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ハンドレッド編その18・逆襲の日本橋

Side 黒川 さとみ


 =夜・大阪日本橋、オタロードにて=


 黒川 さとみは変身していた。

 白き翼の戦乙女の様な鎧の騎士、ライドセイバーフェザーに変身した。

 他のクラスメイトもライドセイバーに変身している。

 戦闘員相手を時代劇の主役のようにバッタバッタと薙ぎ倒していった。


 前に変身出来たのはライドセイバーZの御陰だ。

 そしてが全に居たのは——ライドセイバーZだった。


『状況が状況なので変身してもらいました。力を貸して欲しい』


 マゼンタカラーで幾何学的な模様の、バーコードのような個性的な外観の戦士。

 胸に描かれたZマーク。

 平成ライドセイバー10番目、ライドセイバーゼット。

 変身者は渡井 ソウジ、並行世界の学生である。


『別にいいけど、どうしてここに? たまたま通りかかっただけ?』


『メイド喫茶の店主に頼まれただけ』

 

『ああそう』


 メイド喫茶の店主と聞いて、並行世界跨いで特定の人物を呼びつけられる人物と言えば自分がアルバイトしているメイド喫茶の店主、ヘレン・P・レイヤーだけだろう。

 

「もう!! 私が留守にしている間に勝手に暴れてくれちゃって困るわ~」


 ふと近くでオカマのメイドが戦闘員相手に暴れている。

 ツインテールにキレイに切り揃えられた濃い髭、男らしい面構え、恵まれて鍛えられた体。

 腹筋と大胸筋丸出しの黒いミニスカメイド服に丸太の様な図太く鍛え上げられた両腕に両足。

 格闘漫画のキャラが無理矢理メイドのコスプレをしている感がある。

 名前はワンさん。

 メイド喫茶ストレンジの人気店員でマジカルコマンド―なる怪しげな拳法を使う。

 一撃で戦闘員の群れが倒されて生き、先程までの自分達の苦労は何なんだと言いたくなるようなふざけた強さだった。


「うん? この気配はさとみちゃんじゃない」


『あっ、気配で分かるんですね』


「もちろんよ。ウチの店の可愛いエンジェルを見間違えるワケがないわ。色々と修羅場に巻き込まれて魅力が上がったんじゃないの?」


『そ、そうですか?』


 褒められて悪い気分はしなかった。

 そして背後からさとみを襲い掛かろうとした戦闘員はワンさんの拳で一撃KO。

 機械タイプだったらしく、頭部の破片と一緒に機械のパーツが後方に飛び散る。


「だけど今は戦闘中、気を抜いちゃダメよ? シノブに認められたいんでしょ?」

 

『はっ、はい!!』


 もうこれで動じなくなった辺り、黒川 さとみも段々と染まって来ていた。

 

