ハンドレッド編その19・悪魔の目覚め
Side 北川 舞
=夜・陸上自衛隊駐屯地内・日本橋へと繋がるゲート近辺=
大まかに分けて部隊二つに分散していた。
突入班とゲート近辺を守護する部隊だ。
突入班には闇乃 影司が付いており、谷村 亮太郎も合流した。
宇宙犯罪組織ジャマルの大幹部を拘束したと報告してきた時は耳疑った。
大金星と言って良い。
洗脳されたフリをして迷惑を掛けて来たことは水に流してやってもいいだろう。
北川 舞は無線機片手にあれこれと指示を飛ばす。
施設の内部では捕らわれの身となっていた民間人を最優先で保護。
谷村 亮太郎や闇乃 影司がマジックアイテムを駆使して放り込んでいる最中だ。
何でも建物や風景、自然のジオラマ、ミニチュアの様な物に人が入って生活できるマジックアイテムがあるそうなのだ。
それを使って次々と裏技的に保護していっているらしい。
また基地の警備システムは闇乃 影司が掌握。
だが極秘のデーターなどは物理的にネットワークから遮断されているようだ。
ガーディアンズの人間としては出来る限り確保したい
この駐屯地の自衛官達も状況を知り、離反して自分達に協力してくれているのも大きい。
訳ありの問題児の自衛官も多いが、中には脅迫されたりしていた自衛官も大勢いたのだ。
闇バイトで募集していたらしい人員達はパニックを引き起こして銃を乱射したり、ドローンと一緒に襲い掛かって来たが、百体の巨大怪人の進撃に巻き込まれて死にそうになってて、もはや敵も味方もない状況だった。
(本当はもっとスマートに行くつもりだったんだがな……まあ命があるだけマシか)
敵の策略で突然異次元空間に飛ばされると言う状況。
五体満足で生還出来たのが奇跡だ。
「我々も協力する!!」
「自分達も我慢の限界だったんだ!! これぐらいはさせてくれ!!」
この駐屯地の惨状を知っていながら勤務していた自衛官も今は救助している。
流石に巨大怪獣が何十体も暴れている所を見せられて目が覚めたのだろうか素直に投降して避難してくれた。
『撃て撃て!!』
『殺せ!! 全員殺せ!!』
『皆殺しにしろ!!』
だからと言って全ての人間が素直に投降してくれたワケでもなく、ドローンや顔が異形化した兵士、デビルズカードで怪人化した奴などもいる。
巨大怪獣が暴れ回る中で戦うなど、正気の沙汰ではないが、そうでもしないと日本橋に雪崩れ込んでしまう。
それだけは避けたかった。
「あれは?」
などと思っていると日本橋側のゲート入り口からライドセイバーZが現れた。
続いてパワードスーツ部隊にライドセイバー軍団がゲート内部に入り込んでくる。
ジェイミー・ゴードンや工藤 怜治もいた。
民間人らしき姿も多い。
此方も連戦続きで披露困憊、そそろそ限界に近く、猫の手も借りたい状況だがこれはいいのかな? などと一考するも、負けは人類の滅亡に繋がる戦いだ。
亮太郎に何か言われそうだが、愚痴言われるぐらいなら安いもんである。
「工藤君だったか? 正直助かった」
「北川さん……こっちも限界に近いけどな……勢いに乗じてとんでもない場所に来ちまったな」
などと言いながら工藤 怜治は相手を殴り飛ばす。
本人が言う通り動きにキレが無くなってきている。
救援に来たライドセイバー軍団も根性で戦っているような状況だ。
だが他の救援も来てくれている。
第一次世界大戦や第二世界大戦の戦車、昔の特撮番組に出て来そうな悪者戦車まであった。
何やらヘンテコなモアイやらピエロの怪人に安っぽい戦闘員が戦ってくれている。
しきりに「自分達は味方です!!」、「信じてください!!」と言いながら戦っていた。
2頭身の侍っぽいロボットやらジークンドーの開祖みたいな黄色いトラックスーツを着込んでいる顔の画風が世紀末な人(*デビルベアー団の怪人)も戦ってくれている。
喜劇的な勢いで敵は倒されていく。
彼達が来てくれた御陰で戦況は盛り返した。
☆
Side 藤崎 シノブ
=夜・陸上自衛隊駐屯地敷地内=
メカデスはテレポート、カオスも転移魔法で逃走した。
ファイターレッド、桜井 あきらもファイターロボを呼び出し、キャロルは空を飛び回って空中にいる巨大化怪人に攻撃を加えていた。
『どりゃぁああああああああああああ!!』
襲い掛かって来た巨大怪人への胴体への飛び蹴り。
本来ならサイズ差があり過ぎて、ダメージにもならないが、体がくの字に折れ曲がり50m級の巨体が空中へと吹き飛んだ。
まるでバトル漫画のようにシノブは素早く吹き飛んだ先へと先回りし、サッカーボールのように蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた巨大化した怪人は他の怪人へと思いっきり激突。
