第2話 魔法って便利なだけだから
私は今、医務室で治療を受けている。さっきのフレイムショットとか言う魔法のせいで鎧が溶けてしまったせいで、腹部に火傷を負ってしまった。塗り薬を付ける度に腹が痛む。
『ぐ、っ……はぁ……あ、いや大丈夫だ。続けてくれ』
『すみません領主様……もう少し優しく治療しますから……』
火傷に薬を塗り、包帯を巻く。久しぶりにこんな大袈裟な怪我をしてしまったなと、少し自分が情けなくなってくる。
『君、すまないが水をとってくれないか。少し疲れた……』
『は、はい領主様……今お持ちしますね、っ……』
侍女に水を取りに行かせる。そして一人になった医務室で少し考え事をする。
(あの男……タクマは、あのフレイムショットというのを”魔法”と言ったな……)
本来、魔法とは道具に込めて使うものだ。ここロートレック城で開発したものは、カマやクワに力を込めて耐久性や切れ味を改善するために使われている。他の地域では鉱山で物を運ぶトロッコに使ったり、その程度のものだ。
それに、魔法に名前なんてない。ここで開発した魔法も、せいぜい『ロートレックの魔法』と呼ばれているくらいだ。だがタクマは確かに『フレイムショット』と叫んでいた。名前の意味は全く分からないが、確かにあの火の玉の名前だった。
(炎の魔道士と聞いていたから、てっきり火矢を扱うと思っていたが……)
魔道士というのも確かに存在する。だが、それは一様に犯罪者を指す呼び名だ。あの男の様に魔法を攻撃に使うような者を指す。
そんな事を考えていると侍女が戻ってきた。私は彼女が持ってきた水を飲むと、彼女は私に伝言を伝えてきた。
「領主様、あの男……タクマ・サワシロが領主様に会いたいと……」
「……そ、そうか。分かった、すぐに向かう」
私は服を整えて奴のいる場所へ向かう。奴は客間で食事を大量に平らげていると聞いた。やはり日和らずに食料を渡してさっさと帰らせるべきだったか。
扉の前まで着いた。執事が扉を開けてくれたが、彼の額は汗でとても濡れている。タクマ・サワシロは相当な蛮族であると覚悟を決めて、私は客間の中に入った。
中に入ると、テーブルの上にはランセル地方で採れた食材を使った豪勢な料理が食い散らかされている。椅子やカーペットにも散らかりとてつもなく汚い。そして、その奥のベッドで女共が服を脱ぎ、その真ん中にあの光の板を眺めているタクマがいた。
『うーん、あと一人仲間が入ればな~』
『きゃああ~!!タクマかしこ~い!!』
『タクマ……もっと触って……』
『た。タクマ、っ……もう一回戦だ!!』
甘ったるい臭いとドロドロとした空気がとても不快だが、私は彼の元までいってテーブルから引っ張ってきた椅子を置いて座る。タクマは何故か対等とでも言いたげな顔でこちらに振り向いた。
『あ、伯爵様。チッス』
「貴様……いや、今はこんな事をしている場合ではない。貴様の目的を言え」
『は、?何貴様って。オレはタクマって言う名前があるんだけど!!やれやれ……』
『きゃああ~!!タクマ君カッコいい~!!』
本当に話が通じない。これを衛兵に任せてしまったのは私の責任だな、後で対策を考えないと。
私は怒りを抑えながら話を続ける。
「ではタクマ、君の目的を言ってみろ」
『オレはさ、最強を目指してるんだよね。ほら、SSSスキルがあるし』
『きゃああ~!!SSSスキルカッコいい~!!』
彼はSSSスキルという物が余程信頼できるらしい。問いただしてみるか。
「その……エスエスエスとは、一体何なんだ」
『え、知らないの!?マジかよ……ランセル地方でも伝わらないのか~やれやれ……全くだぜ』
『ランセル地方……ばか……タクマぎゅってして……』
我々の食料を貪り食った奴らが戯言を吐いている。本当に今すぐ殺してやりたい。
『あのね、SSSスキルっていうのはオレが異世界転生した時に神様から貰ったスキルなんだよね』
『で、さっきのフレイムショットはその挨拶代わりってわけ。分かった?』
『あいさつ……ぎゅってして……』
奴は言葉で挨拶をすることが出来ないらしい。この点に関してはただの魔道士と言える。やはり能力が強いだけでただの蛮族だなこいつは。
「それで……そのフレイムショットと言うのは”魔法”なのか……?」
私の最大の疑問を聞いてみる。もし本当に魔法だとしたらアーリ公国全体の危機だ。こんなものを放置する訳にはいかない。
『え、そうだけど。逆に魔法の事なんだと思ってるの?やれやれ……』
『そ、そうだ!!タクマの魔法は……んあっ……///ちょっと、タクマ、っ……///』
どうやら魔法らしい。で、あればこいつはもう生かしてはおけないな。このまま解放すれば一体何個の村が襲われるか分からない。
「そうか……ならば着いてこいタクマ。娘に合わせてやる、女共はここに残れ」
『え!合わしてくれんの!?やったぜ!!』
『ん、っ……///あぁっ……///!!』
私がそう提案するとタクマは全く疑いもせずに話を聞き入れた。そして私はタクマ一人を連れて客間を出た。




