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この世で一番敵に回してはいけない人・その3

  Side 白王寺先輩


 =夜・I市、谷村 亮太郎の家周辺=


 I市。

 琴乃学園からちょっと離れたところにある町。

 最近ローカルヒーローの町起こしなので盛り上がっている。

 ローカルヒーローとは地域などで活躍する、町おこしなどのPR活動をメインにするヒーローのことだ。

 一時期人気だった頃は日本全国のローカルヒーローが集まって一本の映画を作って発表する程の盛り上がりを見せた。(*ちなみにその映画はYO〇TU〇Eで無料で見れます。2015年、ローカルヒーロー、映画などで検索してみてね)


 そんな町に谷村 亮太郎の家があった。


 そこで白王寺は教師と合流する。

 

 教師の鎌田。

 くたびれた感じの眼鏡を掛けたホッソリとした男性教師。

 その正体は、いわゆる汚職教師。

 白王寺の子飼いの部下の一人でもある。

 生徒からの人気はほぼなく、やる気も覇気もない。

 なんのために生きてるのか分からないような人間のようにも感じる。


「本当にやるのか?」


 鎌田が尋ねる。

 藤崎 シノブや谷村 亮太郎の個人情報。

 それを白王寺に明かしたのが鎌田だった。


「やる。上下関係って奴をこの手で叩き込まないと危ないからな」


 と言って件の谷村 亮太郎の家を探す。

 正直場当たり的な計画で亮太郎の妹や姉をどうするかなど具体的な計画は決めてない。

 ただ亮太郎に分かるぐらい恐い目を見せてやればいいと考えた。

  

 最悪父親の権力をチラつかせて黙らせればいいとさえ考えていた。

 須藤 勇也と同じく父親が権力者である。 須藤 正嗣ほどでの巨悪ではないが、ある程度の悪事は揉み消せるのだ。


「しかし変に活気ある町だな」


 白王寺はキョロキョロとした。

 爆乳の女幹部やこれまた爆乳の戦隊ヒロインたちが市民たちとゴミ拾いしていたり、戦隊ブラックみたいな奴が戦闘員二人と一緒に市民たちとパトロールしていた。


(とにかく谷村の友人ですとでも言って連れ出すか)


 などと白王寺は考えて谷村の家を探る。

 そうして辿り着いたのは住宅街の二階建ての一軒家。

 谷村と言う表札がある。

 思ったより中々良いところに住んでいた。

 

「あの~私の家に何かようですか?」


 黒髪のツインテールの女の子。

 まだ中学生らしく可愛らしい小柄で小悪魔的な雰囲気の女の子だ。

 それが困ったような顔色で白王寺と鎌田を見ていた。


「ああ、僕は白王寺。こっちは琴乃学園の鎌田先生。君は谷村 亮太郎君の妹さんかな?」


「はい、谷村 雪穂です—―」


 そう言って一礼した。

 妹は可愛いもんだ。ちょろい。

 心の中でニヤつく白王寺。

 

(さて、どうしてやろうか? ちょっと人気のない所に連れ込んで恐い目に遭わせてやれば――)


 そう思い立ち、早速実行に移そうとした。


「ちょっとお兄さんの事で話があるんだ。時間あるかな?」


「え? 何の話ですか?」


「とにかく一緒に来て。悪いようにはしないからさ」


「え、ちょっと離して下さい!! 誰か!!」


 そこで一人の黒髪のオジさんがやって来た。

 

「これどう言う状況?」


「あ、羽崎さん!!」?


 羽崎と言うらしい。

 この状況を見て極めて冷静な対応を取る。


「なんだよおっさん、突然出てきて。アンタには関係ないだろ」


「その前にその子から手を離したらどうだ?」

  

「そうだぜ!! こいつ突然、雪穂に掴んできて馴れ馴れしいんだよ!!」


「うおっ!?」


 突然水色の綿飴のようなフワフワした水色のマスコットキャラ。

 日曜朝の魔法少女だか何だか分からないジャンルの作品に出て来そうな不思議生物が出てきて動揺して手を離す白王寺。

 咄嗟に庇うようにして羽崎と言うオジさんが立ち塞がる。

 そして徐々に何だなんだと人混みが現れ、谷村の家からは若作りの美人な母親らしき人物が出て来た。


「ちょっとこれ、マズイですよ」


 沈黙を保っていた鎌田はオロオロとしていた。

 心の中で(使えない奴!!)と白王寺は罵倒する。


「やだなぁ。ちょっとしたスキンシップって奴ですよ」


「白王寺先輩――まさか、谷村君が気に入らないからって妹に手を出そうとしたの?」


 琴乃学園に通っていた女生徒が近所に住んでいたらしい。

 マズイと思って白王寺は逃げ出した。

 鎌田はもちろん置いてだ。

 だがそれがいけなかった。

 

