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様々な反応

 今、ネット上では大阪日本橋で起きた事件で話題は持ち切りだった。

 一度目は民間人が女性を悪漢から助け出した動画。

 二度目は前日と同じ民間人が悪漢の仲間達に取り囲まれるも返り討ちにするシーン。


 人間は全員が全員、悪人で構成されているわけではない。 

 うつろ正義なんて言葉は何の役に立たないと思い知らされながら生きている人間は大勢いる。

 この世の中を善意だけでは変えられないことを知る人間は山程いる。

 

 悪意がある人間は少年の行為を無謀だ、偽善だと言い、報復に遭った時ですらヤラセだ、自業自得だと言う。

 そう言う心が卑しい人間は残念ながら一定数居るのがネット社会の怖いところだ。


 だがそんな悪意など知った事か言う勢いでこのヒーローは何者だと言う意見が出て来た。

 琴乃学園の藤崎 シノブと言う生徒である事が分かった。

 一つ目の動画で誘拐されそうになった生徒は同級生の女の子。

 どうやら不良高校のとある人物に狙われているらしい。

 

 続いてその不良高校はなんだ?

 黒幕は何者だと世間は関心を集めた。

 

 そんなところで新たな爆弾が投下された。

 サカキ高校で爆発事件。

 SNSではサカキ高校の敷地内と思われる画像が大量にUPされる。

 銃火器が保管されていて、麻薬をも貯蔵、さらには製造していたらしい事が発覚。


 結果、ネット上で大炎上した。

 さらには暗い体育倉庫らしき場所で半裸や裸の男達の画像も晒され、婦女暴行の容疑で逮捕され、警察や教師までやっていたと言う事実が更なる大惨事まで起きていた。


 そしてサカキ高校の悪名は全国ネットで明かされた。

 もうこの辺りになると誰がサカキ高校で爆発を引き起こしたと言うのは興味の範囲外だ。

 

 警察もマスコミも動いている。

 緊急特番も組まれている程だった。

 


 サカキ高校の事件を語るスレ


 名無しの604


 次から次へと燃料が投下されてきてもう意味が分からん。


 名無しの607


 何か大きな権力が動いているのを疑うレベルの大惨事。


 名無しの610


 サカキ高校もう廃校した方がいいだろう。


 名無しの613


 それにしても一体誰があの画像撮影したんだ?


 名無しの625


 公安とか警察の特殊部隊とかじゃね?

 

 名無しの635

  

 この事件の前にサカキ高校のボスの上級国民の口座が親の裏金含めて盗まれたらしいしね。


 名無しの643


 実行者は控えめに言ってイカれてる。

 国家権力とかそう言うの怖くないのか。

 一連の事件の実行者は国会議事堂にタンクローリーで突っ込んで自爆テロを引き起こすレベルの所業してる。


 名無しの657


 もはやGの13の狙撃手とかXYZの掃除屋の存在を疑うレベル。


 名無しの698


 なんつーかこう、一連の騒動に現実感って奴がない。

 本当にこれ現実で起きた事件なのってレベル。

 

 名無しの718


 警察も本気モードになって捜査開始してるけど、何か違う巨大な権力が動いてるっぽい。 

 さらに言うなら一連の騒動を行った人間の証拠らしい証拠が今のところ出てこない。

 

 名無しの726


 それよか須藤 勇也とか言う吐き気を催す邪悪なレベルの奴がいるのってヤバイ。


 名無しの821


 須藤 勇也もヤバいけど父親の須藤 正嗣もヤバイ。

 日本の警察は腐敗してると思ったけどここまでのレべルとは思わなかった。



 Side 黒川 さとみ


 =昼・メイド喫茶ストレンジ・スタッフルーム=


 メイド喫茶ストレンジのスタッフルームのソファでくつろぐさとみ。

 店は臨時休業するつもりで毒島 リンカがメイド服姿で紫色のツインテールを揺らしながら手に銃器を持って身辺警護に当たっている。


「うわ~凄い事になってる」 


 SNSの大炎上を知った。

 あの二人の仕業だろう。

 もう命惜しくないのかって言うレベルで派手にやってる。

 不謹慎ではあるのかもしれないが、さとみは「よくやった!!」と賛辞を送りたい気分だった。

 

 そして理解した。

 須藤 勇也はケンカを売ってはいけない奴にケンカを売ってしまったのだと。  

 

「なんか凄い解放感感じる――夢みたい――」


 独り言を言うさとみ。

 本当にそんな気分なのだ。

 


