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ハンドレッド編その21・その後

 Side 赤霧 キョウマ


 =翌日・某所、独房=


 結局のところ、自分は何処で、何を間違えたのだろう。

 自分はただひたすらに自分らしくあろうと、輝かしい未来のために全てを犠牲にした。

 その結果、人間として裁かれる日を待つ事になった。

 

 赤霧 キョウマでも分かる。

 もう少年法どうこうが適応されて社会復帰できる可能性はないと。

 あまりにも大勢の人間を犠牲にして来た。

 あの世に地獄があったら間違いなく地獄行きだろう。

 

(俺、どうなるんだ……)


 赤霧 キョウマはもう普通の人間の力しかない。

 アイツらに何をされたのか分からないが未来も見えなかった。

 時折、恐怖と言う妄想をし、精神がジワジワと擦り減らされていく。

 ずっとこれが続いていくのだ。

 あの時、死んでればよかったと後悔しながらもずっと、ずっと。



 Side 藤崎 シノブ


 =翌日・琴乃学園=


 事件規模が事件規模だ。

 ネットは大騒ぎだ。

 マスコミもそうだ。

 だが幾らか情報統制はされているようで、朝目覚めたらマスコミ達が詰めかけて来るなんて言う事にはならなかった。

  

 これに対して日本政府はダンマリだ。

 まるで無かった事のように扱っている。


〇ああ、また徹夜が決定。


〇今度は自衛隊の馬鹿どもがやらかしやがったのか!?


〇どいつもこいつも、世間で騒がれなけりゃ何してもいいと思ってんだろ!?


〇国家権力舐めんな!! 末代まで祟ってやる!!


〇空港や港を全て網を張って二度と国外から出られない様にしてやらぁ!!


〇採算度外視した政府の恐ろしさを思い知るがいい!!


 それでもダメージはゼロではなく、行政の人間らしき怨嗟の声がネットの彼方此方に書き込まれている。

 また数日徹夜で仕事場が自宅コースなのだろう。

 異世界でも客寄せパンダよろしく、勇者として色々と活動したりもしたが、この世界でもそう言う活動して彼達を手助けする活動とかしてもいいかもしれないと思い始めていた。


「で? どうして俺達ネクプラバトルしてんの?」


スマホを操作しつつ、シノブは隣にいる亮太郎へ疑問を口にする。


「いや~ネクプラバトルブームとかもあるんだけどね。すっかりクラスのヒーローだね僕達」


「はあ」


 スマホで操作するネクプラバトルオンラインがすっかりクラスの交流ツールと化していた。

 以前よりもクラスの輪の広がりを感じる。

 何ならクラス外にも広がりを感じていた。

 ハンドレッドとの一連の騒動でライドセイバーに変身し、過酷な戦いをともに乗り越えた事が団結に繋がったようだ。


「だけどまあ愛坂先生含めて俺達罰則だし、恨み言の一つや二つ覚悟してたんだけど」


「まあね」


 クラス全体の連帯責任として、愛坂 メグミ先生含めて無料奉仕活動に反省文。

 それと体育祭の運営準備も手伝う事になった。

 これはもう仕方の無い事だ。

 受け入れるしかない。 

 部活動に所属している生徒は参加禁止とかになってないだけマシである。

 

「でもまあいい事もありますね」


「うん。クラスメイトとこうして仲良くなれたしね」


 あの悪夢のような馬鹿騒ぎでクラスメイトと仲良くなれた。 

 それを考えるとまあ、悪い気分はしなかった。

 厄介者扱いされるよりかはマシである。



Side 前嶋刑事


 =翌日・警察署内=


 前嶋刑事は罰則を受けたが、事件規模のアレコレとか考えたら奇跡のような処罰である。

 文句は言わなかった。

 ガーディアンズと交渉して赤霧 キョウマを逮捕出来た。

 あの自衛隊駐屯地の関係者も何人か引っ張られた。

 流石に宇宙人を逮捕は出来なかったが、逮捕したら逮捕したらで大騒ぎになるので北川 舞が言うようにガーディアンズに引き渡して正解だったのだろう。


(しかし未来予知か……)


