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日本橋へ

 Side 藤崎 シノブ


 =夕方・宇宙船内=


 地球のスペースシャトルをヒロイックに仕立て上げたような外観のシャトル船内。

 衣食住に必要な機能も完備されている上に清潔感が漂う空間で快適。

 この手の乗り物にありがちなGや揺れも感じない。

 この分ならあっと言う間に日本橋へ辿り着きそうだ。


「そう言えば他にも宇宙刑事はいるのか?」


 ふとその事が気になったのでシノブは操縦席にいるリリに尋ねた。


「いえ、私一人だけです。応援は呼んでいるのですが……」


「大丈夫か?」


「辺境惑星の管轄外の星でこんな事が起きるなんて想定外でしたから。その分装備は十分与えられてきました」


「ふうーん」


 あの巨大ロボットもその十分な装備の一つなんだなとシノブは思った。


「正直言うと不安です。私一人で大丈夫なのかと。こう言う時、レッカが居てくれれば」


「レッカ?」


「私の相棒になる予定だった人です。地球人で、私とは何もかも正反対の人」


「ふうーん」


 宇宙刑事に地球人がいるとは驚きだったが、リリナもジャマルも普通に日本語を喋っているし、地球の調査は管轄外の惑星であってもそれなりに進んでいるのだろう。

 

「座学はダメで兵器の扱いも下手だけど、それを補ってあまりある程の素質があったから宇宙刑事になれた」


「今はどうしてるんだ?」


 少しを間を置いて、リリナは「分かりません……」とだけ答えた。


「ごめん」


「いえ、宇宙刑事になると言うことは、そう言う覚悟もしなければならないですから」


 日夜、宇宙規模の悪の犯罪組織と戦う命懸けの職業。

 こう言う悲劇もありふれているんだろうなとシノブは思う。

 宇宙船の機内はどこか気まずい空気になったまま、大阪日本橋へと向かった。



 =夕方・日本橋=


 大阪日本橋。

 日本人と外国人が入り乱れる繁華街。

 ゴミや落書き、時折ホームレスと良くも悪くも都会の街である。

 オタク街だからその手の店ばかりかと思えば、カードショップや飲食店なども目立つ。

 オタロードでは日本で今大阪府内で起きている騒ぎなど知った事かと様々な背格好をした女性たちが自分が所属する店の客引きを行っている。


 谷村 亮太郎、藤崎 シノブの行きつけのメイド喫茶、ストレンジはこう言う客引きはしないようだ。

 

「ここが日本橋――なにか普通の街と雰囲気が違いますね」


 キョロキョロと辺りを見回すリリナ。

 白髪、白肌で可愛らしいと来た。

 胸もとても大きくて四肢との対比も良い。

 周囲から嫌が上でも注目を集める容姿だ。通りかかる通行人も思わず二度見する程。

 背格好は短パンにシャツに軽装な上着。

 黒いニーソにスニーカー。

 この街の顔である闇乃 影司のような背格好をしている。 

 容姿も共通点があるので何となく連想してしまう。

 

「まあこの街は特殊だから」


 似たような街で秋葉原を連想するが、あの街は観光街化してオタク街と言うよりファッションオタク街と揶揄されているそうだが行った事ないので実際は分からない。

 今は池袋辺りだとかは聞いた事がある。

 首なしライダーとか、チートなバーテンの兄ちゃんとかで有名なラノベの舞台にもなった場所だ。

  

「あ、シノブ? その人誰?」


 そこで偶然。

 たまたま通りかかったのか、闇乃 影司と遭遇した。

 純白のポニーテール。白い肌。赤い瞳。可愛らしく、そして小動物のような可愛らしい中性的な顔立ち。

 体は童話の世界のお姫様のように華奢。

 黒い上着にホットパンツ、オープンフィンガーグローブにスニーカー。

 グレーのシャツにソックス。

 各種アクセサリー。

 左腕にはスマートウォッチをつけている。

 ファッションに力を入れているらしい。

 そのままファッション雑誌の表紙で掲載されてもおかしくない容姿だ。

 

 大阪日本橋で何でも屋を営んでいて、異世界から帰還した直後に起きたフュチャーテック事件の影の功労者。

 谷村 亮太郎に頼られる程の人物であり、単純な戦闘能力ならシノブと並ぶ、あるいは異世界の仲間達と並ぶレベルの逸材である。

 

「この人はリリナさん。宇宙刑事やってる人」


 シノブは軽くリリナを紹介する。

 宇宙刑事と言う秘密の身分を明かされてリリナは「えっ?」とした表情になる。


「宇宙刑事? ネタで言ってるワケじゃないんだよね?」


「うん本当。巨大メカと呼び寄せてるし宇宙船とか個人保有している」


「凄いね。もし良かったら宇宙船に乗せてもらえるかな? 生身で宇宙に行った事はあるけど、宇宙船がどう言うのか気になる」


 などと顔を照れくさく赤く染めながら言う闇乃 影司。

 闇乃 影司は異性に弱い。

 基本女性に優しい。

 とても日本と言う国を滅ぼそうとした人間には思えなかった。

 

