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潜入

 Side 藤崎 シノブ


 =昼・大阪府内、都市部、殺し屋の自宅のアパート=


 殺し屋は現金後払いで闇乃 影司に預かってもらった。

 闇乃 影司は事情を説明したら応じてくれて、親切な性格なのか「僕にも手伝えることはない?」と可愛らしく、それでいて心配そうな顔で申し出てくれた。

 谷村 亮太郎が言うには闇乃 影司は政府の極秘施設を完全に壊滅させている前科があるようだが、外見だけ見ればとてもそうには見えなかった。


 ただ鑑定魔法は影司にも感覚的に探知できたようであり、何よりも鑑定魔法の結果が本当なら本気で戦ったらお互いタダでは済まない、間違いなくどちらかが死ぬ、決着がつく頃には日本橋は焦土と化すと思われる。


地球怖い。

本当は人外魔境だった地球にシノブは恐怖する。


気を取り直してシノブは殺し屋の家を見渡す。

防犯システムは全て亮太郎の手で解除されたが、「殺し屋の住まいだけあって厳重だった」らしい。

部屋の中も私物の類はなかった。

何かあった場合、すぐに住まいを変えられるようにするためだろう。

殺人をビジネスにしている人らしい部屋だ。


やってる事は不法侵入だが、お金を貰って人を殺そうとした人間相手に法律云々を持ち出すほど、シノブも亮太郎も聖人ではなかった。


「さーて何があるかなー」


などとルンルン気分で亮太郎は須藤親子の脅迫ネタが詰まってるらしい金庫を開ける。



殺し屋が集めた脅迫ネタは多数。

繋がりがある警察関係者のリスト。

過去に殺した人間のリスト。

口座のリストに暗証番号。

サカキ高校の薬物の場所なども書かれていた。

他にも色々とある。


殺し屋本人も言っていたが、本当に爆弾だらけだった。


それを一通り確かめたあと、全ての脅迫ネタをアイテムボックスに放り込んでその場を後にする。



=昼・大阪都市部のカフェにて=


銀行強盗やるわけにもいかず、変装魔法や暗示魔法で堂々と須藤の口座から現金を全て手に入れた。隠し口座や裏金もある。

それはもう目が飛び出そうな程のとんでもない額だった。


その裏金を元手に準備をはじめる。

目出し帽や、タクティカルベストなどのミリタリー系の装備一式を揃え、電動ガンの機関銃にアサルトライフル、拳銃、玩具のロケット砲を渡してくる。


「衣装は認識阻害、電動ガンの方には催眠付与の魔法をかけてある。ロケット砲は低位の爆発付与だ。やり取りは念話で行おう」


「これからどちらに? サカキ高校ですか?」


 自分達はこれから銀行強盗をしに行くのか、それともサカキ高校に行くのか不安になってきたので、シノブは念のために亮太郎へ事実確認をする。


「ああ。サカキ高校を襲撃する」



=昼・サカキ高校=


サクッと準備し、サカキ高校に向かう。

学校をグルっと囲む、落書きだらけの刑務所のような高い壁を飛び越えて二手に別れて突入。

 シノブはサカキ高校内部にある麻薬の処理などを担当。

 亮太郎は校内で須藤の脅迫ネタの探索だ。


 サカキ高校の敷地内はゴミが散乱している。コンビニの袋やタバコや酒の吸い殻

 酷いものになると使用済みのコンドームすら見つかる。

 本当にここは日本なのかと思ってしまう有様だ。

 清掃したくても問題が外部へ芋づる式に発覚するのを恐れてできないのだろう。


(こう言うのは谷村さんの独壇場だけど、今回ぐらいはね)


 異世界ではこう言うのは専ら亮太郎の担当だった。

 だから現実世界で魔法の力による恩恵があるとはいえ不安があった。

 しかし拍子抜けするように奥深く、目標の体育倉庫と思われる場所に近づけた。

 倉庫前には見張りが一人いて暇そうにタバコを片手にスマホをいじっている。

 探知魔法で倉庫内を探索。

 内部に複数の反応がある。


(こちらベータ。目標に到達。理事長室のパソコンや金庫を探っている)

 

 念話で亮太郎から状況が届く。

 ベータと言うのは前もって決めた念話でのやり取りの暗号のようなものだ。

 異世界では念話が盗聴される可能性があったがここは現実世界で魔術的な気配もない不良高校。

 念話を使い放題と言うわけだ。 

 だったら違う呼び名で呼び合う必要ないのではと思うがそこは雰囲気と言う奴である。


(賄賂や盗聴記録、人体実験のための人員確保――どうやら相当ヤバイところにサカキ高校は鼻が利くらしい)


(人体実験ですか。どこで?)