『それはそうと、あの巨大なゲート? は一体? それにアレって巨大怪獣に巨大ヒーロー? 巨大ロボもいますし?』


 でんでんタウンの方角に現れた巨大ゲート。

 そこには巨大ヒーローに巨大ロボ、巨大怪獣の群れが見えていた。

 巨大な化け物の群れがこの街に雪崩れ込んだら一溜りもない。


「まあ相手の力を考えればこれぐらいは出来るわよね」


 と、ワンは冷静に分析する。

 相手は宇宙人だの異次元人だの異世界の住民だ。

 地球上の離れた場所に繋がる広いトンネルぐらいは作れるだろう。


「ほら、意識切り替えて!! 反撃に出るわよ!!」


『は、はい!!』


 ワンは皆を引き立て、次々と戦闘員を一撃で蹴散らしていく。

 胸に7つの傷がある世紀末拳法家みたいだ。

 動きが残像でしか終えず、拳が見えない。

 人間どう鍛えればこうなるのだろうかとさとみは首を捻る。


「数が多いわね。ここはマジカルコマンドーの奥義、ラブリービームでいくわ!!」


 両手でハートマークを作り、ピンク色の光線を放つ。

 敵の一集団が派手に爆散した。



 Side 工藤 怜治


 =夜・大阪日本橋、オタロード周辺=


「どうにか生き延びたが……まだ残りがいるな」


「化け物やなアンタも」


 戦闘員の首根っこを掴み、工藤 怜治は根性で殴り倒す。

 藤波 リカは肩で息をしながら呆れていた。


「こんな事ぐらいでしか役に立てねえような男だからな」


「無茶すんな……しかし一体どんだけ敵おるんや? 何か変なゲートの向こう側から怪獣が来ようとしてるし」


「流石に巨大怪獣相手にすんのはキツイが、だからってコイツらも放置できねえだろ」


 警察も周辺の人員を全て駆り出しても尚、倒しきれていない。

 本来なら自衛隊とかが出動しなければならない事態だが、政府がマトモでも対応は難しいだろう。


「まあいねぇ連中に対して文句言ってる暇もねえ」


「はあ……チームのリーダー辞めてからの方が修羅場に巻き込まれている気がするわ」


「チームに戻ればいいじゃねえか」


「チームのメンバーの将来考えて辞めたんよ。そう言うワケにもいかへん」


 周囲ではメイド喫茶の店員、毒島 リンカや大阪日本橋バスターズのサバゲーチームなどが必死に銃を手に戦っている。

 だがそろそろ弾も尽きて来たのか、銃を放り出して徒手空拳で戦い始めている隊員も出始めていた。

 

「お互い損な生き方してるな」


「まだ死ぬつもりは無いよ。それこそ無責任や」


「そうか。俺もまだ死ぬつもりはねえ。勉強頑張って大学行って、夢とか目標とかを見つけてみせる」


 二人は駆け出す。

 敵は様々な種類の戦闘員。

 数だけは本当に多い。

 倒しても倒してもキリがないが、それで戦わないと言う選択肢はない。



 Side 宇藤 タツヤ


=夜・大阪日本橋、オタロード南側、でんでんタウンへと続く路地=


 大柄の殺し屋―—現在休業中、実質廃業しているような感じではあるが。

 宇藤 タツヤも何だかんだで騒動に巻き込まれてドンパチしていた。


「たく、最悪だ。バチでも当たったのか……」


 切り傷が増えたり、敵の光線兵器やらに撃たれたりし、それでも必死に戦っていた。

 殺し屋なんて言う裏家業の人間がマトモな死に方は出来ないと薄々分かっていたが、大阪日本橋で地球外からの侵略者相手に戦って死ぬかもしれないこの状況で、タツヤは(まあ、人様に誇って死ねる分まだマシだな)などと思った。


「さっさと逃げれば良かったし、ヤキが回ったか?」


 結局のところ、自分は殺し屋に向いてなかったのかもしれない。

 感情を殺して殺し屋らしくあろうとして、プロの殺し屋として振る舞ってきたが、何だかんだでヒーロー願望みたいなもんとかあったんだろう。

 

「ああクソ、巨大怪獣まで来てやがる……黙示録的なアレか?」


 状況は末期的だ。

 宇宙犯罪組織ジャマルとの最終決戦の報道映像は見たが、まさか間近でそれに近い体験をする事になろうとは思わなかった。

 敵の目的は分からないが、出入り口近辺のこの街は成す術もなく怪獣に蹂躙されるだろう。

 逃げようとしても特撮物世界から飛び出して来たかのような雑多な種類の戦闘員の群れに阻まれて逃げる事も出来ない。

 

(まあそん時はそん時だ。A事件の時みたいになるようになれだ)


 少女A事件。

 変態親父どもがアイドルの体目当てのためだけに街を焼け野原にしようとした事件。

 あの時も場の流れでどうにかなった。

 先日のハンドレッドの騒動だってそうだ。

 ある種の神頼みだな、この街の底力に期待しよう。



 Side 魔法少女系動画配信者・リオ。


=夜・大阪日本橋、でんでんタウン周辺=


〇マジで終末的な光景になってない!?


〇本当にこれ大丈夫!?


〇日本橋がガチで戦場になってるって……


〇てかあのゲートの向こう側も状況が異常なんですけど——


〇巨大ヒロインに巨大ロボに巨大怪獣だらけ?


〇日本橋狙われ過ぎてない?


