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天川 マリネ編その2・再開

 Side 谷村 亮太郎


 =二年後、現在・元クラスメイトの家にて=


 亮太郎のクラスメイトが死亡した。

 不良マンガの敵キャラにもモブにもなれなかった奴だ。

 ランクが低い高校に進学したが長続きせず、退学して、何をしていたかと思えば裏の仕事に関わって、最後は丸裸にされて全身を銃弾でハチの巣にされて発見されたそうだ。

 警察も適当な事を言って本気で捜査はしないだろう。

 犯人が用意した替え玉か何かを捕まえて終わりとなる流れだ。


 嘗てのクラスメイト達も教師も殆ど義務感で足を運んでいた感じだ。

 亮太郎もそんな感じだ。

 本当は亮太郎は行きたくなかったし、この場にワザワザ運んできた人間全員が来たくなかったとしても不思議ではないだろう。

 

 ただ亮太郎は地球に帰って少しばかりの時間が経過して、何だか異世界で関わった仲間や、異性の顔を思い浮かべるようになってきた。

 嫌われたくないのに、わざわざ嫌われるような真似はしたくなくなってきたのだ。

 

 もちろん、無用な情けが新たな争いを生む事も理解している。

 フューチャーテックの事件の時に相手の皆殺しを考えたり、財団のヴァンに向けて言った台詞は真実だ。

 だが最近は安易にそう言う行為に走るのはある種の逃げではないのか、そうしないために力を得たのではないだろうかとも思うようになった。


 それをシノブに言ったら「谷村さんも、そう言うところあるんですね」と笑みで返された。  

  

(葬式も終わったな……)


 本当に寂しい葬式だった。

 中学の頃からどうしようもないクラスメイトだったが、それでもクラスメイトはクラスメイトだ。

 それに周囲から薄情な奴だとは思われたくない。

 

 クラスメイトの両親からも息子のこれまでの行い含めて謝罪までされた。

 両親の間でも問題児だったらしい。死んでまで親を悲しませる親不孝な奴だとも思ったが、今の亮太郎も似たようなもんなので、あまりどうこう言わないようにした。


(日本に産まれて、そこそこ良い家庭で育って、どうしてこんな風になっちゃったのかねえ)


 小学生の頃はまではまだ悪ガキだったが中学二年になった頃には不良で問題児になっていた。中学卒業してからもそのまま突っ走ってしまったのだろう。

 子供とはそんな物だと言われればそうだが、何だかやりきれない物を感じる。 


(さてと。日本橋に向かいますか。着替えは現地で行おう)


 亮太郎は日本橋へ向かう。

 女の子待ち合わせだがデートではない。

 何でも屋を通して自分に指名依頼されたのだ。



 =昼・大阪日本橋・オタロード=


 世の中は未だ大混乱だ。

 

 フューチャーテック事件で日本の闇が暴かれ、政治経済が大混乱に陥った。


 続いて現れた宇宙人。

 宇宙人の侵略兵器の前に軍隊では無力。

 立ち向かえるのは極僅かな人間のみ。

 さらに宇宙人と日本政府が繋がっていた。


 その事実に開き直って、日本政府は異世界をノアの箱舟にしようとしたが、欧州の秘密組織、財団を敵に回して異世界に送り込んだ自衛隊からも離反者を出すなど散々な状況に陥っていた。


 だが普通の人間と言うのは正直そんなのどうでもいいのだ。

 総理大臣が誰だろうが、何をしようがどうでもいい。

 平和であれば、祭りやイベントが出来ればいいと言いながら、最低限平和を維持する努力を放棄するのだ。具体的には選挙は誰がなっても同じらしいから行かないのだ。


 宇宙人騒ぎも一週間もすれば忘れ始め、現在のネットの話題はTwinkleと言うアイドルが活動を休止すると言う内容だった。

 理由は勉強に集中するためとのことだ。


そのTwinkleのセンターが、例えどれだけ人気のアイドルグループだったとしても天川 マリネでなければ亮太郎は気にもとめなかっただろう。


(あんだけの騒ぎあったのに、人が多いね。外国人の姿も――空港で直通出来るからとかもあるんだろうけど)


そんな亮太郎は今、大阪日本橋にいる。

 服も黒いスーツ姿から私服に着替えた。

 

 葬式で親しくない、嫌悪すらしていたが、クラスメイトの末路を見て少しセンチになっているかもしれない。


 そんな気分に関係なく、日本橋は賑やかだ。

 今いるオタロードはメイド服姿のボッタクリだかどうか分からないコンカフェの呼び込みが並んでる。

転売ヤーが撒き散らしたのか、トレーディングカードが自販機の横に散乱していた。

つい先日宇宙人の襲撃があったばかりだと言うのに、活気がある。

ネットでは宇宙人やヒーローの出待ちをしている人もいるんだとか。

  

(本当にこう言うベタなのによく出くわすようになったね)


 ふと、ある光景が目に入った。

 具体的には少女が一人、ガラの悪そうな男達にに絡まれていたのだ。


(うん、あれは―—)


 全体的に黒っぽいカラーリングで、つばありのベルトラインが走る帽子にファッショングラス、チョーカー(首に巻き付ける奴)に十字架の首飾り、肩だけを露出し、胸の谷間や鎖骨のラインを丸出しにしたキャミソール、女性向けの短パンのホットパンツ、ニーソックスにローファーのブーツ。

 オタク街の大阪日本橋には似つかない、一瞬何かのアニメキャラのコスプレのようにも感じるが、それを自然体で着こなす美少女。

 ファッショングラスや帽子で顔の全体像が分かり辛いがきっと垢抜けた美少女なんだと連想させる。


(まさか――)


 亮太郎は心当たりがある人物を連想した。


 今日日本橋に来た理由はある人物に会うためだ。

 たこ焼き屋の姉さんや、闇乃 影司を経由して自分自身に指名依頼が入ったのだ。

 その相手はTwinkleのセンターで中学時代の同級生、天川 マリネ。

 

「あ、亮太郎。久しぶり」


 眼前で不良達に絡まれている少女こそ、その「天川 マリネ」だった。 

 

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