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この世で一番敵に回してはいけない人・その2

 Side 白王寺先輩


 =放課後・日本橋=


 白王寺と不良数十人は日本橋に来た。

 西のオタク街。

 学校での外聞を気にする人間なら近づかないよう場所。

 普通の町と比べてゴミが散乱していたり、落書きが多かったり、外国人が目立っている。

 飲食店やカードショップも目につく。

 当然、オタク向けの店も多くある。

 もちろん目当てのメイド喫茶もだ。


 目当ての場所はメイド喫茶ストレンジ。

 そこに押し掛けるつもりだった。

 もしもいなかったら黒川 さとみを連れ出して人質にするなり、脅迫してお楽しみにでもすればいい。


 正直織姫も超S級の美女だとしても、何度も抱いてれば飽きがくる。

 色々と面倒だし上手いこと捨てて乗り換えようと考えた。


「てっえな」


「何処見て歩いてんだ!? ああん!?」


 不良達は我が物顔で歩行者天国と化している道路をど真ん中で行進。

 わざと因縁をつけるようにして当たりに言っている。

 そしてふと、不良の一人が茶髪で背の高くてルックスが良い、野性味を感じる兄ちゃんとぶつかった。

 

「おい、テメェ目ついてるのか?」


「悪い。だけどそっちから――」


 謝罪する兄ちゃん。

 それで気を良くした不良は調子に乗って、


「あ、悪いで済むと思ってるのか? あいたた、骨が折れた。慰謝料払ってくれますか?」


「はあ?」


 などと不良は軽い小芝居をして目の前の兄ちゃんから金を巻き上げようとする。

 付き合いきれんとばかりに兄ちゃんはその場を去っていく。

 

「無視すんなやコラァ!?」


「あっ?」


「生意気だぞテメェ!? ちょっと痛い目見るかああ!?」


「やってみろよ。ナイフか? バットか? 集団でゾロゾロ歩いて男気がまるで感じられねえ奴達だ。一匹狼を押し付けるつもりはないがケンカを売るにしても道理とか筋とかあるだろうが?」


 と、茶髪の兄ちゃんは不良達へ説教する様に言葉を紡ぐ。

 対する不良達は—―笑って返した。


「カッコイイね!! なんの漫画みて練習したんだ!?」


「おい、こいつからやっちまおうか? むかつくし、調子乗ってるし」


「いいねぇ。おい、何処か人通りに少ない場所に案内しろよ。可愛がってやるからよ」


 などと何故か通り掛かった茶髪の兄ちゃんをボコる話の流れになっていた。

 当初の目的を忘れている。

 あまりの頭の悪い展開に白王寺は頭を抱える。

 

「相手する気にもならねえよ」


 後ろを向いてその場から立ち去ろうとする兄ちゃん。

 何を思ったのか、がら空きの後頭部から思いっきりバットで叩く。

 白王寺は(あちゃ~馬鹿がやりやがった)と不良達の気の短さを嘆いた。


「かてぇな……おら、これで正当防衛は成立だろ。来いよ?」

 

