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天川 マリネ編その7・長い夜の始まり

 Side 権藤 セイト


 =夜・大阪府内某所、高級ホテルの一室にて=


 高級ホテルの一室。

 そこに政治家や弁護士、警察の大物などが並んでいた。

 こう書けば立派だが実態は金に任せて女の子を食い物にする変態親父の集まりだ。

 普通の女では飽き足らず、普通の人間では金を積んでも変えないような女をベッドに押し倒して多くの女を泣かせてきた連中である。

 

 権藤 セイトもその一人だ。

 見た目はちょっとふっせせいな感じの中年親父。

 オタク向けエロ同人、陵辱系の竿役として出て来ても違和感無さそうだ。

 これでも政治家になれるのだが、裏金議員たちが裏金を世間に暴露されても開き直って政治家に居続けたり、天下りに天下りを重ねる様な世の中なので特におかしい事はないのだろう。

 

「どうしてだ!? どうしてこんな目に!? フューチャーテックの事件といい、ジャマルの事件といい、異世界で自衛隊が反乱を起こしやがることといい!!」


 権堂 セイトは怒りに顔を歪ませながら言う。

 2年前の核爆発級事件やEー00ファイル絡みの事件がようやく落ち着いてきたと思ったら、フューチャーテックは世間に暴露され、ジャマルとの繋がりも暴露、異世界絡みの利権も上手く行かない。

 何時の間にか、欧州の財団やら世界的警察機構のガーディアンズだけでなく、国内外のあらゆるところに敵がいる異常事態になっていた。

 ほぼ暫定的に総理大臣になった人間もあまりの激務と惨状で病院送りになったばかり。

 

 そして今度は若いアイドルを自分達に斡旋して来たスターズ芸能事務所の金城 マサトが荒いざらい口を割ったらしい。


「金城のクソッたれは後で念入りに殺すとして、問題は敵対勢力だ。たかがアイドルが雇った子供にしては手際が良過ぎる」


 金城 マサトは地の果てまで追いかけて泣いたり、笑ったり出来ないようにしてやるのは決定事項として、今は敵対勢力だ。

 まだ藤堂は全貌を把握できていなかった。


「だが兵力が不安だな……」


「その子供も始末するにしてアテはあるのか?」


 正直使える手駒は2年前の闇乃 影司とE-00ファイルに絡んだ騒動で大勢死んで、さらにフューチャーテック事件やジャマルの事件で殆ど残ってない。

 居たとしても敵対派閥の連中だ。


「この際何でもいい。チンピラでも何でも嗾けろ。そんな奴幾ら死んでも心は痛まんわ」


 と、権藤 セイトは乱暴に言い切る。

 

「それなら心当たりが」


 ここで警察の――フュチャーテックと言う企業を隠れ蓑にし、悪の限りを尽くしていた須藤 正嗣の後釜になろうと暗躍してきた大阪府内の警察のトップが口を開く。

 藤藤 セイトと同じく、如何にもと言う感じの悪人面だ。



 Side 谷村 亮太郎


 =夜・大阪日本橋・オタロード周辺=


(あれ~? 何か知らないところで、とんとん拍子に事が進んでるぞ?)