〇いいか!? マジで日本橋に行くなよ!? 被害が増えるだけだから!?


〇自衛隊は何してんだ!?


〇警察はもう出動してるけど手が単純に足りないんだよ!?


〇そもそも自衛隊は前の事件で被害受けすぎて未だに回復出来てないんですけど!?


〇駐屯地全滅に攻撃部隊も危うく全員死亡だったからな。


〇大阪府内の自衛隊はスグには動けん——


〇と言うか今回の事件、自衛隊が一枚噛んでるとか。


〇自衛隊なにやってんの!?


〇同情して損した!?


〇警察もそうだけど、自衛隊も何やってんだか……


〇そもそも日本政府自体が国営悪の組織ですしね。


〇今は悪口並べ立てるよりこの状況どうするかだろ!? 


〇てか、リオさん!? 生きてます!? リオさーん!? 


『ごめーん。流石にコメント見ながら戦って、人助けとか無理だから!! 後でじっくり見るから!!』


 空中を飛び回り、炎の魔法や氷の魔法、風の魔法、雷の魔法を使って次々と戦闘員を蹴散らしていくリオ。

 深夜帯のカッコいい系の魔法少女らしかった。


『本当にね!! 日本のアニメに出て来るような魔法少女とかに憧れてたんですけど、いやーなってみると大変だねこれ!!』


 などと言いつつ必死に魔法を使用して倒す。

 爆発魔法で戦闘員達を吹き飛ばした。 

 あまり強力な魔法は使えない。

 街に被害が出るし、逃げ遅れた人々が店に立て籠もって必死に耐え忍んでいる。

 そこへさらに追い打ちを掛けるようにドローンや銃火器で武装した兵士がゲームの向こう側から雪崩れ込んで来ている。

 兵士は顔が異形化、怪人化していて暴走状態に陥っていた。


◯いいから身の安全を優先して!?


◯でもどうにもならないし、誰かが戦わないと!?


◯何だあれ?


◯うん?


◯援軍?


◯パワードスーツ部隊?


◯何処の部隊?



 Side ヴァン・テスタロッサ


 =日本橋外部・指揮車両


 欧州の秘密組織財団。

 そのトップのヴァン・テスタロッサ。

 自衛隊が所有しているパワーローダーより、パワードスーツに近いパワーローダーによる部隊を日本橋に投入した。

 機種名はカリバーン。

 白と金の塗装に鋭角的な3角形の角。

 SF的な騎士を連想させるデザイン。

 左腕の丸い楯に手にしたビームサーベル。

 街の被害を避けるために接近戦のみでの戦闘だった。

 とある半永久機関の搭載によるビームサーベルで敵を次々と斬り捨てて行く。

   

 その様子を金髪の美少年、ヴァン・テスタロッサはモニター越しにじっと眺めていた。

 

「彼達にはすまない事をした。だが間に合って良かった」


 これは人と人同士の戦いではない。

 地球の命運を懸けた戦いなのだ。

 敗北者は無慈悲に滅ぼされるだけ。

 だから敗北は許されない。

 本来なら戦闘機や戦車も送り込みたかったが、パワーローダー部隊と歩兵部隊を送り込むのがやっとだった。

 それだけでも国際問題レベルだが、今の情けない日本政府は少女A事件の時と同じく黙認するだろう。


 そもそもにして今の日本政府は未だに以前の事件の事後処理に追われて、異世界の存在も自衛隊の反乱云々も把握できていなかったりするのが一定数いる。

 解決を期待するだけ無駄だ。

だからこそ自分達がこうして動いた。

 


 Side 愛坂 メグミ


「どうにか助かったみたいね……」


 謎の増援部隊が来訪。

 どうやら味方らしい。

 流石にきつかったので一息つく。

 何時の間にか背格好が胸の谷間と腹部周りが露出している、何時もの試合用の白いハイレグレオタード衣装のコスチュームになっていた。

 何処からともなく飛んで来た謎の不思議アイテムでこの姿になったとしか言いようがない。

 学生女子プロレスラーで、宇宙犯罪組織ジャマルの事件や少女Aの事件で暴れたジェイミー・ゴードンやスターマスクも同じようなアイテムであの衣装に変身して超常的な力を身に着けたのだろうかと勝手ながらに思う。