『逃げるな!!』


 羽崎に取り押さえられる白王寺。

 それに習って周辺に居た大人達も取り押さえに掛かる。


「離せ、離せよ!! 俺の父親の権力を出せばお前なんてどうにでも出来るんだぞ!?」


「完全に悪党のセリフで、自分が正しいって理解できたよ!!」


 白王寺の強がりなセリフに羽崎はそう返す。

 

「やれやれ、大騒ぎになっているようだね」


「谷村――」


 そこに谷村 亮太郎が現れた。

 隣には白王寺が見知った人間がいる。

 白髪に眼鏡を掛けたスーツ姿のおじさんがいた。

 そのおじさんを見た白王寺は顔を真っ青にさせる。


「お父さん―ー」


 何しろそのおじさんは白王寺の父親だからだ。

 

「君の父親と話をしたら話が分かる人間で助かったよ――」


「あ、ああ……ち、ちち、違うんだ。こ、ここ、これは—―」


 と、亮太郎は言うが白王寺は必死に言い訳しようとした。

 白王寺の父親は亮太郎の母親、そして雪穂の方に向かい、何が起きたかの説明を受ける。

 そして――その場で一礼し、取り押さえられた状態の白王寺の前に立ち、こう言った。

 

「ウチの息子がしでかした事は理解しているつもりです。その上で、ウチの息子を一旦解放してはくれませんか?」


 再び頭を下げる白王寺の父。

 羽崎含めた大人たちは白王寺を解放した。

 白王寺に立つ事もできず、その場で座り込み、自分が破滅したことを何となく理解した様子だった。


「バカをしでかした息子をキチンと叱ってやるがのが父親の務めです」


「お、お父さん!! これは違うんだ!! 何かの間違いだ!!」


「不良とつるんで沢山悪さして、女を泣かせて妊娠までさせた事がか?」


「うぇ!?」


 自分の父親はその事実を知っているようだった。

 亮太郎の仕業かと思う。


「正直信じられなかった。だけど最後まで信じたいとも思っている」


「それなら――」


 父の物言いに息子である白王寺は若干の希望を見出す。

 だが父は続けた。


「だからこそ、真実をハッキリとさせたい!! 一人の親として、父親として!!」

 

 短いながら力強く、ハッキリと熱が籠った熱弁。

 父の息子は気圧される物を感じる。

 こんな父を白王寺は見た事などなかった。

 だが白王寺は—―屑だった。

 世の中を斜めに構えて見て、人の努力や頑張りを笑い、エリートとして過ごして来た人間だ。

 心の中で白王寺は父親を馬鹿にしながら言った。

 

「父親なら息子の言う事を信じなきゃ!! お父さんは皆に騙されてるんだよ!!」


「俺はただ単に谷村 亮太郎に会いに来ただけで、俺も被害者なんだ!! 織姫さんが変な事を言うから騙されただけなんだ」


 などと自分の都合のいい事を並べ立てる。

 白王寺の父親は—―  


「黙れ!! お前が谷村君に何をしようとしたか、警察から既に耳は入ってるわ!!」


「ッ!?」


 日本橋の一件がもう父の耳に届いているらしい。

 人生の破滅が掛かっている白王寺はしつこく食い下がる。


「俺はあいつらを止めようとしたけど言うこと聞かなくて—―あいつら俺に集って来たんだよ!! 脅されていたんだよ!! 本当なんだよ!!」


 と言う。

 そこで助け舟を出したのは意外にも谷村 亮太郎本人だった。


「一旦落ち着きましょう。時間を空けてゆっくりと調査するべきです」


 この提案に場に居た人間が驚いた。


「しかし、君はウチの息子に罪を着せられようとしていたのだろう? それに家族にまで手を出されたかもしれない。それを—―」


 白王寺の父は亮太郎に不思議そうに問いかける。


「だからこそです。それに真実は逃げない。今この場でハッキリとさせる必要はないです。時間を掛けてゆっくりと真実を追求して正当な裁きを下す。そう言う方法もある筈です」


「ふむ――確かに。君の言う言葉も一理ある」


「お母さんも、雪穂もそれでいいね?」


 白王寺の父は理解を示した。

 その流れに沿って亮太郎は母と雪穂に同意を求める。


「お兄ちゃんがそう言うなら—―」


「私も構わないわ」


 それぞれ承諾は得られた。

 この場は解散となった。

 騒動の中心にいた白王寺は心の中で(やったぜ)とガッツポーズする。

 この場を乗り切れば、父親の手は借りられないのが痛いが情報工作の猶予は出来る。

 マスコミやネットの情報を鵜呑みにして過ごすのが現代人だ。琴乃学園の人間も同じ。

 それに琴乃学園には谷村 亮太郎を負け組で居て欲しい、めざわりだと言う人間は一定数いる。

 そう言う悪意がなくても無意識のうちに人を傷つけてでも話題の種にする人間は少なくない。

 そこに付け込む隙がある。


(見てろよ! 最後に勝つのはこの俺だ!)

  

 などと白王寺は悪意を持って亮太郎の地位を失墜させようと考える。

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