 それが不良の最後の言葉となった。


 顔面に拳が埋まるような勢いで兄ちゃんが殴る。

 歯が飛んで、血飛沫が舞って、その場に倒れ込んだ。

 不良達はゾッーとなる。


「痛いな—―いやなに、最近ケンカを売ってくるバカがいなくなって平和ボケしてたらしい――」


「こ、こいつ!? 金属バットで頭殴られて、どうして平気なんだ!?」


 普通の人間は金属バットで後頭部を殴られたらダウンする。

 どんなに強い人間でも普通はそうなる。

 だが目の前の兄ちゃんは普通ではなかった。


「こっちが知りてえよ。昔からこう言う体質なんだよ」


「人数いるんだ!! 数十人掛かりで袋にすれば――」


 そして不良達は無秩序に襲い掛かったが数人が一撃で顔面をぶん殴られてKOした辺りで一旦距離を空けて止まった。

 白王寺は予想外の展開に「嘘だろ……」となった。 

 不良マンガでも見ない展開だ。

 とにかくパンチ力が凄い。

 殴られた人間は一撃で顔面グチャグチャになってピクピクと痙攣している。

 普通の人間が本気で殴ってもこうはならない。

 相手はプロボクサーか何かだろうか。 


「なあ、こいつもしかして工藤 怜治じゃ—―」


「工藤 怜治ってあの—―半グレ潰したとか、893でも対立避けるとかヤバイ奴じゃ……」


 工藤 怜治。

 関西の不良界の頂点に君臨する存在。

 その名が知れ渡っている男だ。

 藤崎 シノブの名が知れ渡る前は須藤 勇也と並んで工藤 怜治の名が上がるぐらい有名だった。


「日本橋で騒ぎが起きてると思ったら――まさか工藤君絡みとはね」


 そこでヒョッコリと黒髪のおかっぱ頭の少年、谷村 亮太郎が顔を出す。

 トラブルに巻き込まれても問題ないのかグイグイと騒動の中心地に向かっていく。


「谷村じゃねえか—―」


 谷村の顔を見て少し落ち着いたのか、意外そうな顔をして亮太郎の名を呼ぶ。

 そこで不良達は「えっ!?」となった。


「こいつが谷村!?」


「てか谷村と工藤って親しい中なのか!?」


「んなこたぁどうでもいい!! まずは谷村をどうにかして—―」


 そう言って不良の一人が亮太郎に襲い掛かる。

 手には鉄パイプを持っていた。

 それを振り下ろそうとする――前に倒れ込んだ。


「眉間狙いのとんでもなく速い拳……そんなに強かったのかお前?」


「まあ色々とあってね」


 怜治は感心する。

 目視では確認困難、とんでもなく速い拳で眉間に一撃を当てて意識を刈り取る。 

 ただその場所を殴るなら怜治でも可能だが、的確に意識を刈り取るとなると難しい。

 相手を傷つけずに無力化する拳。

 平和の拳であり、ある種の暗殺拳と言ってよい。


「そう言えばどうしてこいつら谷村の名まで――もしかしてこいつら谷村狙いなのか?」


「まあそんなところだよ。学校で頂点に君臨している男の子飼いにしている奴の部下。僕を袋たたきにでもするつもりだったんだね」


「成程、だからケンカに首を突っ込んできたのか。それにしてもまぁ、男気のねぇ連中だ」


 二人は不良達に好き放題言う。

 武器を構えて不良達は退くべきか、それとも挑むべきかと考えを働かせる中。

 

「う、うわぁああああああああああああ!?」


 一人の不良がナイフを持って挑みかかった。

 誰もがその凶行を止められず、呆気にとられる中。

 

 激しい銃声が響いた

 

「ウチのお得意様に迷惑を掛けるのなら武力行使に出ます」

 

 紫色のツインテール。

 鋭い瞳。

 近寄り難い刀剣のような雰囲気を身に纏う太ももや胸の谷間丸出しな黒のミニスカメイド。

 太もものホルスターには銃をぶら下げている。

 両手で構えるように近未来的なSF映画に出て来そうな特殊な形状の銃、Pー90を持っていた。

 

「毒島か――その銃大丈夫か?」


 銃を持っての登場に呆れた様子の怜治。

 毒島 リンカ。メイド喫茶ストレンジの店員であり、店長代理でもある。


「上からの許可は色々もらってます。谷村様、今回の騒動は前回のお礼の一環として揉み消すんで好きに暴れてください」


「その言葉に嘘はないね?」


「モチのロンです」


 そう言って亮太郎は反撃に転じた。

 毒島も逃げようとする不良をヘッドショットを決めて無力化する。

 工藤 怜治は傍観モード、彼が手を出さずとも谷村 亮太郎はまるでプロの殺し屋のように的確に拳を刈り取っていく。

 そして毒島 リンカは的確な射撃で逃げる不良を後ろから撃つ。


「ここは日本橋です。普通の町ではありません」


「ヒッ!?」


 毒島 リンカは最後の一人の足を撃って転がし、腹を踏みつけて顔面に至近距離から射撃した。


「皆お疲れ様です! ギャラリーの皆様、これは撮影の一環なので出来れば内密に、SNSとかで拡散しないようにお願いします」


 最後に谷村 亮太郎が周囲に一礼して終わった。

 ギャラリーはパチパチと拍手する。

 怜治は「なんだこりゃ?」と谷村に尋ねるが、谷村は「魔法だよ」と返した。

 リンカは一礼して「証拠隠滅のご協力ありがとうございます」と頭を下げた。



「なっなっ……何が起きた――」


 途中から呆気に取られて言葉を失っていた白王寺。

 まるで不良達がコミックの悪党の様な扱いで全滅した。

 それを見届けて白王寺は逃げた。


(と言うか谷村も十分化け物じゃないか!?)


 藤崎 シノブは不良五十人組み手が出来るほどの化け物だと聞いていた。

 だが谷村 亮太郎も負けず劣らずの化け物だ。暗殺拳の使い手か何かに見えた。

 しかも工藤 怜治や何故か銃火器で武装している法律違反のやばいメイドと仲が良さげ。

 最悪そいつらまで敵に回さないといけない。

 

(どうしてこんな奴が普通に学園通ってるんだよ!?)


 このままではどんな報復されるか分かった物ではない。 

 父親に相談して権力で対処するか。

 もしくは他に何かの方法で—―と、頭を働かせる白王寺。

 

「そうだ! アイツの家族だ!」


 谷村 亮太郎の家族を狙う事を思い立つ白王寺。

 それがどのような末路を意味するのか知らずに「これなら上手く行く」と白王寺は自分を勇気づけた。


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