表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/77

天川 マリネ編その9・祭りは終わる、明日は続く

Side 天川 マリネ


 =オタロード・ライブ場=


 激しい戦いがそこかしこで繰り広げられている。

 異常な状況のライブ。

 それでも余計な事を考えずに、ただひたすらに全力のパフォーマンスで歌う。

 力の限り歌う。


 そこにカジュアルな背格好をした、二人の少女が舞台に飛び乗った。

 顔は隠しているが間違いない。

 Twinkleのメンバー二人だ。


「少女Aちゃん? こう言うのはこれっきりだよ?」


「事情はある程度聞いてます。私達も全力で歌います」


「——うんっ!!」


 ライブ途中でのTwinkleメンバーが集結。

 まさかのサプライズに会場のボルテージは更に上がる。



 Side 権藤 セイト


=日本橋周辺・でんでんタウン北側=

  

「何とかならんのか!?」


『此方も予備戦力は全て投入しています!! 敵の戦力は想定外で―—』


「言い訳を聞いとるじゃない!! この役立たずが!! この件が終わったらどうなるか覚えとけよ!!」


 勢いよく権藤は通話を切る。

 その場の感情で怒鳴り立てたが、実際問題どうしうしようも出来なかった。

 今は権藤一人。

 周りには誰もいない。

 皆、逃げてしまった。


「どいつもこいつも私を蔑ろにして!? ただじゃおかんからな!?」


 権力だけが取り柄の変態親父など、命を懸けて守る価値なんてない。

 今時子供でも知っている事だ。

 それが現実になった。



 Side 藤崎 シノブ 

 

 =大阪日本橋・駅周辺=


 まさかのライドセイバーの登場に息を呑む周囲。


『またライドセイバーか!?』


『コケ脅しだ!!』


 次々と戦闘員が殺到する。

 完全機械制御の兵隊。

 それを手に持ったガンZソードをソードモードで斬り倒していく。


『お前達にはこれだ』


 バックルベルト横のケータブッカーからカードを取り出す。

 そこには平成ライドセイバー5番目の戦士、デジタが写されていた。

 そこから更にバックルベルトにカードを装填。

 メカニックなライドセイバー、赤いラインが走る黒のスーツに銀のアーマー、黄色い双眼の戦士、ライドセイバーデジタへと姿を変えた。


「う、嘘だろ!?」


 未だに根強い人気を持つデジタへの変身。

 しかもネオ仕様なのか、カード装填の手順を踏まずそのまま、赤い高速移動形態ターボランナーに突入 

 超高速移動を始めて次々と戦闘員を爆発四散させていく。

 

『さてと、お次は―—うん?』


 カードが飛び散っていく。

 この場にいた日本橋側の住民の手に留まった。

 シノブの手にもライドセイバーのカード。

 何故かいた黒川 さとみにもカードが届いた。

 

『こ、こいつは―—』

 

 藤崎 シノブと黒川 さとみも変身した。

 シノブは黒い仮面の騎士、ライドセイバーナイト。

 さとみは白いライドセイバーフェザー。

 オルタモンスターを使う仮面の戦士だ。


『凄い凄い!? 私変身しちゃってる!? 胸は大きいままだけど!?』


 確かに原点と違って胸の大きさまで反映されている。

 背丈も変身前の姿がそのまま反映されるようだ。

 ここ大一番、念願の特撮ヒーローになれたようでさとみ大喜びの様子だ。

 バックルベルトのカードデッキから手慣れた動作でカードをレイピア型の召喚機に装填。

 剣を取り出して戦闘員に斬りかかる。

 すっかり興奮状態だ。

 

『仕方ない。サポートするか』


 怖い思いをするかもしれない、後悔するかもしれないが、それはもう戦いに参加した人間の自己責任だ。

 シノブも手慣れた動作で剣の鍔部分についた部分へカードを装填。


『さてと―—』


 四体に分身してさとみをサポートする様に戦いを始める。 

 変身して身体能力も大幅に向上して多少戸惑う部分もあった。

 これで闘気解放とかスーパーモードに突入したらどうなるか想像もつかない。

 今の状態ならこの前のデスター司令にも余裕で勝てただろう。

 

(さとみがハシャグのも無理はないな。細かいパワーの調整とかはまだ難しいけど)


 不満があるとすればそのぐらいだ。

 生身の方がそう言う手加減もしやすい。

 ここで怪人が迫って来た。

 流石に人殺しの業を背負わせるわけにもいかないので、シノブが相手をする。

 相手は何かの昆虫型を思わせる風貌。

 魔法でサーチしたが、フューチャーテックの地下で戦った連中よりもパワーアップしているらしい。

 こっちはある種のタイマン仕様で複数戦には不向きであり、連戦をも想定すると苦戦も強いられるのだが―—


『秘剣・円月殺法!!』

  

『なっ!?』


 昔のスーパー戦隊の必殺技を放つシノブ。(版権的なアレで元ネタから弄ってます)

 デスター司令の時に放ったゴッドハンドクラッシャーも、元は昭和のスーパー戦隊の必殺技だ。カードゲームアニメも混ざってるが。

 身に纏うシステムに頼らずとも生身で、自分の実力で放てばいいじゃない。

 それにその方が手加減もし易いし。


(よし生きてるな―—)


 相手は生きていてホッとする。

 例え相手が変態親父の部下で、アイドルを拉致したり、街を焼き払おうとしたりと、その場で殺されたとしても文句言えないレベルの悪党の手先だとしても、さとみやクラスメイトがいる中で率先して人殺しはしたくないと言うのが本音だった。


(俺ってやっぱ間違ってんのかな?)


