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ハンドレッド編その8・公安の緒方 ミツル

 Side 藤崎 シノブ


 =夜・リムジン車内にて=


 空調が効いた車内。

 シノブを出迎えるために様々な飲み物やお菓子が用意されていた。


 相手は日本政府、公安の人間、自衛隊と行動を共にしているらしい。

 茶髪の緒方 ミツルと言う不思議な雰囲気の美形の人物だ。

 黒いスーツ姿で身嗜みも整っているのも好印象。

 女性受けだけでなく、年上の男性とかにも受けそうな感じの好青年のような感じだ。


 だがそう言う外見偏差値を打ち消すレベルの重度のオタクだったりする。

 スマホは痛スマホと言うべきか、ギャルゲーの美少女キャラのステッカーが貼られている。そしてこれまた美少女ゲームのアクリルフィギュアを吊るしていた。

 この人の車をシノブは日本橋内で何度か見たが、周囲がドン引きするレベルの美少女のステッカーを張りまくった高級痛車で、プラモも美少女キャラ仕様で綺麗にデコっていた。

 本人曰く、ダラダラと給料泥棒して左遷される前は秋葉原や中野や池袋に仕事と称してよく出向いたらしい。東京ビッグサイトのあのイベントにも何度も足を運んでいた。

 左遷されてからはメイド喫茶ストレンジの常連客になり、「二重スパイに転職しようかな」などと笑えない事を言っていた。


 そんな人が現在、ソファーで向き合う様に対面している。

 人の良さそうな笑みは相変わらずだが、雰囲気が違う。

 仕事として接してきているのだ。


「単刀直入に言いましょう。我々と協力して欲しいです」


「また単刀直入に……上の方はどうなんですか?」


「上の人間も全てが全て、国営悪の組織の人間ではありません。それを証明しろと言われたら難しいですが」


「一先ずそこは置いておきましょう。警察と自衛隊はどう動くんですか?」

 

「正義感の強い人間と言うのは想像以上にいるもんで、皆戦闘態勢で待機。GOサインさえあれば戦いに突入出来る状態にはなってますね」


「ジャマルの時みたいに、勝手に仕掛けて犠牲者が大勢出ましたとかは嫌ですよ」


 シノブはその当時の事を思い出す。

 宇宙犯罪組織ジャマルの最終決戦の時、自衛隊は上の場当たり的な指示に従って地下要塞に砲撃をかまして大反撃に遭って危うく全滅しかけた。

 闇乃 影司の電子工作やガーディアンズのカバー、ヒーロー達の助けなどがなければ自衛官達は皆本当に死んでいただろう。

 

「ええ、懸念は分かります。でも立場上何もしないと言うのもマズイ。我々もハンドレッドやブルーデビルを探っていました。そして恐るべき計画を耳にしたのです」


「その計画を阻止して欲しいんですか?」


「既に色々と動いています。ガーディアンズやスター・アライアンスの投入、退魔師や魔法使いの投入すら視野に入れてます。勿論動かせる範囲で自衛隊や警察もです」


 まるで宇宙人でも攻めて来たかのようなガチガチの戦力投入だ。

 自衛隊の戦闘機や軍艦とかも動いているかもしれない。

 先日のハンドレッドへの本拠地の踏み込みでの被害を考えればそれぐらいは必要になるだろうと上の人は考えたのかもしれない。


「奴達の目的は、分かり易く言えば怪人軍団を結成する事です」


「怪人ですか——」


 怪人。

 シノブや亮太郎が対処しているせいで今一驚異の実感が湧かないかもしれない。

 宇宙犯罪組織ジャマルの事件でジャマルの怪人相手に工藤 怜治やジェイミー・ゴードンなど意味不明の戦闘能力を持つ二人が生身で対処したせいとかもあるだろう。

 

「あまりこう言う表現をされては脅威を感じ辛いかもしれませんが、特撮物でよくある巨大化の状態にしていくつもりだそうです」


「巨大化……」


 特撮物でよくある手法だ。

 現実でそれをやられるとどうなるか。

 シノブと亮太郎なら生身で対処出来るが、その他の人員だと難しいだろう。

 巨大と言うのはそれだけで強力な武器なのだ。

 

「その巨大戦力はどれぐらいの戦力が予想されるんですか?」


「最低でも100体」


 つまり大阪府内に巨大怪獣が100体現れると言う事だ。

 世界の危機ではないかもしれないが、国家存亡の危機だろう。

 事態が収束する頃には100体の怪獣によって大阪府内の都市部は廃墟になる。

 

「奴達の最終目的は?」


「大阪日本橋なんですよね。裏の世界だけでなく、裏の裏の世界でも邪魔に思っている勢力は大勢いるみたいでして」


 続けるようにミツルはこう語る。

 少女A事件の時と同じく、大阪日本橋が出張ってぐるぐらいなら一緒に潰してしまえと考える悪党は多いのだろう。

 アンゴルモア云々の事情など知ってるかどうかは分からないが、闇乃 影司もいるし、裏社会のヤバイ勢力の間でどれだけ恐れられてるか何となく想像は付く。

 

 闇乃 影司は今でこそ大人しい、童話の世界に出て来そうな美少女のような外観をした何でも屋だが、その戦闘能力は異世界帰りの勇者の二人、藤崎 シノブ、谷村 亮太郎と互角。

 日本政府の違法実験施設を核爆発級の爆発で消し飛ばし、その後に送り込まれた自衛隊の暗部組織を全滅させ、影司と互角かそれ以上の戦闘能力を持つ大宮 優と言う人物と三日三晩戦い続けた。

 ジャマル事件ではシノブと亮太郎の二人の戦いに平然と付いていって最終決戦にも参加していた。


 闇乃 影司だけでもこれなのだ。

 そこに藤崎 シノブや谷村 亮太郎のこれまでの実績を付け加えれば、大阪日本橋を潰せばどれだけの名を挙げられるか想像も出来ない。


「——あの、なんか三体ぐらい怪人来てるんですけど。念のため確認しますけど、味方ですか?」


「いえ? 怪人の味方はいない——と言うか分るんですか? 異世界の魔法パワーですか?」


「まあそんなところです。あと数秒もしない内に来ますよ」


 そう言って車の外を見る。

 人が居ない緑が多い通り道。

 前後を挟む護衛の車。

 シノブは動き出す。 

 

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