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星を懸けた最終決戦

 Side デスター司令


 =朝・ジャマル司令室=


『格納庫が爆破されました!!』


『無人兵器同士で潰し合っている!?』


『侵入者は数人!! 次々と斬り倒されて!?』


 基地内で轟音、爆発。

 デスター司令は状況が芳しくないのを理解する。

 格納庫に待機させていた巨大ロボが何者かに爆破された。

 地球のテクノロジーの爆薬では傷一つ付かない程の頑丈さを持つロボットがどうやって?

 次々と此方側の兵士が討ち取られていく。

 そして司令室に白い宇宙刑事、リリナと緑の仮面、藤崎シノブが司令室に乗り込んで来た。


『お前がジャマルの親玉か』


 そう言って藤崎 シノブは剣を向けた。


『まさか地球人如きがここまでやるとはな—―流石は取引先に選んだ相手と言う事か』


『取引先?』


 リリナが話に食いついた。

 構わずデスター司令は話を続ける。


『いかにも。ジャマルと日本政府は数年前からの付き合いだ。そして取引する傍らで宇宙を滅ぼせる程の強大な力を持った神の存在を探っていた』


『地球では恐怖の大王と噂された存在、宇宙の暗黒神アンゴルモア』 


『ッ!?』


 宇宙の暗黒神アンゴルモア。

 地球では恐怖の大王の名で有名だったらしい。

 有名だったのは1990年代の後半、20世紀から21世紀の移り変わりの時期に預言者ノストラダムスに預言され、世界中の人々に恐怖された存在だ。


 シノブはフュチャーテック事件、殺し屋の宇藤 タツヤを大阪日本橋の廃工場近くで尋問した時に谷村 亮太郎が語っていた事を思い出す。


「うん。ある。何なら羽の生えた黒猫の姿をした邪神とかもいるし、実は恐怖の大王アンゴルモアとかもいる」


「あ、知らないか? 1999年の世紀末に襲来して人類を滅ぼすとされた恐怖の大王の名前。あの年代を生きた人間なら一度は耳にした事がある名前だよ。一種の終末論の一つだね」


「まあ人類は滅びずにこうして存続しているワケだが、この世界においては少なくともアンゴルモアは倒されずに封印されたらしいがね――オカルト話はここまでにして、この殺し屋を何でも屋の元まで案内しよう」


 まさかここでアンゴルモアが絡んでくるとは思わなかった。

 同時に理解した。

 この戦いはただの地球の存亡を懸けた戦いではない。

 全宇宙の命運を懸けた戦いなのだと。


『まさかここに基地を構えたのは—―』


『ククク、そうだとも。それに日本政府の連中は日本橋勢力とも言うべき連中を邪魔に思っていたらしいしな。日本政府との戦いも君達に分かり易く言えばプロレスみたいな物だ』


 ここで言うプロレスとはネットスラングの意味だろう。

 宇宙人ジャマルと自衛隊の戦い、地球での殺戮行為は彼達にとっては日本政府と事前に決められていた通りの戦いだったのだ。

  

『自衛隊の基地を巨大ロボで焼き払ったのも、決まりだったからか』


『ああその通りだ。街を破壊させたのも、街を襲撃させたのも日本政府の承諾は得ていた』

 

 正直、フュチャーテック事件で日本政府の裏の顔を見てしまったシノブとしては納得してしまった。

 同時に怒りが湧いた。

 ジャマルの非道もそうだが、まさかここまでこの国が腐りきっていたとは。

 

『そして銀河連邦ともだ……』


『やはり銀河連邦もグルだったんですね……』


 リリナは否定はしなかった。

 疑問が色々と合点がいったのだろう。


『本来なら大阪府なる場所は今頃火の海に沈み、後でゆっくりと暗黒神の封印を解こうと思ったが……私の計画はメチャクチャだ。一度態勢を立て直す事にする』


『逃がすとお思いですか?』


 リリナが武器を構えてデスター司令に言い放つ。


『逆に聞くが新米の小娘と地球の若造一人で私を倒せるとでも思ったか?』


 そしてデスター司令は立ち上がり、赤い二本のレーザーブレードを構えた。

 