 Side 須藤 勇也


 =昼・須藤 勇也の自宅、部屋にて=


 真っ白に整理整頓された部屋。

 キングサイズのベッドが置かれていて複数人の女と楽しんでいたが、今は部屋の隅で縮こまっている。


「ふざけんな!? 次から次へと何が起きてんだよ!?」


 苛立ちをぶつけるように叫ぶ。

 殺し屋を雇っていた事が漏れた上にしくじった。

 銀行口座が何者かにゼロにされた。念のために用意した違う口座もやられている。

 サカキ高校の手下は全員返り討ちし、指示を飛ばした事もばれた。

 そして現在サカキ高校はネットで大炎上、警察が踏み込み、麻薬や銃の保管、さらには麻薬栽培までばれた。

 さらにはSNSで親が天下り先の会社と繋がりがあったり、悪事を揉み消したこともばらされている。


(俺は上級国民だぞ!? そこらの人間とは違うんだ!? 他の連中とは何もかもが違うんだぞ!?)


 もう暴れないと正気でいられない。

 そんな精神状態まで追い込まれていた。

 袋叩きにされるだけならまだいい。

 須藤 勇也は人様に恨みを買って王様気分で生きて来た。

 

(まさかあの野郎が――)


 ふと藤崎 シノブの事が脳裏をよぎる。

 あの野郎――藤崎 シノブがやったのではないか?

 理屈ではなく、本能でそう決定づけた。

 

(そうだ!! そうに違いない!! 殺してやる!! ここまでコケにしやがったアイツだけは殺してやる!!)

 

 部屋をあらかた破壊し終えて、一人須藤 勇也は考える。



 Side 中妻


 =府内某所のカラオケ店にて=


 友達とのカラオケ店にて。

 ワンルーム借りて、そこで事態を知り、中妻やその仲間達は一気に顔を蒼褪めさせた。

 あの藤崎 シノブと言う奴はある種の化け物だったらしい。

 それにも驚いたが、自分達の金蔓、後ろ盾の須藤 勇也や半グレ組織のことだ。


(私達は関係ない……関係ないよね? まさかこんな事になるなんて……)


 関係ないと言い訳しても通用しないときは通用しない。

 それを何となく理解している中妻はこれからどうするか悩む。

 少なくともカラオケを楽しむ気分ではなかった。

 今迄好き放題してきたが、報復されるかもしれないと思って怖くなった。

 所詮は闇の浅いところにいる小悪党でしかなかった。    



 Side 須藤 正嗣


 =昼・フュチャーテック株式会社の極秘実験エリア=


 SNSは大混乱だった。

 愛する息子が矢面に立たされようとは。

 困ったものだった。

 

 今須藤 正嗣がいるのは極秘実験エリア。

 昭和の悪の組織の研究施設を今風に再現すればこんな感じになるのではないかと職員は冗談で口をしていた。

 やっている実験内容も昭和の悪の組織その物の内容だ。

 この実験には様々な人間が関与している。


(人間なんて熱して冷める者だ。暫くすれば沈静化できる。それにまだ切り札は幾つもある)


 須藤 正嗣は様々な弱味や賄賂のネタを隠し持っていた。

 それに楽観視している。

 人間と言うのは一カ月もすればどんな事件も「ああ、そんなこともあったね」と言って日常を過ごす人間なのだ。

 

 落ち着いた頃に返り咲けばいい。

 問題があるとすれば――


(殺し屋を退けた少年――藤崎 シノブがどうこの一連の騒動に関わっているか) 

 

 超人的な身体能力を持っているが所詮は高校生だ。

 出来る事には限度がある。


(何かしらのバックが付いているか――あるいは――)


 何かしらの組織がバックについているかもしれない。

 そう考えた方が自然にも感じた。

 

(邪魔な存在だが、興味はある)


 相手が何にせよ、新たなカードに加えられるかもしれない。

 大阪日本橋で何でも屋している日本政府の元実験体、闇乃 影司をダシに脅迫する形で金をせしめていた。

 国民の身の安全より自分達の身の安全を優先する政治、官僚はなんと多い事か。

 なにしろ闇乃 影司に復讐されても仕方ないぐらいの所業を政府はしている。

 復讐される前に実力で排除したい、闇に葬りたいと考えるのは自然な流れだ。

 

 だがそれだけでは足りない。

 本当に闇乃 影司を抹殺しなければならなくなった時、大国との駆け引きをしなければならなくなった時、手持ちの異能では足りない。

 

 新たな異能かどうかは分からないが、藤崎 シノブは自分の持ち手のカードに加える価値はあるかどうか見極めなければならない。

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