 何時の間にかオタロードでライブ会場が出来上がっていた。

 大阪日本橋を貸し切り。

 日本橋で見知った顔達がライブ会場の設営の手伝いを行う。

 先日行われた大阪日本橋のチャリティライブと言う名目で、謎の少女A名義で天川 マリネはライブに挑む。


 送られてくる刺客は皆でそれを迎え撃つ形だ。

 本当に大丈夫かと思う。 


「あら? 辛気臭い顔してるわね」


 ここでオカマのメイドが現れた。

 ツインテールにキレイに切り揃えられた濃い髭、男らしい面構え、恵まれた体格。

 腹筋と大胸筋丸出しの黒いミニスカメイド服。

 丸太の様な両腕に両足。

 どっかの名のある拳法家がメイド服のコスプレをしている感がある。

 彼の名はワンさん。

 マジカルコマンドーと呼ばれる怪しげな武術を使う拳法家だ。

 しばらく日本橋から離れていたが最近元に戻って来た。

これでもメイド喫茶ストレンジで指名率が高い人気メイドである。客層どうなってんだ。


「ワンさん? これはどう言うことで?」


「ふふふ、女を泣かせる女の敵が相手なんでしょ? そんな相手、放っておけるワケないじゃない。店長からの許可もとってるわ」


「はあ……」


 店長も乗り気らしい。

 ヘレン・P・レイヤー。

 見掛けは幼い少女で、見掛け不相応のとんでもない魔法使いだが、たまに見かけ相応の悪ノリをやらかす人だ。

 

「しっかりしなさい。貴方の女なんでしょ? 異世界で培ったスーパーパワーを見せつけて惚れさせるチャンスじゃない」


「いや、出来ればこんな大々的に―—」


「もう、何でもかんでも一人で抱え込まないの。そう言うの見てると私達も辛くなっちゃうんだぞ?」


 どうやら変更するつもりはないようだ。

 ヒーロー部とか悪の組織部とかある何処かの学園島のノリだ。

 亮太郎は異世界勇者の自分達が出張った方が一番被害が収まる結果になるんじゃなかったのではなかろうかと思い始めた。

 

「どの道さとみちゃんの件でお礼したかったし、気にしないの」


 そう言ってウインクするワンさん。


「あら、ワンちゃんじゃない!? 帰って来てたの?」


「あら、ドリアちゃん。久しぶりね」


 オカマが増えた。

 名前はドリアン。

 サバゲーチームと言う名の、絶対公安に監視されてるであろうな武装勢力、退役軍人とか傭兵の溜まり場、大阪日本橋バスターズ所属。

 スキンヘッドで化粧が濃いめのオカマだ。

 グレーの市街地用の迷彩服を着ている。 

 手にはアサルトライフルが握られていた。

 銃刀法違反とか無視である。 

まあいいか、ここ日本橋だし。

現実の日本橋でやったら例えエアガンでも捕まるから良い子は真似しないように。


「宇宙人事件の時は暴れたそうじゃないの?」


「そうよ。でも私達は端役だったわね」


「そうね。心強いヒーローさんが大勢いる者ね、この街は」


 そう言ってワンさんは亮太郎にウインクする。

 もう流れに身を任せる事にした亮太郎は「襲い掛かって来た男はやはり成敗ですか?」と尋ねる。


「そりゃそうよ。女の敵は念入りに成敗しなくちゃ」


「そんな事言って、いい男がいたら構わず手を出しちゃうんでしょ?」


「あら? 分かる?」


 フフフフとオカマ二人が不気味な笑みを浮かべる。

 


 こ◯亀の特殊刑事と色々な意味でタメ張れそうなオカマ二人から少し離れる。

 あの二人には例えどんな力を身に着けたとしても絶対的に勝てないし逆らってはいけないからだ。

 今から敵に同情する。

 恐らくいっそ死んだ方がましな、地獄の様な目に遭うのだろうと。


「おおっ、しけた面しとんな?」


 逆立った、明るい茶色の髪の毛。

 赤いバンダナを額に巻いている。

 男っぽく野性的に整った顔立ち。

背もあるアスリート系の体つき。

 胸の谷間や首回り、鎖骨のラインや肩周辺、おヘソも丸出しなオープンショルダーの白いキャミソール、黒のホットパンツに健康的な生足を晒し、足下は白のソックスに黒色のスニーカー。

  