『ただ上の言う事を黙って聞けば昇進できる程、ジャマルと言う組織は甘くない。力と頭脳を兼ね備えた者がこの地位を手に入れられるのだ』


 そして司令室のドアからサティーネが配下のジャマル兵やジャマル怪人を引き連れて現れる。


「この基地はもう終わり!! だけどあんた達だけでも息の根を止めてやる!!」


 一斉に襲い掛かって来た。

 地球だけでなく、銀河の命運を懸けた一戦が始まる。


 

 Side リリナ


 =朝・司令室=


 司令室でサティーナの部下達と斬り合うリリナ。

 時にビームガンや額からのビーム、バリア能力を上手く切り替えて敵を捌いていく。

 背後では藤崎 シノブとデスター司令が激しく斬り結んでいる。

 そっちにも援護をいきたいが、自分はサティーナが連れて来た見慣れないタイプのジャマル怪人と戦う。

 地球のカブトムシとクワガタを混ぜ込んだタイプとバッファローとゾウを混ぜ込んだジャマル怪人だ。

 今迄戦ってきたジャマル怪人とはパワーが桁違いだ。

 それが二体。

 リリナも普通なら苦戦を強いられただろう。


(これが魔法の力!!)


 リリナはシノブが掛けてくれた魔法の力に驚く。

 力が湧き出る。体が軽い。

 強大な力を持つ新手のジャマル怪人二体と兵士、そしてサティーナ相手に一歩も引けを取らない。

 更には「気持ちだけど」と言われて飲まされた能力値向上アイテムも服用していた。

 たったこれだけでこれだ。

 スーツのリミッターを解除してもまだスーツの反応が遅く感じる程。

 さらにAIのスーツサポートシステムをフル稼働し、コンバットスーツを限界以上に稼働させた。

 もうなんならスーツ脱いで戦った方が調子いいのではないかと思ってしまうぐらいに絶好調だった。


 そんなリリナにサティーナは舌を巻く。


「どうなってるんだい!? 本当にアナタ、あの小娘かい!?」


『サティーナ。アナタはここで逮捕する!!』


「出来るもんならやってみな!! 小娘が!!」


 そして新たにジャマルモンスターが追加される。

 二体の生物を融合させたような背格好の新型だ。

 その二体に飛び蹴りを入れながら二体のライドセイバーが現れた。

 谷村 亮太郎の黒い仮面の二号、闇乃 影司のディープブルーカラーの三号だ。


『状況は念話でシノブから聞いてる!! 君はサティーナを狙いたまえ!!』


 そして亮太郎は影司と一緒に戦闘に突入する。


『はい!!』


 そしてリリナはサティーナへと斬り込んでいった。



 Side 藤崎 シノブ


 =ジャマル基地内部=


 基地内部で激しい斬り合い。

 デスター司令は物凄く強い。

 今迄戦ってきたジャマル怪人とは別格だ。

 時に電撃の雨を触らせ、時にビームを発射し、時にバリアを放ち、二刀流の剣技で襲い掛かった。 


『暗黒の力の洗礼を受けた私と斬り合えるとはな!!』


『こっちも驚いてるよ!!』


 シノブもやられっぱなしではない。

 炎の剣、フレイムエッジと氷の剣、アイスエッジの二刀流で段々とギアを挙げる。 

 最近は一方的かつ余裕の戦いが多かったが久しぶりの強敵。

 何だかんだ言って戦闘は好きなのか、心が昂る。

 

『私も嘗ては宇宙刑事だった……だが銀河連邦も地球の国連と大して変わらん』


『あんた地球人だったのか?』


 更に衝撃的な事実を告げられた。


『ああそうだ。お前も直に分かる時が来る。それとも分かった上でそう振る舞っているのか? 平和だの正義だのの何と無力なことか!!』


『俺も日本政府に大して思う事はないわけじゃない。だけどお前達のやり方を肯定したつもりもない!!』


『ならば分からせてやろう!』


『ッ!! ジャマル空間か!!』


ジャマル空間。

薄暗い闇の世界。

そこでは悪しき存在が数倍のパワーを発揮出来るようになる空間。


『行くぞ――』


『ッ――』


 激しい斬撃のぶつかり合い。

 シノブが押され始める。

 だが余裕を保っていた。

 