 だが今回の戦いを引き起こした手前、言うべき事は言うが戦いに参加しているさとみ達も批判し辛いと言うのもある。

 深く考え過ぎると勇者召喚した異世界ユグドの人達にも飛び火するような論争にまで発展してしまう。

 それと召喚当時の自分の事を考えるとあまりどうこう言えない。

 

(まあ、どんな戦いの流れになるにせよ、言うべき事は言っておこう―—)


 もしかすると人殺しの業も背負う羽目になるかもしれない。

 とりえず念話を使って、出来れば程々にするように言う事にした。

 相手も身体能力はあるが、そんなに強くはない。

 裏の世界の住民だからと言って、全員が特殊部隊崩れとかだったり、漫画の地下格闘技場に出入りしているような連中ではないのだろう。

 特に理由もなく、風俗やギャンブルで破滅する奴がいるみたいに。

 

『これでトドメ!!』


 などと思っていると、カードを装填。

 必殺技を発動。

 跳躍し、大きな白い鳥型のオルタモンスターが背中に合体して飛び蹴り。

 怪人に着弾。

 そのまま火花を散らして倒れ込んだ。


『よし、死んでないな。言い辛いけど、これ以上は人殺しになるからな? OK?』


『あ、うん。分かった―—』


『場の流れとかあるし、この事態招いた張本人の俺が言うのもアレだけど、もうちょっと考えような』


『ごめんなさい―—』


 そうこうしている間に次々と決着がついていく。

 ピクピクと痙攣していたり、運悪く死亡判定になった奴もいる。

 これはルール無用の真剣勝負、殺し合いなのだ。

 重ねて言うが、相手はド外道の部下で同じく外道の所業を行おうとした、加担するような連中だ。

 この場で殺されたとしても逆に褒められるような連中だ。

 

 決着と同時に変身も解除されていく。 

  

「さてと―—」


 取り合えず事態を混乱させたライドセイバーZの変身者、渡井 ソウジにも言うべき事は言っておかなくてはならないと思ったシノブ。


「すみませんでした」


 その本人は土下座していた。


「まあ―—うん。この騒動、谷村さんの事を考えたり、今後のアレコレとか考えて引き起こした部分もあったしね。君全部に責任を負わせるのも間違いだろう」


 何だかなぁとシノブは思う。

 

(だけど、またこんなトラブルが起きないとは限らないしな)


 それに敵の戦力も想定以上の部分もあった。

 アイドルの貞操や自己保身のために、権力欲のためにロボットや改造人間を投入する現実の悪党の何と恐ろしいことか。  

 

 今の事態は完璧な正解でもないが、ある意味では正解だったとも言える。 

 

(サウラス。ちょっとだけアンタの気持ちが分かった気がするよ)


 もしも勇者が何でも解決してくれる、全て勇者に任せればいい世の中になったら、それは魔王サウラスが正しかった事になる。


(でも俺はアンタを否定した。これからも否定しながら生きていくよ)


 魔王サウラスを否定した異世界を救った勇者として、この光景も事態も受け入れなければならない。



 Side 特型パワーローダー。


 =日本橋上空=


 横幅が広く、重厚感がある特型のパワーローダー。

 ビーム兵器を搭載し、最新鋭の装甲素材の上にバリアを持ち、空中を浮遊する事も可能。

 シールドにサーベル。

 頭部にもバルカン。

 シンプルでスキがない機体だ。

 その気になれば戦闘機並みの速度だって出せる。

 自分達の任務は日本橋にいる不穏分子の排除。

 目的のためなら街を焼き払うことも許可されている。

 少女Aを名乗ってライブしているアイドルを確保すれば特別ボーナスが出るらしい。


 退魔師か魔法使いでも出張ったか。

 それともスター・アライアンスのヒーローでも現れたか。

 それが相手でも負ける気はしなかった。

 

