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アニマルパニック・アフターSS


【その1】


 Side 黒川 さとみ

 

 =黒川 さとみの自宅・自室にて=


 長い黒髪でクールそうな雰囲気の爆乳の美女。

 プロポーションも抜群な女学生、黒川 さとみ。

 つい半年前まで中学生だったとはとても思えない容姿をしている。

 そんな彼女は藤崎 シノブ―—クラスメイトが熊殺しになった件について、「あいつ、とうとうやりやがった」とか一人笑っていた。

  

 そもそもにして、不良を五十人を殴り倒すわ、宇宙人の50m級の巨大ロボの顔面に蹴りを入れるわ、切り札の巨大ロボット怪獣に三人で立ち向かうわとやりたい放題の男だ。

 クマ殺し程度、造作も無いのだろう。

 ネットでは「もっと優しく無力化出来た筈」、「動物虐待」とか言っている頭の痛い奴とか、ネタで言ってそうな書き込みもあったが、大多数は賞賛の嵐だった。

 中には「実はつい先日まで、異世界に言っていた」と言うネタで書いたと思われる書き込みを偶然見かけたが、書きこんだ本人もまさかそれが正解だとは思う舞。


(でもまあ、やっぱり疎外感? みたいなのは産まれるわよね)


 などとも思ってしまう。

 周囲からはよく変わったと言われるが全然そんな事は無い。

 ただ偶然、見向きもしなかったクラスメイトが凄い奴だと正当に評価されているだけであって、黒川 さとみ自身が強くなったわけでも何でもないのだ。


(亮太郎とか影司とか羨ましいな)  

 

 シノブに並び立てるあの二人がとても羨ましい。

 それだけじゃない。

 宇宙刑事のリリナとか、異世界にまだ見ぬライバルがいる。

 もしかしてラノベとかで流行りのハーレムエンドとか目指せるかもしれないが。

 それでもと思ってしまう。


「私は―—」


 戦隊ピンクに憧れている夢も大事。

 だけどシノブの傍にいたい気持ちも大事。

 この気持ちに嘘はつきたくなかった。 

 

【その2】

    

 Side 渡井 ミチル


 =大阪府内アパート・渡井 ミチルの部屋=


 長い黒髪、色白の肌、背もあり、グラマラスな体つきでとても胸が大きい。

 性格も大人しく、穏やかで、生徒からの人気も厚い。

 渡井 ミチル。

 半世紀近くの歴史があるガンネクスのプラモデル、ネクプラのプラモデルが飾られた棚がある部屋で一人考える。


 渡井 ミチルにとって、琴乃学園で経験した出来事はまるで夢であったかのように思える時がある。


 一度目は巨大ロボが襲来した時。

 あの時は誰もが必死で、正常な判断力を失っていた。

 想定外だった。

 

 街が自衛隊の駐屯地を全滅させた巨大ロボの襲撃を受けて避難する時のやり方など、誰も教えてはくれない。

 気が付いた時には避難作業が終わっていた。

 やったのは誰なのか誰も覚えていない。

 謎の巨大ロボと、ライドセイバーが助けてくれたらしい。


 そして今日。

 熊と虎二匹に遭遇し、本気で死を覚悟した。

 腰を抜かしてその場で倒れ込んだ。

 それを救ったのは二人のライドセイバーだった。


 テレビの中の本物のライドセイバーではない。

 ただコスプレしている誰かがヒーローのような力を持って、それらしく振る舞っているだけ。

 だがやっている事は本物のライドセイバーに匹敵する行為だ。

 

 地球に現れた宇宙人の軍隊と戦った。

 字にすればそれだけのことだ。

 だがそれが、どれだけの危険な行為なのか、軍事の素人のミチルにとって想像もつかなかった。

 宇宙人との最終決戦を改めて見て、考察犯の纏めサイトとかを見たりして、独自に情報収集したが、改めて地球側本来の絶望的な勝率を思い知った。

 

 中世の軍隊か二十一世紀の大国の軍隊に真正面から戦争を仕掛けるぐらいに無謀な行為。

 それぐらいの差があってもおかしくはない戦い。

 事実、ヒーローが介入するまで自衛隊はやられ役でしかなかった。

 それ程までに奇跡的な勝利だった。


(ライドセイバー……本当に藤崎君なの?)


