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谷村 亮太郎の厄日・その1

 Side 谷村 亮太郎


 =昼・大阪日本橋、メイド喫茶ストレンジがある雑居ビル3階の事務所=


 何でも屋でもある亮太郎。


 同じ何でも屋の闇乃 影司は女性のメンタルを立て直すために奮闘している。

 もう手段を選ばず、外宇宙技術までも平然と投入しているらしかった。

 

 そんな彼に新たな依頼が舞い込む。

 先日、日本橋で起きた一連の騒動、今は少女A事件と呼ばれているらしい。


 その騒動に関わる直前に参加した元クラスメイト、松村 サトシの葬式。

 中学の頃から悪童、卒業後も突っ走って、その果てに全裸にされて全身蜂の巣にされた少年。

 その少年の彼女からの依頼だった。


 長い金髪で焼けた肌。

 化粧過多で香水の匂いがキツイ。アルコールや煙草の臭いもする。

 空調が効いている室内の窓を全開にしようかと思った。

 露出も凄く、これで男漁りとかしてなかったら奇跡だ。

 アクセサリーも多く身に着けていて、ネイルにも力を入れているらしい。

 

 名前は桃山 ラブ。

 HNとか源氏名とかじゃなく、本名らしい。

 キラキラネームと言う奴だ。

 ちなみにキラキラネームの真逆をシワシワネームと言うらしいが、亮太郎から言わせてもらえばキラキラネームよりシワシワネームの方が何百倍もマシだと思う。

 若い内はまだいいかもしれないが、三十代や四十代になって、「私の名前はラブです」と名乗る時の事を考えてみてほしい。


「で? 依頼は?」


 色々と我慢して、ポーカーフェイスを保ちながら亮太郎は尋ねた。 

 内心、適当な理由をつけて断ろうかなとも思った。


「死んだアイツ——サトシの事なんだけどね」


「サトシの仇を取れとか言う依頼なら断るよ?」


「そう言うのじゃなくて——仲間とも相談して、警察に垂れ込もうと思ったけど——警察って死人が出ないと動かないし、ヤバイのが絡んでる事件には理由つけて揉み消すでしょ?」


「警察の事には詳しくないけど、警察も人間だしね」


 警察も人間である。

 最近は警察の成り手が不足してきて、なっても現実を思い知って辞める警官が一定数いるらしい。

 そりゃ、自分達が捕まえたどうしようもない犯罪者が軽い刑で済んだり、無罪になったりすればマトモな精神の人間は辞めていくだろうなと思う。


「だからアンタに頼ったのよ」


「初対面の人間にアンタ呼ばわりするのはどうかと思うよ?」


「それぐらい別にいいじゃない。本当にサトシの友達だったの?」


「はぁ?」


 知らない内に変な設定が付与されている。

 どう言う事だと思った。


「サトシが言うには仲良しで~ケンカも自分の方が強くて~とか言ってたし」


「んなワケねえだろ。お互い、直接この手で殺すのは嫌だけど、事故に遭って死んでくれねえかなって言う仲だよ」 


「あ~そうなんだ。メチャクチャ仲悪かったんだね。信じて損した」


(大丈夫かこの子)


 人を見掛けで判断しちゃいけないとは思うが、頭の悪さが随所に感じられる。

 闇バイトとかにも応募しそうだ。プラモの転売とかにも手を染めているかもしれない。

 逆に言えばここまで頭が悪いから、悪い男に引っかかって、こんな子に育ったんだなと思う。

 義務教育の敗北である。

 

「でも、フェイク動画作ってインチキしているんでしょ?」


「依頼は断ろう。他所あたれ」


 それと、人への物の頼み方が下手だった。

 一般常識とかそう言う物が欠如しているんだろう。


「そんな冷たい事言わないでよ!? 私死体になっちゃうよ!?」


「松村のアホンダラといい、君といい、一体どんなヤバイ山に巻き込まれた!? 正直、日本でハチの巣にされるって余程ヤバイ事に関わってなきゃそうはならないからな!?」


 何だかもう亮太郎はイライラして、追い出すようにして本音をぶち捲けた。 

 

「実はその、アイツ大金を持ち逃げしたみたいで——」


(納得する理由だけど、アイツ如きに持ち逃げされる連中も大したことないな)


 などと思ったが亮太郎は口には出さなかった。


「大金だけじゃなく、何かヤバイ取引のデーター? みたいなのも入ってるらしくて」


 それを聞いて亮太郎は血相を変えてソファーから立ち上がった。

 亮太郎は名探偵ではない。

 その話を聞いてある矛盾も感じたが——それどころではない。


「ちょっとどうしたの!?」


「警察に連絡して松村の家にいく!!」


「まだ依頼が——」


「死人が出るかどうかの瀬戸際なんだ!? クソッ、あの野郎死んでまで両親に迷惑掛けやがって——」


 亮太郎は電話をかける。

 相手が相手だ。

 日本橋の名物刑事の前嶋刑事に連絡を入れる。

 後で殺し屋の宇藤 タツヤにも連絡を入れるつもりだ。


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