 日本の裏の技術の集大成のこの機体。

 負ける筈が―—


『何!? 敵機!?』


『自衛隊か!?』


 レーダーに反応。

 複数機迫って来る。

 AIが敵の予測情報を告げた。


『システム解答。敵はFー4戦闘機、Fー15戦闘機と酷似』


『Fー4とF-15!?』


『F-15はともかく、Fー4なんてポンコツ、まだ動かせる機体があったのか!?』


 Fー15イーグル。

 Fー4ファントム。

 どれも航空自衛隊が使っていた機種だ。

 Fー15は退役間近、F-4は退役済み。

 特にFー4その物は*半世紀以上前(1960年代運用開始)の骨董品である。

 Fー15も*1970年代の半ば(1976年)の代物だ。(*両データーともにWikipedia参照)

 

 両機とも自衛隊カラーである。


『そんな化石のような機体で!?』 

 

 Fー15イーグルは、自衛隊駐屯地を壊滅させた50m級の巨大ロボットに成す術もなく全滅した。

 自分達が使うのは外宇宙技術を贅沢に投入されたマシンだ。

 呆気なく撃墜できる。

 そう思っていた。


『は、速い!?」  


『此方の攻撃を避けるだと!?』


 ビームを軽やかに避ける戦闘機。

 よく、自衛隊の兵器と異世界の軍隊とが戦う奴で、イージス艦がマシンスペックを活かして敵のアウトレンジから叩いてワンサイドゲームになる。

 まるで射的ゲームの一方的な虐殺になる。

 それが例え旧式の戦闘機相手でもそうなる筈だった。


『当たらない!?』


『クソッ!? ポンコツの見た目して!?』


 相手は此方の攻撃を避けて、綺麗な空戦機動を決めつつ背後を取る。

 明らかに戦闘機乗りの動きだ。

 機体に掛かるGとかをある程度無視した上での理想的な動き。

 此方側と同じく機体に掛かるGを緩和でもしているのか?


『背後に付かれた!?』


 そしてFー4戦闘機が特型の背後を回り込む。

 バリアで凌ぐしかない状況だ。

 機銃が撃ち込まれる。

 ただの機銃ではなく、ビームの機銃だ。


『ビームの!? バリアが削られて―—』


 続いて背後からFー15が機銃。

 またしてもビームの機銃で一体に襲い掛かる。

 ビームを貫かれて装甲を貫通。

 一機撃墜。


 更に新手。

 上空、垂直方向から急降下する様に、そのままなら地面に激突しかねないスピードで漆黒で金ラインの派手なカナード翼の機体——全高12、3m程度の人型ロボットに変形し、赤い光る剣で特型のバリアを貫通して右腕、右足を両断。

 そのまま戦闘機に再変形しつつ、二機目に襲い掛かる。


『なんだ!? なんだこいつは!?』


 街の被害を抑えるためか、攻撃をバリアで受け止めながら飛び込んでくる機体。

 機体の各部からホーミングレーザーを放ち、敵の各部を貫いた。

 これで2機。

 計3機。

 残り2機だ。



 Side 谷村 亮太郎


 =大阪日本橋周辺・上空=

 

 新型戦闘機・ファブニールの性能は良好。

 日本橋上空で待機しているステルス母艦「ラーズグリーズ」から発艦した。

 元々はデーター上に存在するだけの機体だったが、日本橋の関係者が気を利かせて本気で作ってくれたらしい。


 傍には外宇宙製のステルス円盤が待機している。アニマ宇宙連合所有の第2次大戦戦車、ティガー戦車はそこに格納されていた奴だ。

 

 Fー4戦闘機、F-15戦闘機のパイロットは元自衛官で、何か色々あって戦闘機パイロットと言う花形の座を降りて今に流れ着いたらしい。

 そのFー4もFー15も外宇宙技術で魔改造されたトンデモ仕様。

 創作物に出て来る架空のSF戦闘機ともタメを張れるレベルになったらしい。

 その気になればバリアとか分身とかも出来る。ファブニールも同様だ。


 更にファブニールはどっかのロボット物みたいに三段変形機能を搭載。

 近接戦にも対応している高性能機だ。

 欠点があるとすれば、普通の地球人が乗ったら即死するレベルのGが発生するヤバイ代物だと言うぐらいか。

 

(あまり時間を掛けると何しでかすか分らないし、終わらせるか)


 そう言って4機目を無力化。

 破片などはアニマ宇宙連合の宇宙船の物資運搬用トラクタービームなどで即時回収。

 街事態も魔法的バリアで保護されている。


『クソックソックソッ!? 何が楽な仕事だ!? こんな筈じゃ!?』


『まあっ、誤算だったね?』


 亮太郎はエネルギーの刃と化した戦闘機両端のカナード翼で相手を真っ二つにした。勿論はコクピットは避けている。

 爆発を背景にそのまま上空を飛び去る。

 天川 マリネのライブ会場の頭上。


(伝わるかどうか知らないけど―—)


 スモークを焚いてマニューバ。

 ジェット戦闘機による航空ショーのようなアクロバット飛行を空中で決める。

 

(アレに亮太郎が―—)


(本当に、本当に凄いんだね。亮太郎は——) 


 ライブを、歌を続けながらマリネは大空を見る。

 漆黒に金のラインの戦闘機が踊るように飛んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