大阪日本橋乱闘街
Side 宇宙刑事リリナ
=夕方・大阪日本橋=
日本橋各地で戦い起きている最中。
ライドセイバーに変身した藤崎 シノブ、谷村 亮太郎、闇乃影司の3人。
そして宇宙刑事リリナ。
懸命に人々を助け、被害を最小限にするべく戦っていた。
藤崎 シノブは剣を、谷村 亮太郎は双剣を振るい、時折魔法で蹴散らし、幻惑魔法で同士討ちを狙って場を混乱させる。
闇乃 影司は魔法を習得していないが、光線、光弾、分身、高速移動を駆使し、拳や脚にエネルギーを纏わせ、時にそのエネルギーをバリアにして相手の攻撃を防いだり、刃物に変えて斬り倒す。
(凄い—―)
リリナはそんな3人の戦い振りを見て地球と言う星を過小評価していた事に気づく。
藤崎 シノブがデタラメな強さなのは知っていたが、まだ他にもデタラメで底が見えない強さの人間がいたのかと。
『いけない!?』
そんな彼達の、日本橋各地で繰り広げられる快進撃に水を差すようにジャマル空間が展開される。
☆
ジャマル空間。
悪しき存在が数倍のパワーにまで上昇する場所。
ジャマル怪人が巨大化したりパワーアップしてそのまま襲い掛かったりと様々だ。
リリナは連戦になるが急いでヴィクトリオンを転送作業を開始しようとする。
『リリナ――』
『アナタは!?』
リリナの前に現れたのは赤いコンバットスーツの宇宙刑事。
長い真っ赤の髪の毛をヘルメットから垂れ流している。
女性である事の象徴の大きな二つの胸の膨らみもリリナと同じぐらい。
彼女は自分と同じ宇宙刑事。
宇宙刑事レッカ。
訓練生の頃からの仲だ。
性格は正反対。
それでも何故かウマがよくあった。
だがどこか様子が変だ。
『逃げ――ろ――』
『ッ!?』
宇宙刑事レッカはリリナにレーザーブレードで斬りかかった。
☆
宇宙刑事レッカはリリナの同期である。
どんな人間かと言うと、地球の基準で言うなら胸がとても大きなく、髪が真っ赤のヤンキー少女だ。
とにかく頭が悪い。
座学はダメ。
だけど実技になると、人が変わったように優秀になる。
そして情に厚く、リーダーシップもある。
曲者揃いの同期の宇宙刑事を纏め上げていた。
そんな彼女に惹かれつつあったリリナ。
だが別れは唐突だった。
宇宙刑事として配属されたての頃にレッカは行方不明になる。
リリナも直前まで一緒だった。
分っていたのはジャマルと、ジャマルの女幹部サティーナが関与していたらしいことだった。
一人でジャマルを追い、何かの罠だと分かりながらも単独で地球に来た。
だが再開した彼女は敵だった。
☆
Side 藤崎 シノブ
谷村 亮太郎と闇乃 影司の二人はパワーアップしたジャマル達が相手にも一歩も引かず戦っている。
日本橋各地で戦っていた面々は押され気味になるが、新たなヒーローの助太刀もあり、盛り返していた。
問題なのはリリナだった。
赤いコンバットスーツの相手に押されている。
鑑定してみると地球人で銀河連邦の宇宙刑事、火渡 レッカ。
洗脳状態と言う項目が見えた。
『一か八か!!』
邪魔するジャマル兵を殴り倒す。
異世界には様々な魔法があり、その中に状態異常解除魔法がある。
もしくはマジックアイテムだってある。
それを使って強引にでも洗脳状態を解くつもりだった。
『やめて、レッカ!! 眼を覚まして!?』
『私は—―』
などと緊迫したやり取りをしながらレーザーブレードで激しく斬り合う二人。
藤崎 シノブは魔法を掛ける。
するとどうだろう。
その場にレッカは崩れ落ちた。
『レッカ!?』
『大丈夫。洗脳を解いて眠っているだけだ。念のため回復魔法とか掛けておく』
闇乃 影司が近寄ってきて、レッカの体に抱き起すように触れた。
『こう言う時、裏切り防止のためにスーツとかに細工してあるのがお約束だから、念のためにね?』
との事だった。
パワードスーツへの細工までには考えが及ばなかった。
どの道、異世界には外宇宙製のパワードスーツなど存在せず、機械の点検や問題点の洗い出しなどは門外漢だった。
一応鑑定を掛けておくが、洗脳に余程自信があったのか特に異常らしい異常は見当たらなかった。
『レッカは大丈夫なの?』
『この人は僕に任せて戦いに集中して。う、うん—―』
すると真っ赤な巨大ロボが現れた。
赤い平成初期のスーパーロボの外観でヒロイックな感じ。
琴乃学園近くで現れた赤い剣を持つ方とはまた違う種類のロボットだ。
『よくも私の作戦を台無しにしてくれたわね!!』
と、女性の声が響き渡る。
他の連中の事など目もくれず、リリナを優先的に狙っているようだった。
ロケットパンチをしてくるが、シノブは手に持った茶色の大剣、ガイアソードで弾き飛ばした。
『チッ!! これならどうだ!!』
今度は目から光線を放つ。
空中にバリアが展開された。
闇乃 影司の力だ。
バリアと巨大ロボの光線が衝突し、爆発が起きた。
『このポンコツめ!! 銀河連邦の最新テクノロジーが聞いて呆れる!!』