 赤霧 キョウマはいわゆる未来予知能力を持っていたらしい。

 ある程度の段階まで上手く立ち回り、ハンドレッドの勢力を拡大できたのはその能力の御陰もあるようだ。

 だが万能な力ではないらしい。


(未来は分かっても結末は変えられない時はあるか……)


 推測もあるが、自分にとって都合のいい未来を変える能力とかではなく、あくまで未来を予知する能力でしかなかったのだ。

 その未来予知に逆らい、最悪の選択をし続けた結果が昨日の結末だとしたら色々と納得がいく。


(それでも黙っていた方がいいな……)


 だがそれでも危険な能力である事は変わりない。

 今の日本政府は信用できないと言うのもあるし、悪用する人間は大勢いるだろう。 

 だから前嶋刑事はその能力については何も知らなかったで通す事にした。


(さて、始末書の続きを書くか)


 職務に復帰するために始末書に集中する前嶋刑事。

 あの大事件で警察官としての誇りを取り戻せた気がした。


(ミツルの奴はどうしてるかな)


 ふとミツルの事を思い出す。

 今頃自分の上司に大目玉でも食らってんだろうか。

 心配になって来た前嶋刑事であるが、今度こそ始末書への作業へと戻った。



 Side 工藤 怜治


 =翌日・大阪日本橋=


アレだけ暴れ倒して罰則も緩いのが奇跡みたいだ。学校ではヒーロー扱いで逆に居心地が悪かった。

 

 放課後に自然と日本橋へと足を運んでいた。

 文字通りの戦場になっていた筈だが、人で賑わっていた。

 マスコミやら動画配信者らしき姿もある。

 外国人の姿も相変わらず多いが、海外からのジャーナリストらしき人も見受けられる。


(この街こんだけタフだったのか?)

 

 宇宙犯罪組織ジャマルの時も、少女A事件の時もこんな感じだった。

 とにかくこの街は打たれ強い。

 それでも限度はるだろうと頭を抱える。


「あっ、工藤 怜治だ!!」


「ちょっとお話を聞かせてもらえませんか!?」


(え?)



 足は藤波 リカのたこ焼き屋に辿り着いた。

 昨日アレだけ暴れたと言うのに、今日も元気にたこ焼きを焼いている。

 外では工藤 怜治を目当ての野次馬がいた。

 

「一応言うとくけど、ウチの取材もあったんやで? 暫くはこの調子やろうな」


 何時もの調子で藤波 リカは漫画に出て来るエセ関西弁口調で話す。

 ちなみに本物の関西人は標準語にちょっと関西弁が多少混じるぐらいの感じの話し方である。


「まるで芸能人にでもなった気分だ」


「実際あんだけ暴れ回ったら有名になるやろ」


 そう言われて「それもそか」と怜治はカウンター席に座る。

 そしてグッタリとハァとカウンター席に倒れ込んだ。


「本当にお疲れさん」


「別の意味でも疲れてる。正直自分の体がここまでタフだった事に驚いてるよ」


「何かスポーツやりーや」


 何かスポーツでもやればいいと言うのは幼い頃から耳にタコが出来るぐらいに聞かされてきた。

 うっとおしい時期もあったが、最近は将来を考えてくれての事だろうと思うようになった。

 それに世の中と言うのは不公平で才能のある無しとかもある。

 スポーツも真剣に頑張ってる人間からすれば自分の様な生き方はある意味失礼なんだろうと怜治は罪悪感を感じている。

 

 それでも怜治は「気が向いたらな」と返してカウンター席に座る。

 もしもまた自分の拳で誰かが、大切な人が危ない目に遭っていたら助けてしまう人種なのだ。

 スポーツの才能はあるのだろうが、運とかツキとか、そう言うのには縁はなかったんだろうと思う。


「何かSNSで日本橋のチャリティ代わりに金を落としていこうって言う呼びかけがあってやな。寄付しても、ちゃんと金が使われてるか疑わなあかん世の中やし、変に募金呼び掛けるよりも経済回した方がええ場合もあるんよ」


 得意げにたこ焼きを焼きながらリカは解説する。

 誰かに話したかったみたいな話の弾み方だ。

 暫くはそれで色んな人間と話題で盛り上がるのだろう。

 