 喧嘩っ早そうで男勝りな感じで見るかに姉御肌な女性。

 彼女は藤波 リカ。

 大阪日本橋でたこ焼き屋で働いている女性だ。

 十代ぐらいの少年少女向けの顔役でもある。

 天川 マリネを通して谷村 亮太郎に依頼を仲介した人物だ。


「指名責任言う奴や。参加せなどないすんねん。それに金も出るからな」


金目当てと言ってるが、別の目的があるのは知ってる。亮太郎は知らないふりして、「相変わらずですね」と返した。


「そりゃそうや。それとな、この事態になったのは影司とシノブが声掛けしたのもあるんやで」


「二人が?」


 二人が関わっていたことに今更ながら知った。


「おまはん、何でもかんでも一人で背負い込むタイプやろ? 」


「前にもシノブ君に言われたね」


より正確には異世界でだ。

藤崎 シノブに言われたし、仲間からも言われた。


「サカキ高校もフューチャーテックも亮太郎とシノブやろ?」


「それはー」


「宇宙人事件の時、暴れたんもそうやろ」


「えーと」


 完全にバレてる。

 その場のノリで、人前で変身したりもした事もあった。

 

「そんな顔すんなや。別に責めてるワケじゃないんよ。ただな、タマにはウチらにも悪事の片棒担がせろっちゅー話や。まあ、今回勝ち戦みたいなもんやしな。何が起きても何だかんだで上手く収まりそうな、謎の安心感みたいなもんがあるしな」


「否定し辛い……」


 リカの言ってる事は丸々亮太郎の心を代弁していた。

 実際それで宇宙人が襲来した時も乗り切ってしまったし。

 

「ちゅーわけや。まっ、あまり深く考えすぎんな。若くしてハゲる事になるで」

 

 と、言うだけ言って手伝いへと消えていった。


「はあ、自分勝手なんだから」


 苦笑する亮太郎。

 どの道、ここまで事態が動いたらどうしようもない。

 既に探知魔法には先遣隊の類。

 警備会社に偽装した裏社会専門の下っ端連中や端した金で雇われた不良、チンピラ連中が集まっている。

 やはりと言うか警察などの国家権力は圧力が掛かって動けないらしい。

 

(折角だし、マリネの様子を見ていくか―—)


 と、マリネの控室代わりにしている自分の事務所に一旦戻る事にした。



 Side 藤崎 シノブ


 藤崎 シノブは私服に着替えてクラスメイトの黒川 さとみと一緒にライブの手伝いをしていた。

 長い黒髪の爆乳美女。

 クールで知的な感じが漂う顔立ち。

 モデル顔負けの170cmの長身に抜群のプロポーション。

 衣装は白の半袖のブラウスに黒いミニスカ、白色のニーソックス、黒色のローファーで垢抜けてる感じの女の子だ。

 だが実態は今日本橋で起きている騒動を引き起こしたメイド喫茶ストレンジでアルバイトしていたり、特撮オタで戦隊ピンクに憧れていたりしている、そんな女の子だ。

 

「何か凄い事になってない? 大丈夫?」


 キョロキョロと当りを見渡す。

 大阪日本橋の本気モード。

 見た事ある顔ばかりだ。


「いや~自分でやっといて何だけどやり過ぎたかな?」


「薄々勘付いてたけど、私がバイトしているメイド喫茶ってこんなとんでもない事をやらかすメイド喫茶だったのね」

 

 さとみもちょっと引き気味だ。


「最初は不安だったけど、よくよく考えれば宇宙人騒ぎとかもこうして乗り切ったんでしょうね、この街は」


「うん。俺や谷村さんが居なくても大丈夫じゃないかな?」


 そう言って赤い羽根が這えた黒猫が空中を飛びまわり、悪魔の角を生やした骸骨騎士のヌイグルミが横切っていく。

 そこへさらにヌイグルミの子グマのような背格好やリトルグレイ型の宇宙人が通り過ぎた。

続いて二足歩行のサメも通り掛かる。

 本当に何なんだろうかこの街は。

 考えるだけ無駄な気もするがそう思う時がある二人だった。


「ここが新たなライドセイバーの世界か」


「マジで誰あんた?」


 ルックスがよく、線が細い黒いシャツにGパン姿の片目隠し系茶髪の男性が現れた。何か凄く見覚えのあるピンクのトイカメラとか白いヒーローが付ける様な見覚えのあるバックルベルトを捲いていた。

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