方向とは逆の方向、つまり三人が向かうべき方向を見ていた。星もそちらを振り向く。すると、彼も直ぐに気づく。

 まだだいぶ遠くの方だが、人間が集団でこちらの方に近づいてくるようだ。ちなみに現在三人は茂みの側にいるので、集団がここ近辺を通っても発見されることはないだろう。

「あれは……軍隊のようね」

「だな。しかし、これまた一体何の用だか」

 二人の視力に星が驚いて言う。

「へ? 俺にはよく見えないけど……」

 星も視力が悪い訳ではない。ゲームをやりまくっていた割に両目一・〇ある。

 それはさておき、別に軍隊に発見されたからといってどうということもないだろうが、面倒事は避けるに限る。星達はそのまま茂みの側でじっとしていようとしたが、十数秒経ってからカノンが何かに気づいた。

「あの先頭の人、ファイ・オミクロンだわ」

 それを聞いただけで星は苦い顔をする。前回会った時、話し掛けがてらに殺されそうになっただけにかなりのトラウマとなっていた。

「誰だ? その、ファイ何とかとやらは」

「謎の剣士、ですかね。カノンともかなり渡り合えるぐらい強かったですよ。最後はやっぱりカノンが勝ったけど」

「カノンと渡り合うか。なかなかやるじゃないか。俄然興味が湧いてきた」

 なんて話をしてるうちに軍隊はかなり近づいて来た。

 カノンとディオネが茂みの側を離れて、公道? の方に向かおうとする。

「え、ちょ、まっ」

 と言うのはもちろん星。

「?」

「?」

「いや、あの……もしかしてファイ・オミクロンに話し掛ける感じ?」

「ああ、そうだが、何か問題でもあるのか?」

「この前、いきなり剣先を向けられまして」

「ああ……、何も聞かずにすまない」

「いえ、いいんです。行きます、俺も」

「平気か?」

「ええ」

(それに、あいつには聞きたいことがあるしな)

 軍隊の数はおよそ五十人程だ。

 あまり軍隊の行進を見る機会がない星としては武装した人が歩いてるだけでビビるくらいだったが、この世界にいるとそれくらいでは動じなくなった。ただファイにビビッているだけだ。

 ファイ率いる軍隊が近くを通る頃を見計らい、カノンが声を掛ける。

「ファイ・オミクロン!」

 一斉にこちらを向く。

「? お前は……、カノン・ミシュリといったか。それに、救世主、と……」

「ディオネという者だ」

「ディオネ……か。で、わざわざ私に話し掛けるとは、如何用か。……まあいい」

 と言った後、隊員達に向かって告げる。

「私はこの者達と話がある。各員は一旦道より退き、休息を取れ」

 はっ! と全員が声を揃えて言うのを聞き、ファイは星達に言う。

「それでは、どこで話そうか」


皆さん、こんばっぱ~。蒼穹天使です。

久方ぶりの投稿で、しかも短くてすいません。

次回も遅く……、いや、できるだけ早く投稿したいと思います。

それでは

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