「あ、初めまして。僕は闇乃 影司。この日本橋で何でも屋してます」


「どうも。リリナです—―貴方は信頼できるの?」


「えーと、こう言う時どう言えばいいのか分かるけど、依頼者の守秘義務的とか絶対遵守するよ?」


 闇乃 影司は顔を赤くし、口元を両手で覆い縮こまりながら言う。

 一見頼りなく見えるがこれでも本気を出されたらシノブでも勝てるかどうか分からない相手だ。

 谷村 亮太郎曰く、版権ロボットオールスターゲームに出て来るヤバイ敵のオリジナルロボ枠、それもラスボス、裏ボス、ライバル枠のどれか。

 長期戦に持ち込まれたら間違いなく敗北する。やるなら短期決戦で細胞一つ残さず消し去る。出来るなら因果律レベルで消し去るのがベストらしい。

 

「――藤崎君が信じるなら私も信じる」


「うん—―よろしくね」


 照れくさそうに影司は言葉を返す。


「あ、シノブ。亮太郎が呼んでたよ。今回の事件絡みだよね? 正直、自衛隊絡みの事件には関わらないつもりでいたけど、今回ばかりはそうも言ってられないからね」


 影司も今回の事件を追っていたようだ。

 自衛隊が嫌いなのは過去に受けたらしい人体実験を主導したのが自衛隊だからだろう。

 そんな経験をすればどんな人間でも自衛隊は嫌いになる。

 だが今回の相手は宇宙人でそうも言ってられない。

 闇乃 影司の申し出はありがたかった。 


「ッ!! こんな街中でも仕掛けて来るのか!?」


 シノブの探知に引っかかった。

 リリナも影司もハッとなる。

 街を破壊し、人々を襲いながら宇宙犯罪組織ジャマルが此方に迫ってきた。

 どんな理由かは分からないが自衛隊の駐屯地を全滅させ、街中で破壊の限りを尽くして大量殺人するような連中だ。

 これが奴達にとっての日常なのだろう。


「どれだけ人々を傷つければ気が済むんだ!!」

 

 即座にシノブはライドセイバー1号に変身した。

 黒のライダースーツ。 

 赤いマフラー。

 緑の仮面、グローブ、ブーツ、胸部プロテクター。

 赤く光る双眼。

 白のシンプルな造形の、中央で赤い風車が回るバックルベルトが回る。


「私も!!」


 宇宙刑事リリナは光に包まれ瞬時に純白のヘルメットにコンバットスーツが装着される。

 白い肩アーマー、脚の付け根周辺の動かしやすい装甲配置、リリナの爆乳を包み込む形の胸部プロテクター。

 装着完了までに掛かったプロセス僅か0・05秒に過ぎない。


「えーと、じゃあ僕も!!」


 その場のノリで闇乃 影司も背格好を変える。

 ブール系のカラーリングに白のバックルベルトのライドセイバー。

 歴史の闇に消えた、映画のみに登場したライドセイバー3号。

 ライドセイバーが戦う悪の組織、ゾルゲの計画によって誕生した本来の歴史には存在しない悪のライドセイバー。

 だが改心し、ほんの僅かの短い時間ながら人々のために戦い、歴史を修復するためにその身を犠牲とする。

 闇乃 影司らしいチョイスだ。

細部のデザインまで徹底している。

各部のゾルダーのマークも同じだ。


『おやおや皆さんお揃いで』


そこへふらりと3人目のライドセイバーが現れた。

黒い仮面に赤いグローブにブーツ。

ライドセイバー2号の背格好だ。

中身は黒色のおかっぱ頭で不思議な雰囲気を持つ少年であり、シノブと一緒に世界を救った勇者である。


そして亮太郎の後ろには毒島 リンカがいた。

紫髪のツインテール、つり目で綺麗だが冷たい印象を感じる。

アスリート系の体系で胸が大きい。

黒いミニスカメイド服を着こなし、手にはフィンランド製分隊支援火器、バルメM−78を持っていた。(映画、コマン◯ーのラストバトルでメイトリク◯が使っていた奴)

右の太もものホルスターには相変わらず拳銃を携帯している。

今回は背中に4連装ロケット砲を携背負っていた。


「すでに始まってますね。なるべく人と建造物の被害を抑えてください。後の処理はメイド喫茶ストレンジが持ちますんで、きっちりやっつけちゃってください」


そう言って手に持った分隊支援火器を発砲するリンカ。

発砲に合わせるようにライドセイバー3人はジャマルの大群に向かって駆け出す。

リリナはちょっと出遅れていた。

 

 後に語られる日本の数多くのヒーローサーガ。

日本が核を持たない理由。

その伝説の始まりを告げた。


敵にとって最大の不幸は彼達、ヒーローがこの大阪日本橋にいたことだった。



Side ジャマル


実のところ、ジャマル側は日本橋を襲撃したのはたまたまだった。

正直どこでもよかった。

ジャマルの計画通りに事が進めば地球全土を破壊し尽くす。

この大阪日本橋が破壊されるのもただ順番が前後したにすぎない。


現地住民が戦闘員、ジャマル兵を殴り倒したりしているが許容範囲内だ。

 

 宇宙刑事いたのは僥倖だった。

 新米とは言え、宇宙刑事を倒せば少しは名はあがる。

 ようは暇潰しのようなものだ。


 そんなジャマルの前に現れたのは仮面に黒いスーツを身に纏った、同型のパワードスーツを思わせる背格好の戦士。

 二本のの触覚に双眼、口のようなマウスガード、胸部プロテクター、バックルベルトの中央が赤いファンのようなものがついている。


 それが真正面から音速の壁を突き破って殴りかかって来た。

 先頭にいたジャマル兵が複数体単位で纏めて吹き飛んでいく。


 3体の戦士は双眼を光らせながらジャマル達に飛び掛かった。

 

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