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藤崎 シノブとクラスメイト

 Side 藤崎 シノブ


 =放課後・琴乃学園の近所のファミレス=


 放課後。

 藤崎 シノブは男三人、近所のファミレスに足を運んでいた。

 最近シノブは武術系の部活、空手部や柔道部に剣道部などの稽古に付き合っているが、今日はオフ。

 宇宙人事件の襲来で延期となっていたテスト期間が近づいて来たからだ。

 

 それにシノブ自身もあまり自分が出しゃばって、ペースを崩されても問題だと思ったので丁度よかった。 


 そんな時にクラスメイトから誘いの声が掛けられた。

 最近は谷村 亮太郎か、それとも黒川 さとみとの付き合いが多かったので、たにまはいいかとも思った。


 ファミレス内は人で賑わっており、同じ学生が何人もいる。

 流石にこの場面で不良達に絡まれたりはしないよな? などとシノブは周囲を警戒してしまう。

 

「最近シノブ殿は変わりましたな」


 太っちょ。四角く分厚い眼鏡。バンダナの少年から言われる。

 彼の名は尾田 サトシ。

 周囲からはオタクと思われている。

 実際オタクであるので特にサトシは否定しなかった。

 完全に青春とか恋愛とかそう言う物を投げ捨てている。

  

「シノブ教官、亮太郎教官と一緒に自分が知らない間にPMCで特殊部隊の人間から教えを受けたのでありますか?」

 

 傍にはちびっこい少年がいた。

 名前は守宮 イッペイ。

 こっちは中学時代、かなり暴れた口らしく学校にスタンガンや警棒、催涙スプレーを持ち込んでいるヤバイ奴だ。

 いわゆるミリオタであり、学校にテロリストが現れたらとかゾンビが現れたらとかもしている。まあ実際は宇宙人の巨大ロボが現れたが。

 シノブや亮太郎を教官と呼ぶようになったのはここ最近の活躍を見てのことである。


「あ~PMCじゃないんだよね。どちらかって言うと剣と魔法の異世界で死ぬ程頑張ってみたいな」


 試しに馬鹿正直に言ってみるシノブ。


「流行りの異世界ものですか。まあ確かにそれぐらいでなければ説明はつきませぬな」


「シノブ教官、異世界の軍事技術はどんな感じでしたか?」


 二人はすんなりと受け入れたようだ。 

 特にイッペイは眼を輝かせている。


「軍事技術はまあ、頑張れば第一次世界大戦レベルの軍事技術はありそうだけど。生身の戦闘力はアメコミで主演張れそうなレベルがゴロゴロいる魔境だぞ」


 二人は「おおー」と驚く。


「で? ハーレムはつくりましたか?」


「あ、自分も正直気になります教官」


 唐突にぶっ込んでくる二人。

 流石にシノブは笑みのまま口元を引き攣らせる。

 異世界物漫画においてハーレムは避けては通れないお約束なのだろう。

 気持ちはシノブも分る。

 実はそう言うのに期待していた頃もあった。

 だが人の生き死にに触れ過ぎて、異世界に来た事を後悔したこともあった。

 だからと言って、それでクラスメイト相手にマウントを取るのもどうかと思ったので、シノブは「女関係はまあ、節度を保ってお付き合いしてたよ」と返した。


「で? その女性の方は異世界に残したので?」


「それはそれで酷いであります教官」


 二人が抗議して来た。

 両者の頭の中では何時の間にかシノブには恋人がいる設定らしい。

 どう言おうか悩むシノブ。


「まあでも、こっちの世界に連れてこなくて正解だったよ。宇宙人とか来ちゃったしね」


 これは本音だ。

 宇宙人の襲来を地球人の問題としてカウントして良いのか悩むところだが、異世界ユグドはせっかく救われたのだ。

 魔王サウラス以上の新たな脅威に直面させるのはあまりにもむご過ぎるとシノブは考えていた。


「宇宙人ですか……今でも信じられないですぞ」


「自分も未だに信じられないですが事実であります」


 話題は宇宙人に関する話題に移った。


「と言うか宇宙人相手にどう戦えと? 昭和の侵略者のように戦力を宇宙から送り込んで来るだけならともかく、遠くから艦砲射撃されでもしたら手も足も出ないであります」


 イッペイはもっともな意見を述べる。

 シノブも同じことを考えていた。

 

「だけどまあ、地下要塞つくってまで前時代的な侵略活動するのは何かしらの理由はあると思うぞ」


 と、楽観欄ではあるが事実でもある。

 正直、地球人を皆殺しにするだけなら隕石を牽引して落としまくって艦砲射撃を適当にすればいい。それで終わりだ。

 なんならオゾン層を破壊するなり、北極と南極の氷を全部溶かすとかでもいい。

 だけどそうはしなかった。


「何が自分達の知らない理由があると?」


「そう考えるのが自然ですな」


「と言うか相手がその気ならば自分達はこうしてファミレスでノンビリ談笑も出来なかったと思うよ?」


 未だにジャマルの侵略活動が続いていて、避難所を転々としながらジャマルの影に怯えながら暮らす。

 一歩間違えれば地球全土がそうなっていた。

 