「へーそんな事になってんのか」


 世の中意外とお人好しが多いらしい。

 どうしようもない人間ばかり相手にしてしまっているせいか、その事実で驚いてしまう。


「それと聖地巡礼って奴やな。事件現場に野次馬に来たりとか、ヒーローとかに出会うためにここに訪れとるんやと」


「ヒーローね……あ、たこ焼き十個で」


「あいよ!」


(他の連中はどうしてっかな)


 流石にアレだけの大騒ぎだったので、打ち上げ会の誘いとかはまだ無い。

 上の方は色々とまだ大変なのだろう。

 

☆ 

 

 Side 宇藤 タツヤ


 =昼・日本橋の病院=


(危うく死にかけたけど、生き残っちまったな)


 ジャマルの事件や少女A事件、今度はハンドレッド事件とでも名付けられるのだろうか、あの大事件でよく生き延びていたなと思う。

 間近で経験したから分かるが、間違いなく死者は出ているだろう。

 それはもう仕方の無い事だ。

 真面目な警官か、公安か、自衛官か、ガーディアンズの隊員か、一般市民か、敵側のどうしようもないロクデナシどもか——自分みたいな殺し屋が生き残ってしまった。 

 

(……運だよな)


 運が良かった。

 ただそれだけだった。 

 何時の間にか顔の知らない誰かに黙祷を捧げている。

 

(暫くは揉め事とは縁のない場所に行こう)


 殺し屋を始めてしまった以上、ゲームの様にはいそうですかと簡単には辞められない。

 殺し屋を含めた裏社会の人間と言うのはそう言う物だ。

 殺したい奴をどうしても殺したいから殺し屋になって、殺し屋や裏社会の宿命のような奴を受け入れた。

 

 それでも今はただ虚しさがある。

 ちょっと旅行にでも出かけようかなと心に決めた。



 Side 長谷川 千歳


 =昼・日本橋近辺にあるオフィス=


 長谷川 千歳。

 スーツ姿で現在徹夜しながらアレコレとビジネスを展開していた。

 ヤケクソ気味にエナジードリンクをかっ食らって、タブレットにメモを取りながら思い付き先に連絡を入れている。


 世の中金が全てではないが、金は重要であり、先進国で法治国家の日本で生きていくためには必須なのだ。

 一体どのような条件で恐怖の大王が復活するか分からないが、侵略者達は日本橋を更地に変えてからじっくり探し出せばいいやと考えている。

 そもそもどうしてそんな話を宇宙犯罪組織やら異次元の帝国やら異世界の勢力やらが知ってるのかが気になるが、恐怖の大王を手中に収めた程度で日本への侵攻を辞めるだろうか?


 どっかの大国みたいに、突然侵略戦争仕掛け、自分の国が没落しても、ありとあらゆる手段で戦闘続行する国が地球上に存在するのだ。

 

 異世界や宇宙、異次元とやらもそう言う馬鹿が居ないとは限らない。

 昭和のロボットアニメやヒーロー物とかじゃあるまいし、世界征服を目論む悪の科学者よりも善意で人や世界を滅ぼそうとする悪が創作界隈のメジャーだと言うのに。

 いっそ清々しい程のストレートで逆に新鮮かもしれない。


(自分にもシノブや亮太郎みたいな力があれば話は違うのかな……)

 

 自分は札束で人を殴る事は出来るが、それ意外はからっきしだ。

 いっそアークゾネスやデビルベアー団に頼んで羽崎 トウマみたいに人体改造でもしてもうおうかなどと考える時がある。

 そう言う荒事の担当はもっぱら佐伯 美津子の仕事だ。

 その佐伯 美津子は現在ベッドの上で気持ちよく睡眠中である。

 

(何か自分、善人になってきてる。アレかな? 今迄金を荒稼ぎして好き放題していた罰でも当たったのかな)


 だがその倫理なら金持ちは全員罪人になってしまう。

 金持ちは悪だと言う奴はいるし、気持ちは分らなくもないが、金持ちがいなければ貨幣経済は成り立たないのだ。

 そんな当たり前の事も分からない人間はとても多い。

 金持ちを羨ましがる人間は多いが、金持ちは金持ちで苦労は多いのだ。

 税金だの、確定申告だの、色々だ。

 