 ライドセイバーが藤崎 シノブではないかと言う声は一定数聞く。

 キッカケは校門前で不良を撃退したり、悪漢から同じクラスの女生徒の誘拐未遂を防ぎ、不良を五十人殴り倒したからだ。

 その後にサカキ高校やフューチャーテック株式会社の悪の所業が暴露された。

 有名な悪の不良、須藤 勇也がシノブに取り押さえられたのはその直後だった。

 問題児の一人だった、中妻とその取り巻きも逃げるように学校を去った。


 続いて白王寺事件と生徒の間で呼ばれている事件で白王寺だけでなく、織姫、鎌田教諭が立て続けに学園を去った。

 これは谷村 亮太郎が関わったと言われているが、その谷村 亮太郎と藤崎 シノブはとても仲がいいらしい。

 何か関係があるのだろうか。


 その後もシノブは府内の不良に標的にされたが襲撃を受けていたらしいが、双方無傷で返り討ち。

 拳銃を持った強盗に出くわすケースもあったが、警察も叱り辛く、形式的に厳重注意して証書を授与される。

 

 そして今回のクマを一撃で倒したと言う一件。

 ただの人間のレベルを超えている。

 遂先日まで、藤崎 シノブは話題にも上がらない、ごくごく平凡な高校生だった筈なのだ。

 なのに最近の話題の中心は谷村 亮太郎か、藤崎 シノブのどちらかである。


 その前にライドセイバーに変身、あるいはコスプレして熊を投げ飛ばして見せた。

 黒っぽいライドセイバーの方は虎二匹を軽々と無力化した。

 こちらはあまりニュースになってない。

 最近転校してきた北川 舞さんと一緒に現れた、銃器を持って武装した兵士が何か関係しているのだろうか。


 舞曰く、完全武装の兵士は自宅が経営しているPMC——軍事委託会社の兵士であり、父親が心配性で護衛としてつけてくれている傭兵だそうだ。

 銃も暴徒鎮圧用で実弾ではないとか。

 本当だろうかと思う。


(それは置いといて今は藤崎君——)


 今は藤崎 シノブの事だ。

 何者だろうか。

 ネクプラバトルに興味があるとは聞いている。

 

(確か佐々木君が同じクラスだったわね)


 佐々木 シンヤ。

 黒髪で眼鏡を掛けた体格がいい感じの青年。

 正直運動部と言っても通用しそうな感じはある。 

 藤崎 シノブと同じクラスで仲がいいらしく、よく話題に出してくる。

 

(……誘ってみようかしら?)


 今は担任の先生からの提案で武術系の部活の稽古を補助していると聞いている。

 邪魔にならなければネクプラバトル部に誘ってもいいかもしれない。

 ネクプラバトルが興味を示してくれるかは分からないし、強いかも分からないし、それにシノブの友人の谷村 亮太郎もネクプラバトルは興味があると聞いていた。

邪な気持ちがないわけではないが、ここは勇気出して誘ってみようと思った。


【その3】


Side 北川 舞


=夜・琴乃市にある隠れ家=


 長い黒髪の大人の女性よりも大人びた感じのする美女、北川 舞。

 遠目から見ると一軒家に見える琴乃市の建物。

 そこが北川 舞の今の住処だ。

 そこにオフィスを構えて、今日の失態について悔いていた。


(日本の地方の警察官に期待なぞする物ではないな)


 日本の警察は優秀だと言う。

 賄賂やみかじめ料を禁じているだけでも世界的に見れば優秀だ。

 戦後の教育が行き届いてしっかりしている。

 

 だが警察も万能ではない。

   

 まさか大阪府内で熊や虎二匹。

 続いて再び熊が再出没した。

 日本と言う国は人間よりも猫や犬、熊の命や権利やらが優先されるような世の中だ。

 さらに言えば、市街地に出没した熊は射殺する事は出来ないし、ましてや麻酔銃で無力化もできない。

 そう言う決まりの国なのだ。


 琴乃警察の対応はお粗末なものであり、ただフェンスを用意して、そこに盾を持たせた警官による人力で追い込もうと言う作戦だった。

 何時代の人間だと言う話だ。

 今の日本人が忌み嫌う、一般市民に竹やりで米軍と戦えと言った第2次大戦の軍部と変わらないではないか。

 平和思想の行きつく先が、末期戦の軍部と同じ思想とは何と言う皮肉だろう。


(今はそれよりも―—関係の修復だな)


 北川 舞は地域の日本警察との付き合いよりも、藤崎 シノブや谷村 亮太郎の付き合いを重視した。

 地域の勢力との付き合いも重要だとは思うが、この二人は核兵器や大国の軍隊よりも頼もしい。

 敵に回す事だけは何としてでも避けたかった。

 