絶命したんじゃないかと思われる光景。
そこへ追撃、両足のドロップキックが炸裂し、爆発が起きる。
某立ちしていた他の巨大化怪人も地面に叩きつけるようにして殴り倒した。
「やるじゃないボウヤ。私も本気を出すわよ」
そう言ってオカマのワンさん巨大化した怪人の顔面を蹴り飛ばす。
どうやら地球も魔境だったらしい。
地面に落下しながら次々と拳や蹴りを入れて——巨大化した怪人は崩れ落ちる。
特に疲れた様子もないワンさん。
「マジカルコマンドーの歴史は2000年。この程度、造作もないわ」
『1世紀からあるんですね、マジカルコマンドー』
西洋の神様の誕生年ぐらいにマジカルコマンドーは誕生したらしい。
日本はまだ弥生時代である。
ヨーロッパはローマ帝国とかの時代だ。
「体も温まって来たわね——ラブリービーム!!」
などと言いながらハート型の光線が巨大怪人に着弾。
纏めて爆散した。
シノブやワンさんなどは他の人達が苦労して一体倒している間に数体楽に倒している状況。
形成は一気に優勢へと傾いていく。
☆
Side アルティアスレオナ、火野 エイコ
=夜・陸上自衛隊駐屯地敷地内=
「フェイスクラッシャーネ!!」
ジェイミー・ゴードンは巨大化かした怪人は後頭部からラリアット気味に腕を叩きつけるようにして地面へと巨大な頭部を叩きつけるフェイスクラッシャーをかます。
やはりいた星条旗モチーフのアメリカン風、爆乳プロレスラーのスターマスクもプロレス技、ブレーンバスターの状態へと持っていき床へと叩きつける。
「あーもう、これどう責任取ればいいのかしら……」
などと言いつつ、敷地内にしつこく現れる通常サイズの怪人に対して空中をエアウォークして顔面を蹴り飛ばす、シャイニング・ウィザードを放つ。
まるで面白いように怪人は吹き飛んでいく。
そして背後では少女Aを名乗ったアイドルが元気が出る不思議な歌を歌う。
顔は帽子にサングラスと雑に変装しているが衣装は黒のアイドルっぽい服装で、戦闘機のパーツを彼方此方に搭載したメカ少女然とした姿になっている。
天川 マリネ・アーマードフォームだ。
(あんな真似されたら巨大ヒーロー顔無しだな)
と、巨大ヒロインのアルティアスレオナと一体化している火野 エイコはどう反応すればいいのか、リアクションに困っていた。
(ああ……私も強くならなければ。だが今は——)
巨大ヒーロー、アルティアス・レオナは力を振り絞り、巨大化した怪人の一体を倒す。
体に元気が湧き出る不思議な歌の御陰で敵は弱体化していき、活動限界が延長している。
まだまだ戦える。
『クソッ!? クソッ!? 何なんだ!? 何なんだお前達は!?』
ヒロイックな正義側の赤いヒーローロボ然とした巨大怪人が動揺している様子だった。
ハンドレッドの怪人だ。まだしぶとく生き残っていたらしい。
本来ならとっくに日本橋は業火に包まれ、自分達の天下だった筈だ。
にも関わらず、こうして誰も彼もが立ち塞がって来る。
どうしてか分からなかったようだ。
『人間って……愚かじゃなかったんだな……』
火野 エイコは意外な事を知った。
人間は愚かだ、傲慢なのはどうしようもないぐらいに思い知らされて生きて来た。
いい人間もいるのは理解しているがそれでも世の中はそう言う人間ばかりではないかと悟ってしまうぐらい、現実は過酷だ。
だがそれも間違いだった。
今の世の中を正そうと動く人間、それを良しとしない人々、よりよい明日を願って頑張る人達は大勢いるのだとエイコは知った。
きっとそれはエイコだけではないはずだ。
☆
Side 天川 マリネ
=夜・陸上自衛隊駐屯地上空=
少女A名義で雑な変装をしながら、白のミニスカへそ出しのちょっと大人っぽいアイドル衣装と人型、戦闘機形態、中間形態と三段変形しそうな白いロボットのパーツがついたようなメカ少女と化してマリネは歌う。
背中にウイングがついていて目元を緑のバイザーが覆っていた。
簡潔な説明によると自分にはアイドルだけでなく、特殊な素養があるらしい。
自分の歌に力があるらしい。
それで手助けになるのならと思い、マリネは歌う。
(私でも亮太郎たちの手助けになるのなら)
と、願いを込めるマリネ。
彼ならきっと、どんな修羅場でも帰って来る。
だから歌って輝こう。
それが自分に出来る精一杯だから。
歌に精一杯の力を籠めるマリネであった。
☆
Side 研究員たち
=夜・自衛隊駐屯地、地下極秘エリア=
戦いの余波は地下の極秘エリアにも届いていた。
世間で明るみになれば問答無用でぶっ殺されても文句は言われないだけの所業はしている。