(……何だかんだでこの街とあいつらが好きになってんだな、俺)


 あのトラブル塗れのオタク街とそこに住まう、関わる住民達。

 友人とは何なのかと言われて戸惑う時はあるが、上手く言い現わせない心の繋がりの様な物は感じている。

 それは何時しか全財産を犠牲にしてでも守りたいものになっていた。


  

Side 北川 舞


 =昼・琴乃学園近くにあるセーフハウスにて=


(アルティアスレオナ、火野 エイコは日本橋の店で勤務中。

 ファイターレッド、桜井 あきらはライドセイバーZの力で元の世界への帰還が目途につくもこの世界に駐留。

 スターセイバー、キャロル・アイビリーブは桜井 あきらに付き合う形でこの世界に駐留。

 宇宙刑事リリナ、宇宙刑事レッカもこの星に暫く駐留か) 


 重要事項を徹夜中の頭の中で整理しつつ事後処理に励む北川 舞。

 ここは広い庭付きのセーフハウス。

 自分のオフィスとして機能する部屋で一人整理していた。


 今回の事件で——事実上、地球に生きる人間に逃げ場はない事が分かった。

 宇宙にも逃げられない。

 日本政府の頼みの綱だった異世界にも逃げ場はない。

 

 生き延びる道はただ一つ。

 戦って活路を開く事のみだ。

 そのためには藤崎 シノブや谷村 亮太郎にはまだ戦ってもわらなければならない。

  

 だがガーディアンズの仕事はそれだけではない。

 また不穏な情報を色々と察知している。

 心が挫けそうな時はあるが、戦わねばならない。

 

 それがガーディアンズのエージェントとして生きる事を決め者の宿命だからだ。



 Side ヘレン・P・レイヤー、プレラーティ博士


 =メイド喫茶ストレンジ・星見の間=

 

 真っ白い空間の中。

 白のテーブル席でプレラーティ博士とヘレン・P・レイヤーがアンティーク調の椅子に座って対面していた。

 メイドの毒島 リンカが紅茶を入れている。

 

「まあ、今回の騒動は演習程度にはなっただろう」


 と、まるで悪党のような物言いをするプレラーティ。

 

「そうね。この程度で死ぬなら、それまでだと言う割り切りも必要なんだろうけど、だけどそう言うのには限度があると思うの」


 此方も似たような物言いだが、優しさが垣間見える。


「……アンゴルモアの復活はあと、どのぐらいだ?」


「想像以上に速いペースよ。どんなに引き延ばせても来年には復活するんじゃない?」

   

 銀河連邦の艦隊を潰し、数々の星を死の星へと変えた恐怖の大王、アンゴルモア。

 今の地球の戦力で勝てるのかは分からない。

 だが負ければその時点で滅亡だ。

 

「昨日の事件だってアンゴルモアの干渉で、あそこまで事態が大事になった可能性も少なからずあるわ。まあ他の外的要因や日本橋、この世界の特性も考えられるけどね」


(他に何かヤバイ奴がいるのか?)


 勘繰るプレラーティ。

 そう言うヤバイ奴には色々と心当たりはある。

 藤崎 シノブが異世界ユグドの仲間達と一緒に戦って撃退するのが精一杯だった奴もいる。

 この世界のメイド喫茶にも色々と切り札はあるだろう。


「座して死を待つより、自分の手で未来を切り開く。それしか生き延びる道はないか」


 それでも何もしないと言うのは性に合わない。

 プレラーティは地球が好きで人類が好きで、人の可能性を信じている。

 でなければとっくの昔に何もかも放り出して並行世界に旅立っている。

 そう言う少女なのだプレラーティは。


「私は地球は好きよ。日本も好き。日本橋も好き。だから日本橋のメイド喫茶で魔女やってるのよ」


「……そうだな。そうだったな」


 笑みを浮かべてプレラーティは程よい暖かさに心地よい香りが漂う紅茶を啜る。


ハンドレッド編 END

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