 実はと言うとI市が深く関わっていて、ヘタにI市に潜むローカルヒーローならぬ、ローカルヴィラン活動をしている悪の侵略者達を巻き込む派手な侵略活動を行うと組織間抗争に発展し、ジャマルと言えどもタダでは済まないのが真相だった。

 これは亮太郎やシノブなど、一部の人間しか知らない真実である。


「まあただの高校生がこんな話をしてもどうしようもないと思うけど……」


 何処か諦めに似た感情を吐露するシノブ。

 異世界を救った勇者といえども日本では投票権もない子供にすぎない。

 日本の政治とか地球の未来とか幾ら考えたところで無駄。

 そんなことよりテストや将来の事を考えた方がいいのだろうかとも思う。


「でもシノブ殿は異世界を救った勇者でしょう?」


「異世界と地球とじゃ事情は違うから」


「と言うかシノブ教官、ライドセイバー説がありますけどその辺どうなんですか?」


「さあ? それはどうだろう?」


 苦笑いして誤魔化すシノブ。

 二人ともシノブが勝手にでっち上げた設定として悪ノリしている感じではない。

 シノブ=異世界勇者を何故だか信じ込んでいる節がある。

 

「大丈夫ですぞシノブ殿。拙僧、口が堅いゆえ」


「秘密なのですね教官。分かりました」


「ああうん」


 などと会話をしていると不穏な気配を察知。

 ヘルメットを被った人物が黒い拳銃を持って来店。

 周囲は異変に気が付いていない。

 レジには誰もいなかった。

 ただレジの近くにいた琴乃学園の女生徒のグループがギョッとしていた。


「運が悪いなもう!?」


 気が付けばシノブは強盗犯を取り押さえた。

 銃を持った方の腕を捻り上げ、相手の体に乗って、催眠魔法を掛けて制圧。

 銃を床に落としたのでそれを蹴り飛ばし、近くにいた女子生徒に「警察を呼んで。大至急いますぐに」と呼んだ。


(まだ仲間がいたのか!?)


 同じくヘルメットを被り、拳銃を持った仲間が現れた。

 シノブは前転し、そのまま飛び込むように蹴りを相手の鳩尾に放つ。

 もちろん手加減してだ。

 相手は壁に叩きつけられてそのままズルズルと壁際に座り込んだ。

 気を失ったかどうか分からないが念のため催眠魔法をかけておく。


 後ろで「流石シノブ殿!」、「凄いです教官!」とクラスメイトが騒いでいるが苦笑いで返しておいた。

 助けられた女学生達は事態を把握できていないのか、その場にポカーンと目を丸くし、口を開けてその場に立ち尽くしていた。



 =夜・琴乃学園近所の警察署前=


 警察からは礼の如く大声で怒鳴られた。

 だが警察には警察の立場があるし、シノブはただの少年でしかないのだ。

 大人しく聞き入れた。


「こうして事あるごとに何時も説教をしてすまないと思っている。我々警察も治安が良くなるように頑張る所存だ」


 と、最後は頭を下げられ、礼を言われて解放。

 警察署前では尾田 サトシと守宮 イッペイの二人がいる。

 どうやらずっと待ってくれていたらしい。


「毎度毎度、何か一犯罪でもおかした気分になるな」


「まあ仕方ありませぬ。警察にも警察の立場がありましょう」


「うん。警察の人も辛いと思うよ。今回ばかりは運が悪かったよ」


 なるべく警察沙汰にはしたくはないし、巻き込まれたくないが、今回のケースは仕方ないと諦めている。

 何の罪もない女子高生が拳銃に撃たれるよりかは、自分が貧乏くじ引いて説教された方がいいと割り切るしかなかった。


「それよりも教官、身のこなしが凄かったです。どう鍛えればああなれるんですか?」


「あ~変に体鍛えて強くなろうとするよりかは、防犯グッズ買い漁った方がいいと思うよ?」


 異世界から帰って来てから急速に仲良くなった黒川 さとみにも言ってる事を伝える。

 半端な覚悟の中途半端な武術はかえって寿命を縮めるのだ。

 それよりかは防犯グッズ買い漁って、危険から遠ざかるようにして暮らした方がいい。


「拙者は憧れますが、生半可な修練で会得を出来るとも思ってませんし、拙者は遠慮しておきますぞ」


「自分は将来自衛隊に入るつもりであります。格闘技の心得はあった方がいいと考えています」


「って言われてもなぁ」


 どうするべきか悩むシノブ。

 サトシはともかくイッペイの場合は軍人の道を選ぶつもりのようだ。

 夢を叶える手助けすればいいのかどうか悩むシノブ。


答えは出ず、「とりあえず基礎トレーニング積んでからね」と返しておいた。


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