それだけの自覚はある研究者たちは規律もへったくれもなく、ただ自己保身のために動いていた。
『駐屯地の自衛隊の隊員が離反!!』
『駐屯地の司令官も人質を奪還されて此方に襲い掛かってます!!』
『此方の保有戦力は七十%は音信不通!!』
『巨大化した怪人が次々と倒されて行ってます!?』
『ふざけんな!! どれだけの金と労力を継ぎ込んだと思ってるんだ!?』
悲鳴のような報告が彼方此方から上がる。
既にガーディアンズの隊員達と混じって警察や公安、自衛隊までもが協力して攻め込んできている。
頼みの綱の巨大化した怪人はまるで歯が立たない。
このままでは敗北。
陥落は時間の問題だった。
抵抗する人間も谷村 亮太郎や闇乃 影司、前嶋刑事や緒方 ミツルたちに取り押さえられていく。
☆
Side 赤霧 キョウマ
=陸上自衛隊、地下極秘エリア、最重要機密区画=
最重要区画。
分厚い隔壁で何十にも厳重にロックされた場所。
廃棄された実験施設の一つ。
「本当に大丈夫なのか?」
「構うもんか!! 一生牢屋にぶち込まれたくなかったらこいつを解き放つしかないだろ!!」
ある研究員達は化け物を解き放とうとする。
赤霧 キョウマはそれを後ろで見つつ一世一代の懸けに出た。
ハンドレッド計画の一つ。
単体の性能を極限まで強化した個体。
ハンドレッド・デビル。
闇乃 影司の細胞技術を使って製造された化け物、メタルビーストの技術をも投入されているそれ。
強化、進化に成功しすぎて、一度起動すれば地球その物が危険な生物。
「ギャッ!?」
「ヒッ!?」
隔壁のロックが解除されて生き、そこから金属の触手が迫りくる。
居合わせた研究員達は一気に金属の触手に絡めとられ、隔壁の奥からやって来た生物に吸収される。
「こんな研究するんじゃなかった!?」
「逃げろ!?」
「お、おお、お母さん!?」
研究員達は逃げようとするが触手に絡められて次々と吸収されていく。
赤霧 キョウマは両腕を広げる。
『お前を吸収して今度こそ終わらせてやる!!』
食うか食われるか。
赤霧 キョウマは吸収を試みる。
☆
Side 藤崎 シノブ
=夜・陸上自衛隊駐屯地=
地下から湧き出て来た大量の金属触手。
次々と巨大化した怪人が吸収されて、人間態に戻っていく。
それを諦めずに救助を続け、魔法で吹き飛ばしながらシノブは退避を呼び掛けた。
『今度はなんだ!?』
そして地下から何かが突き破るようにして出て来る。
巨大な腕だった。
大地を突き破り、周辺の建造物を破壊し、そいつは出現した。
(いや~死ぬかと思ったよ)
(谷村さん、大丈夫ですか?)
(何とかね。影司君がいなかったら見捨てて脱出しないといけないところだったよ)
飄々と何時もの調子で喋っているが、かなり危機的な状況だったようだ。
地下から現れた怪物——50m以上の化け物。
上半身は二本角の翼を生やした赤い悪魔、下半身はクモのような生物。
今も尚、巨大化したデビルズカードの怪人のエネルギーを吸い取って巨大化して行っている。
100mを超え、150mサイズにまで成長している。
鑑定魔法にはこうなっている。
ハンドレッドデビル。
ハンドレッド計画の別プラン。
失敗作。
対闇乃 影司用生物兵器、メタルビースト。
デビルズカードの技術を使って限界まで強化された個体。
投入されたデビルズカードの数は100枚。
現在暴走状態に陥っている。
(この国は本当に何処まで腐ってるんだ!?)
そして更に分かった事があった。
(赤霧 キョウマを吸収している!?)
赤霧 キョウマは吸収されているそうなのだ。
だが見た感じ自我はあるようにも見えない。
ハンドレッドデビルに取り込まれたのだろう。
などと驚愕している間にもハンドレレッドデビルは角から雷撃の嵐を降らして、破壊を振りまく。
慌てて巨大戦力たちがシールドを張り、地上に展開していた生身の人々を守るためにガードする。
(まずい!?)
続いて全身からミサイル、レーザーを乱射。
大きな口元から極大の破壊光線を撒き散らす。
巨大戦力が皆を守っていなければ死人が大勢出ていただろう。
(早く何とかしないとまずいな……)
現在200mを突破。
今も尚、天高く成長中。
魔法を全力で放って倒そうにも、下手に倒したら駐屯地全体を巻き込んでの大爆発なので、出来ない。
だが弱点はあるらしい。
天川 マリネの歌。
浄化魔法。
光魔法。
宇宙犯罪組織ジャマルが前回の戦いで出したデスガロイアと言うロボット怪獣がいたがそれと同じ要領で弱体化可能との事だ。
『やるべき事は決まったな』
(ああ。浄化魔法を最大出力で注ぎ込む)
二人の勇者は動き出した。