 熊や虎二匹の侵入、そして彼の近隣に熊の接近を許した事実。

 二度の失態をしてしまった。

 どっかの大国の諜報機関みたいに、悪役ムーブをかまして無能さを誤魔化す事も考えたが、それだと二人を敵に回す遠因にもなりかねない。

 連鎖的に闇乃 影司やその保護者も敵に回る。

 

 情報によればあと数名、ヤバいのがいるらしい。日本は何時の間にそんな核兵器よりもヤバイ戦力での武装が完了した状態になったのだろうか。

 そして日本の権力者はその事を知らずにのうのうと生きている。

 何とも滑稽な話だ。

 

 彼達を敵に回せば世界は間違いなく終わる。

 仮にその数人を排除したとしても、その頃には地球はボロボロだろう。  

 そこへ宇宙犯罪組織が跳梁するような事態になったらどうする?

 日本橋に封印されているらしい恐怖の大王が復活したら?

 

 そもそもにして、滅んだ世界で誰がどう責任を取ると言うのだろうか。


(いっそ体でも差し出すか……でも、二人の好みってどんな女性なんだ?)


 などと考える始末。

 相当お疲れの様だった。

 

(WEB小説の勇者のハーレムシステムと言うのは色々と言われているが成程、世界的に見れば確かに合理的かもしれないな)


 言い方を変えれば世界のために、平和を維持するために、たかが数十名の女性を生贄にすればいいのだ。

 そのハーレムを維持する費用も、核兵器の維持費よりかは安いだろう。

 なんなら最新鋭の戦車や戦闘機を買って戦闘可能状態を維持する値段よりは安い。

 コスパを考えればハーレムは十分選択肢としてありえる。


(今はそんな事より二人への謝罪だ―—)


 事件の後始末だけではダメだろう。

 眼に見えて分かる謝罪と賠償は不可欠だ。

 親しき中でも、組織として接している以上はそう言うのを蔑ろにするのはよくない。

 それを怠ったら、闇金や脱税が世間にバレても平然と続けている国会議員とかと同レベルになる。


(あんまりやりたくないが、正攻法で切り抜けるか)


 北川 舞は謝罪の準備や段取りをアレコレと頭を働かせることにした。

  

 後日、頭を下げて謝罪し、ガンネクスのプラモデル、ネクプラの高い奴をポケットマネーで二人に要求される事になった。

 

 北川 舞曰く「その程度で世界の安全が買えるなら幾らでも払ってやる」との事だった。

 

【その4】


 Side 愛坂 メグミ


 =夜・琴乃学園、トレーニングルーム=


 トレーニングルームで一人汗を流す長いピンク髪のスタイル抜群な爆乳美女、愛坂 メグミ。

 最近はトレーニングの時間を確保するのも一苦労。

 テスト前だと言うのに、受け持ちのクラスメイトのトラブルメイカーに想いを馳せる。


(まさか熊を倒しちゃうなんてね―—)


 不良50人を殴り倒したり、宇宙人とも戦って。

 今度はまさかのクマ殺しになるとは想像も出来なかった。

 その前に拳銃を持った強盗を制圧していたりと、もう何となく出来そうな気配は漂っていたが。


 武術関係の人間だけでなく、学園中から一目置かれる事になるだろう。

 既にシノブはこの近辺の他校の生徒にも噂が広がっている程の有名人だ。 

 熊を倒したとなればさらに名声は上がる。

 テレビの取材とかも来るだろうし、動画配信者とかも来るかもしれない。


(有名になるのも問題よね。厄介な人達も呼び寄せちゃうんだから) 


 動画の有名人になった後の藤崎 シノブは次々と襲撃された。

 そしてシノブはその全てを完璧に捌いてみせた。

 それこそアクション映画の登場人物みたいにだ。

 だからシノブはどっかの国のエージェント説とか傭兵説が囁かれるようになった。

 ついに熊を倒した。

 定期的に上がっていた知名度はまた上がって、また厄介な人達を呼び寄せかねない。


(一部の教師は彼を厄介者のように考えてるけど、教育者としてそれはどうなのかしらね)


(その対策のために、シノブを武術系の部活の手伝いとかさせたんだけど―—)


 今残っている武術系の部活の子達はいい子揃いだ。

 シノブや亮太郎とも打ち解け始めている。

 熊を倒して周囲の生徒達から恐れられるどころか、何か興奮気味に周囲に受け止められている。

 つい数年前まで、メグミも学生だったが僅か数年でまた考え方に変化でも起きたのだろうか。

 それとも自分が変なのだろうかとも思う。

 

(ともかく、教師の私がシッカリしないと)


(でも、これ以上のトラブルは勘弁かも)


 などと思いながら愛坂 メグミはトレーニングに励む。


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