ハンドレッド編その4・その頃の藤崎 シノブ
Side 藤崎 シノブ
少し時間は遡り——
琴乃学園近くのショッピングモールにて。
=昼・琴乃学園近くのショッピングモール=
今世の中はヒーローブームであるらしい。
と言うのも藤崎 シノブと谷村 亮太郎がライドセイバーに変身して宇宙人相手に暴れ回ったのが原因だ。
製作会社の動画サイトの契約が大幅に増え、グッズの売り上げも好調。
ライドセイバー1号、2号、そして春映画限定だった3号が登場するサイト限定の 特別編が製作されるらしい。
それと宇宙刑事含むメタルヒーロー絡みでも新たな動きがあるようだ。
この辺りは宇宙刑事リリアの影響だろう。
まあ、未だにライドセイバーを危険人物呼ばわりしたりフェイクだAIだ、政府の陰謀だの言う声もあるが。
そう言うのは人気者の宿命みたいなもんなので聞き流すにかぎる。
「またヒーローショーやってるんだ。こう言うの見るとブームなんだなって思うわ」
クラスメイトの長い黒髪で大人びて落ち着いた感じの顔立ちの、背が高めでスタイルがいい爆乳美少女の黒川 さとみが傍にいた。
露出度は前回のデート、スーパー戦隊展での時に比べれば控えめなカジュアルな背格好だがそれでも目に毒な体つきをしている。
彼女は戦隊ピンク好きでメイド喫茶でアルバイトしている女の子で、他の特撮もいける口らしい。
そんな彼女は電子掲示板に表示されたヒーローショーの案内を見ていた。
「ヒーローショーまで時間あるし、どっかで時間潰すか?」
人が多い活気あるショッピングモールだ。
見て回って時間潰せる場所は沢山あった。
(て、またか——)
気配探知に引っかかる。
ハンドレッドの構成員。
亮太郎が潰したブルーデビルと同じ半グレ組織だ。
堂々とショッピングモールの正面玄関から上下赤で100のマークがついたお揃いのユニフォームを身に纏っている。
警備員もビビりながらも「何だ君達は!?」と呼び掛けたが構わずハンドレッドの人間に突き飛ばされてしまう。
顔が黒肌赤目の怪人化している。
「ちょっと何なのよアレ!?」
「ハンドレッドの構成員だけど……行くところまで行っちゃったみたいだな」
さとみの質問にシノブは呆れながら返事をする。
ハンドレッドはフューチャーテックやハウンド警備会社と繋がりがあった組織だ。
どんなエグイアイテムを使ったかは分からないが、今のハンドレッドの人間達はマトモじゃない。
「アンタが藤崎 シノブか?」
そして先頭を歩く少年。
見た目は白髪、褐色肌の線が細そうな優男だ。
上下ともに赤。
拳や顔に細かい古傷の様な物がある。ケンカ慣れしているのだろう。
瞳はある種の狂気を孕んでいる。
マトモではない。
先日の日本橋の一件で見た事がある顔だ。
「赤霧 キョウマ」
「俺の名前覚えてんの?」
「工藤 勇也の後釜を狙って何か企んでいる以外はあまり知らない」
「そこまで調べてんのか。じゃあどうして俺達がここに来たのかも分かってんだよな?」
「場所を変えよう。ここじゃ人が多過ぎる」
「あ? やだよ。ヤレ」
それが合図だった。
突然藤崎 シノブにハンドレッドの構成員達が襲い掛かって来る。
シノブはカウンターで一撃入れていき、軽く吹き飛ばしていく。
何が楽しいのか、赤霧はケタケタと手を叩いて笑っていた。
「やるね。その程度じゃ変身はしませんってか?」
ハンドレッドの構成員はまるでゾンビのように立ち上がる。
体の限界など無視して、外的要因によって操られているのだろう。
「それとも誰か傷つけば流石に本気出すかな?」
「さっきから何が目的だ?」
「分かんないのか? お前だよ藤崎 シノブ。あと谷村 亮太郎。両方殺すつもりだから」
平然と物騒な事を口走るキョウマ。
日本橋で出会った時と同じだ。
冗談で言っている感じではない。
本気で口にしているのだ。
「俺はな、ビッグになりたいんだ。そのためにもっともっと力がいるんだ。そのための踏み台がお前と谷村ってワケだ」
「やめとけ。そんなやり方大勢巻き込んで破滅するだけだ」
かなり短絡的な考えだ。
現実は色々おかしな事になってるが、そう言う暴力至上主義が通じるのは不良漫画の世界だけだ。
この手の人間はどうして大勢巻き込んで破滅すると言う短銃な結末を想像できないのだろうか。
「テメェ? 俺を馬鹿にしたな?」
「バカにもするよ。教師から親から、周りの人間から注意されてもそんな感じで生きて来たんだろう。組織を作り上げて、纏め上げた手腕は認めるがそこまでだ」
「ムカつくなぁ、上から物言って。やっぱ馬鹿にしてんだろ?」
そう言って殴りかかって来た。
常人とは思えない重さの一撃。
改造人間級のパンチ力だ。
蹴りにパンチ、次々と連撃が来る。
速度の常人のソレを超えているが、シノブをそれを捌いて投げ飛ばした。
ショッピングモール内の硬い地面だ。
頭部の直撃を避けたが、受け身も取らずに叩きつけられたら大の大人でも根をあげる。
「テメェ、いてえじゃねえか!?」
だが相手はマトモではなかった。
そのまま強引に立ち上がり、頭突きをかまそうとする。
シノブもこれに応じた。
「あっぐっ——イッテェ!!」
しかし赤霧は強引に立ち上がった。
分かってはいたが頑丈な奴だとシノブは思う。
「なにボサッと見てんだ!! やれ!! 殺せ!! でなきゃ死ね!!」
背後で沈黙を貫いていたハンドレッドの構成員達が襲い掛かって来る。
シノブが戦闘員を相手にしている隙に赤霧は黒いメカメカしい物体を腹部に押し当て、そのマシンはバックルベルトに変形。
カードを装填しようとしたところでシノブは手下の一人を砲弾代わりにして赤霧の方へとぶつけた。
「テメェ!? 何してんだこの役立たずが!?」
そう言って赤霧は押し退けるが次々と構成員が砲弾のように飛んで来る。
シノブが赤霧の変身を妨害するために、とにかくぶつけてるのだ。
「今度はなんだ!?」
戦車を人型にしたような怪人が現れた。
美少女とかではなく、昭和の特撮怪人風だ。
正面玄関のガラスをぶち破り、入場した。
『ハンドレッドの敵は俺様が潰す!!』
「こんな奴の何処にそんな人望があるんだか——」
昔は性格は良かったとかそんな話でもあるのだろうか。
かと言って降りかかる火の粉として現れるのなら、払わないワケにもいかない。
「痛いと思うけど!! そこは勘弁してくれ!!」
とにかく相手は戦車の怪人。
ショッピングモールの施設内で砲弾でも発射されたら大惨事になる。
わりとガチ目に思いっきり外へと蹴り飛ばした。
同時に赤霧 キョウマの変身が完了した。
真っ赤なメカメカしい、部品の構成体。
両目がバイクの3連筒マフラーになっている。
両肩には車輪の側面が見えるようにしてつけていた。
何か乗り物がモチーフのダークヒーローだろうか。
背中のバインダーも乗り物のマフラーである。
『死ね!!』
「!?」
赤いエネルギーが相手の体から放出。
身動きに制限が掛かる。
『ハァ!!』
瞬間、ショッピングモール内で爆発が起きた。




