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第3話 騙すとは卑怯な!!

私はタクマと歩きながら階段を降りている。彼は饒舌に女の遊び方の話をしているが、そのな下らない話は全く耳に入ってこなかった。


『それでさ~あのモミモミをモミモミしながらさぁ~__』

「…………」


とてつもなく汚い内容に、思わず吐き気を感じる。しかし私はそれを顔に出すことはしない。感情的になってしまえばこいつと同レベルになってしまう。


『あ、そう言えばクリスティーナちゃんもおっぱいデカイって聞いたな~』

「…………っ、」


タクマは、私の娘を肉欲のはけ口にするつもりらしい。やはりこいつは生かしてはおけないな。


そして私は倉庫の近くの通路で足を止めた。タクマも釣られて足が止まる。


『え、なんで急に止まるんですか?』

「ああ、すまない。鍵を忘れてしまってな。ここで待っていてくれ」

『え、まあいいけど……』


タクマは相当頭が悪いのか、こんな簡単な罠に見事掛かってくれた。私は振り返り、来た道を戻る。さっきよりも足音を大きく立てて10回目、


『……え、うわああああ!!』


タクマのいた部分の床が抜け、彼は穴の奥に落ちていった。3階から地下1階まで落ちる高さの穴なので、このまま死んでくれると良いんだが……


『……おい、!!これは一体何なんだよ!!オレが何か悪いことでもしたってのかよ!!』


やはり死んでいなかった。ステータスだとかSSSスキルだとかは知らんが、相当な能力を持っている事に違いない。


『……ヒーリング、ヒーリング、ヒーリング……ああ、痛ってえ!!ヒーリング、ヒーリング……』


穴の奥からまた知らない言葉が聞こえてくる。あの言葉もきっと魔法の1つなのだろう。


感心するのはここまでにして、私は次の準備をする。このまま穴を塞いで水で中を浸す。どんな魔法が使えたとしても呼吸が出来なければいずれ死ぬだろう。


「お前達、水責めを開始しろ!!」

『はぁ!?ふざけんなよ!!ヒーリング、ヒーリング……』


私の号令で兵士たちが準備を始める。城内が一斉に動き出して騒がしくなった。水車を使って複雑に絡み合った水路から3階まで水が送られてくる。そして落とし穴の弁まで届いたのを確認して、最後の号令を掛ける。


「弁を開け!!」


その号令と共に水が落とし穴に流し込まれる。定期的に砂利を混ぜているので水に浮かび上がってくることはまずないだろう。最初はザバーッと鳴っていた音が、段々とジョボジョボという音に変わる。タクマの声はもう聞こえなくなっていた。


「はぁ、とんだ災難だった……後は女を牢屋に捉えて……」


私がホッとしてその後の処理を考え始めたその時、


――ズゥン!! ドォォン!! ズガァァァン!!


落とし穴の下から大きな音が聞こえる。そして水の中からタクマの声が聞こえた。


『パワーキック!パワーキック!パワーキック!』


そのパワーキックという掛け声と共に城全体が揺れ始める。兵士たちは体勢を崩し、私も膝を付いてしまった。


「な、何だ……!!全員、どこでもいいから捕まれ!!」


――ド、ド、ドォォォン!!


私が安全を確保しようとした瞬間、地下の壁が吹き飛ばされる音がした。城全体が揺れて砂埃が舞う。そしてタクマに脱出されてしまったのが確認できた。私の娘、クリスティーナの悲鳴と共に。


『いや、っ……!!お父様……!!』

『ウヘヘヘへ、オレは何もしてないからな~』


私はその声が聞こえた落とし穴を無視して城の外に向かう。なるべく早く走らないと娘があの女共の一部にされてしまう。


「はぁ、はぁっ……!おい、借りるぞ!!」

「え……は、はい伯爵様!!」


私は膝を付いていた兵士から剣を借りて走りながらそれを腰に据える。そしれ息切れしながら城門の前に出ると、タクマが仁王立ちで私を待っていた。その後ろにはクリスティーナが服を半分ほど脱がされて倒れていた。


「クリスティーナ、っ……!!貴様……」

『ロートレック伯爵、オレと勝負して下さい。オレが勝ったらクリスティーナちゃんは貰います』


タクマはふざけた提案をしてきた。私は呼吸を整えるために彼に幾つか質問する。


「何故……娘を狙う……」

『だって、クリスティーナちゃんは狩猟を学んでるから弓が上手なんでしょ?オレ後衛が一人欲しかったんだよね』


彼は意味のわからない理由を並べている。そもそもアーリ公国に冒険が必要になるような未開の地など何処にもない。あれはただ肉欲を発散したいだけだ。


「お前は何故冒険をしている……」

『だからさっきも言ったじゃん。オレはSSSスキルがあるから最強になるの。はぁ全く……やれやれ……』


さっきと全く同じかそれ以下の事を言い始めた。私はもう腰の剣に手を掛けている。


「何故、街を襲った……」

『だって……門番にいきなりお前の名前を言えとか言われたし、失礼じゃない?いきなりさ……』


もう話をする意味などないなと確信したので、私は剣を抜いた。その刃を空に向けて、彼に宣言する。


「私は、アーリ公国の崇高なる伯爵、リヨン・ロートレックだ!!」

「我々の土地を脅かすものは、一人たりとも存在させるつもりはない!!」


私がそう言うと、彼はクリスティーナの胸を凝視しながら言葉を返してきた。


『はぁ……戦えば良いんでしょ?やれやれ……』

『お父様……!!ダメです、こんな蛮族の言葉に惑わされては……!!』


私は歩みを進めて彼の眼前まで行く。偶然にもさっきの交差路と全く同じ場所になった。短時間で決着を付けないと街がまた壊されてしまう。


「野蛮な魔道士よ……かかってこい!!」


私は剣を握る手に全ての憎しみを込めて彼に立ち向かった。

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