(毒島さんの話にも出てたフーチャーテック株式会社らしい。資料を見た感じ不良校の校長にしては知り過ぎているな。恐らくあの殺し屋同様に互いに信頼していなくて、脅迫のネタを探していたんだろう)


(正直現実味がない感じがしますね)


(まあ日本政府も人体実験してた前科があるしね。諦めきれずに計画を続行してたとしても驚かないよ)


 日本政府も腐っているとは思っていたが洒落にならないレベルだったようだ。

 テレビやネットで出ている不祥事は氷山の一角だったかとシノブは思う。

 

(さて、そろそろ体育倉庫に侵入します)


(分かった。気を付けて)


 先ずは体育倉庫前の見張りを拳銃のガスガンを使って眠らせる。

 催眠の属性付与魔法は正常に働いているらしい。


(次はこうしてと――)


 そして体育倉庫の頑丈そうなドアの真下にある隙間から催眠魔法のガスを流し込んだ。

その後、ちょっと時間を置いてドアを開ける。

 そしてシノブが中で見たものとは――

 

(うわ~これ異世界行ってなかったら発狂してたかもな……)


(どうしたアルファ?)


(山賊のアジトとかでよくある奴。いわゆるお楽しみ中だったと言う奴です。警察官やたぶん教師も混じっている。女性も複数人確認できた)


 まるで日本の闇を凝縮したような光景だ。

 いっそサカキ高校を爆破しようかなと思いもしたが、潰しが効かない犯罪者予備軍を世間に解き放つようなものだ。

 そこはグッと堪える。


(誰かのスマホを拝借してネットにアップロードするかどうかは判断に任せる)


(分かりました)


 手短なスマホを拝借。 

 開錠魔法でパスワードを解除。

 適当にスマホで写真を撮り、体育倉庫の様子を撮影する。

 乱交現場をSNSでUPする事もシノブは考えたが被害者の身元も特定されてさらなる苦悩に苦しめられる可能性があるのでやめておいた。

また昨今だとパパ活の可能性も捨てきれない。


(ここは慎重に行こう。まずは任務を優先して……)


 一先ず探知魔法と鑑定魔法を使い、やっぱりあった麻薬と銃を発見。

 それをSNSにアップロードする。

 正直SNSにアップロードしたところでどれだけの効果があるか分からない。 

 SNSで助けを求めても無視されるのが関の山なイメージがあるが、やらないよりかはマシだと考えた。


 そして体育倉庫の撮影を終えて、どうするか悩み、谷村 亮太郎に相談する。


(こちらベータ。今ビニールハウスの中にいる。どうやらここで麻薬の栽培をしていたようだね)


(こちらアルファ。被害者女性をどうするか悩んでます)


一先ず女性を全員被害者女性としてひっくるめて対応した。


(被害者女性はどうしている?)


(眠っています)


(リスクはあるが起こして、暗示魔法を使って脱出させよう。それと加害者のスマホは全て没収してアイテムボックスに放り込んでおいて)


(了解)


 言われた通りに、手順通り魔法の眠りから起こして暗示魔法をかけて身支度させる。


そこでふと暗示が掛かっている被害者女性にパパ活なのか脅されてやったのかと尋ねた。

生々しい過程を語られ、全員が脅されていたらしい。


その事実にホッとしたシノブは正門から脱出させる。

 同時に火災のベルが作動。

 つづいて爆発音。

爆発音の方に視線をやると黒いキノコ雲が上がっている。


(こちらアルファ。ベータ、何をしたんですか?)


(警察を無理やりにでも介入させるために爆発を起こした。見かけは派手なだけで威力は低い。麻薬を栽培していたビニールハウス近辺で起こした)


(なるほど。じゃあ自分も体育倉庫付近で爆発を起こします)


(了解。現場は残しておきなよ)


(こちらアルファ、了解。幸運を)


 そして二度目の爆発が起きる。

 爆発エフィクトが派手なだけで威力は大したことはない。

 だがこれで警察は介入できる。

 すると警察車両のサイレンの音がもう耳に届く。

 

(こちらアルファ。警察が来た)


(こちらベータ。僕も確認した。不良校で犯罪者予備軍の学園だからね。交代で網を張っていたんだろう。目標は達成した。スグに撤収するんだ)


(了解)


 二人は学園から撤収する。

 後に日本を大震撼させる事件の始まりでもあった。 

 

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