などと相手は悪態をついていた。
『相手は知り合いかい?』
シノブはリリナへと確認を取った。
『――サティーナ。ジャマルの大幹部です。あの赤いロボットはレッカのロボットです』
声だけで分かるぐらいに面識があるようだ。
『恐らく、洗脳したレッカを私に差し向けたのはサティーナでしょう』
『その隙に君を倒そうと?』
物量任せの力押しに、洗脳した仲間を投入し、奪ったロボットで前線へと自らに出張る女幹部。
戦況は徐々にだが優勢に傾きつつある。
(此方側が想定外に強いのもあったけど、相手の指揮系統とか連携とかバラバラなのもあるんだな)
今の状況をそう分析するシノブ。
想像以上に大阪日本橋と言う街を知らなかったのが敵の敗因でもあるのだが、劣勢に持ち込まれて組織としての杜撰さが浮き彫りになったのだろう。
そこが付け入る隙だ。
『いや~こう言う相手は専門外なんだけどね。まあやれるだけやってみますか』
谷村 亮太郎も本気を出し始めたのか分身、分裂して手当たり次第に敵を切り倒し始めている。ある意味ホラーだ。
遠くでは女子プロレスラーがレックスジャマル相手にプロレス技決めたり、茶髪の背の高い兄ちゃんが血塗れになりながら数倍のパワーアップしたはずのゴリラジャマルを殴り飛ばしたりしていた。
新たに何か爆乳で白いレオタードスーツのサイバーパンクファッションの子やら、これまた爆乳の戦隊レッドとか色々いた。
春にやるお祭りヒーロー映画みたいな混沌とした状況だ。てか爆乳率高い。
『とにかくあの巨大ロボットをどうにかしますか』
シノブはガイアセイバーを構えた。
☆
Side サティーナ
楽な任務の筈だった。
ジャマルの女幹部サティーナ。
多くの人を、街を、惑星をメチャクチャにして来た悪の女幹部。
辺境の田舎の惑星のそこそこ発展した街で起きた小事でしかなかった。
部下の尻拭いのために、丁度顔見知りの宇宙刑事リリナもいるらしいので洗脳化においたレッカをぶつけて痛めつけようと思った。
だが甘かった。
部下達は辺境の蛮族に返り討ちに遭い、ジャマル空間に戦いの場を移しても劣勢。
レッカもあっと言う間に奪い返された。
何よりも宇宙刑事以上の戦力がいるとは聞いてなかった。
地球人の感覚で分かり易く言えば、何の変哲もない小さな村で世界を救える勇者級の人間数人ノンビリ過ごしていたようなものだ。
(こんな強い奴達が何でこんな場所にいるんだい!? 聞いてないよ!?)
焦りながら宇宙刑事レッカの50m級の巨大ロボ、マーズタイタンを動かす。
敵は惑星メガニカの戦闘用ロボット、ギンブラスを蹴り飛ばしてジャマル空間内の巨大化したサイジャマル相手にも互角以上に渡り合う奴だ。
巨大ロボットに乗ってるからと言って油断はできない。
「チッ――なんつー馬鹿力!?」
腹部への蹴り。
そこから剣の切り上げ。
マーズタイタンが激しく揺れ、火花が散る。
そこから更にシノブの大剣での連撃。
「私を!! 私をここまでコケにした事!! このサティーナ様が必ず公開させてやるよ!! 覚えておいき!!」
腹いせにマーズタイタンを自爆でもさせようかと思ったがその間もない。
どの道ここまでボロボロにされたら流石の銀河連邦の科学力でも復帰は無理だ。
宇宙刑事レッカも同様である。
サティーナはロボから脱出し、逃亡する。
☆
Side 藤崎 シノブ
=夕方・大阪日本橋=
敵の指揮官は逃走した。
ここで倒す事も考えたが、そうなると戦いは掃討戦に移行して被害が出る。
それにあえて逃すことで敵の基地を逆算できるのではないかと言う目論見もあった。
完全ステルス仕様なり、テレポート装置なり積んでるかもしれないが、此方には宇宙刑事がいるし、谷村 亮太郎が掴んだ情報とも照らし合わせれば見つけ出すのも不可能ではないように思えた。
その前にやるべき事は沢山あった。
探知魔法を使っての出来うる限りの救助活動だ。
『リリナさんはレッカって人の治療をお願いできるか?』
レスキュー活動をする前にリリナへと頼みごとをする。
『はい。この後、また会えますか?』
『うん。待ち合わせはメイド喫茶ストレンジでいいかな? 救助活動が終わり次第向かうよ』
『分かりました』
それだけ言い残してシノブはリリナの元から去った。
☆
Side リリナ
リリナは思う。
一人だけでは成し遂げられなかった。
乗り切ることはできなかった。
それだけ激しい戦いだったにも関わらず、被害は不謹慎かもしれないが想定を遥かに下回った。
(本当に、本当に、よかった!!)
ヘルメットを解除し、その場で泣き出してしまう。
色々抑え込んでいた感情が吹き出す。
パートナーがいなくなり、一人で地球へと向かい、新米は新米なりに頑張ってきたこと。
レッカを取り返せたこと。
様々な想いと感情がごちゃ混ぜになって押し寄せて来る。
(レッカを船に運ばなきゃ)
涙を拭い、リリナはレッカを母艦へと運ぶ事にした。