『まだ余力があるのか――それとも――』


『あるんだなこれが』


『なに?』


『この世界に戻って初めてじゃないかな、本気出すの』


『ッ!?』


 シノブはワザと弾き飛ばされ、数メートル後退る。

 彼は久しぶりに本気を出す事にした。


『地球の命運を懸けた戦いだもんな。本気を出さないとな』


 両目を瞑り、気配が変わり始める。

 大気がバチバチと鳴り響く。

 シノブからエネルギーの高まりを感じる。

 

『なっ?』


 やがて藤崎 シノブの体が金色に輝きだす。


『なんだそれは—―』


 シノブの変化。

 それは明鏡止水とも言う武の極意。

 生命体であるならば誰もが到達できる可能性の極み。

 谷村 亮太郎によれば更に向こう側の極意や、全く正反対の生命の炎と呼ばれる到達点もあるらしいが。

 

 ともかくシノブの別人のような変化に流石のデスター司令もたじろぐ。

 

『こんな力を!? 地球の人間が!? こんな馬鹿な!?』


 闇に堕ちて力を得た自分を全否定するかのような金色の輝き。

 あまりのパワーにジャマル空間内部が揺れている。

 大気が振動するような波動の波をジェット噴射のように噴き出し、強大な存在感を周囲にアピールしている。


『こっから先は本気で行くぞ』


『ッ!?』


 アイテムボックスから次々と武器を切り替えて斬りかかるシノブ。

 スピードもパワーも段違いだ。

 AIの予測計算が追い付かない。

 美しい太刀筋。

 それでいて力強くいて実践的。

 ただ相手を倒すことに特化した剣技の数々。

 二刀のレーザーブレードが大破。

 バリアや落雷、幻影で防ぐ。

 だがバリアが力尽くで簡単に破壊され、落雷は剣や拳、蹴りで弾かれ、幻影は意味を為さず本体のみを直接狙ってくる。


『だ、ダメだ!? こいつは根本的に――』


 そしてデスター司令は悟った。

 この星に来るべきではなかったと。

 こんな化け物がいるこの青き星に。 

 シノブは腰を落とし、ゆっくりした動作で拳を構えた。

  

『ゴッドハンドクラッシャー!!』


『!?!?』


 巨大な光の拳がデスラー司令に直撃した。

 通常空間に戻り、転がり込む。  



 Side リリナ


 =ジャマル地下基地司令室=


 戦いは一方的だった。

 リリナはサティーナを寄せ付けず、谷村 亮太郎と闇乃 影司は新型怪人相手に互角以上の戦いを繰り広げていた。


『この感じ、シノブ君本気だしたっぽいね』


 谷村 亮太郎は分身、幻影、幻覚などを駆使し両手に逆手で持った黒い双剣で斬りつけ続ける。

 ジャマル怪人は攻撃ががまるで勝負になってない。


『外の様子が気になるし、そろそろ終わらせようか』


 闇乃 影司もジャマル怪人と戦っていた。

 此方は戦い方がトリッキーだった。 

 両手から火炎、電撃、氷の嵐、ヘルメットの両目やバックルベルトからビーム。

 腕や足をゴムのように延ばしたり、プロレス技を仕掛けたり、エネルギーを纏った手刀で斬り裂くなど、傍目から見ると戦いを楽しんでいるようにも見える。


『おや、どうやら暴れ過ぎたみたいだね』


 ジャマル怪人の爆発を背景に亮太郎がつぶやく。

 基地内で激しい轟音が響き、大振動で揺れている。

 この基地その物がもう長く持たないのを何となく感じ取った。 


「チッ、いよいよマズイね。ここは退かせてもらうよ!!」


「待て!!」

 

 急いでサティーナの後を追うリリナ。

 新手の怪人相手に戦う谷村 亮太郎と闇乃 影司も決着を急ぐ事にした。



 Side サティーナ


 =要塞内部通路内=


 サティーナは逃げながら封印を解く。

 デスター司令の反応、応答がない。

 恐らくやられてしまったのだろうと思う。

 この地下施設で封印されていた暗黒魔獣「デスガロイア」。

 そいつを解き放つ事にした。

 この星は焼け野原になるかもしれないが構いはしない。

 辺境の未成熟な惑星が死の星になるなど、よくある話だ。

だから心は微塵も傷まない。

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