 

(このまま休みたいけど、まだ戦ってるのよね……)


 敵の数は目に見えて少なくなった。

 日本橋内の敵を倒すのも時間の問題だろう。

 だが今度は謎の巨大なゲートの向こう側から敵が押し寄せてきている。

 銃を持って頭部だけ異形化した兵士に軍事用のドローン、巨大怪獣の群れ。

 それを防ぐために巨大ヒロインや巨大ロボットが必死に戦っていた。

 もう軍隊でも動かさない限りどうしようもない。

 ハッキリ言って人一人がどうこうできる段階を超えてしまっている。

 それでも日本橋の人々は諦めが悪いらしく、それぞれの戦いを続けていた。

 自分の出来る事を精一杯行う。

 生きるために足掻く。

 その行為そのものに良いも悪いもない。 

 生物として当たり前なのだ。

 

 彼女も知らず知らずのウチに走り、大きく跳躍してまだ居た敵の頭部に飛び蹴りをかます。

 その勢いでそのままライドセイバーに変身したクラスメイト、黒川 さとみに駆け寄る。

 少女A事件の時と同じならば、やたら胸が大きい細剣で戦う白いライドセイバーが黒川 さとみだ。


「大丈夫黒川さん?」

  

『先生、凄い格好で来ましたね』


 流石に自分の担任が爆乳揺らしながらハイレグレオタード衣装の女子プロ衣装で暴れているとは思わなかったらしい。

 さとみも戸惑いを感じられた。

 言うても彼女もシノブとのデートの時は露出に走る傾向があるのでどうこう言えるかは微妙である。


「何か変身アイテム飛んできてそれで……叱るのも何も詳しい話は後よ」


『ああ、はい』


 あまり背格好とかどうこうとかツッコミを入れ始めるとプーメランの応酬になるので黒川 さとみは何も言わなかった。

 バリバリの軍事用パワードスーツの群れの中に、愛坂 メグミの教え子たちがライドセイバーに変身してのライドセイバー大戦状態。

 厳しい評価を受けるお祭り特撮春映画みたいな状況になっていた。


 そこへ更に生身勢や女子プロレスラーやらギャルな魔法少女が入り交じりカオスが深まっていく。 



 Side 長谷川 千歳


 自分はこう言うのには向いていない。

 金で買える欲しい物は全て手に入れた少年、長谷川 千歳。

 緑髪のお下げヘアー、アホ毛が飛び出ている。

 線が細く整った顔立ちで眼鏡を掛けていて文系の女の子にも見えなくもない。

 相方の赤毛で後頭部にシニヨン(お団子さん)の背が高めて体格もアスリート系の胸が大きめな元自衛官の女性、佐伯 美津子が必死に戦っていた。


「で? 逃げないんですか千歳様?」


 挑発する様に美津子が言う。

 千歳は「ハァハァ」とバテていた。

 金は幾らでも増産できる少年、長谷川 千歳。

 だが荒事とかそう言うのはからっきしダメだった。

 ステータスは運とか賢さとかに極振りして後はからっきしである。

 

「そもそも……逃げたくても逃げられないから、こうして応戦してるんだろうが……」


 体をプルプルよ産まれたての子鹿のようにして言い返す千歳。

 メイド喫茶辺りに避難しようと思ったが、流されるがままに流れて何時の間にか騒動に巻き込まれていた。

 宇宙犯罪組織ジャマルとの一戦の時もそうだった。

 今は大分巻き返していて、離脱出来そうな感じになっていた。


「職場に戻る」


 と、千歳は決断する。


「戦って勝った後の戦後処理だ。聖翔学園のお嬢様方とかも動かして金を募る」


「寄付でも集めるんですか?」


「人の善意頼みの仕組みは長続きしない。ウクライナとかそうだったろ。色々と儲け話を転がして日本橋の経済活動を活発化させる。I市の連中もいるし、この機会に政府とも渡りをつける」


「でも、今の日本政府って信用できるんですか?」


 もっともな意見だ。

 国営悪の組織とはよく言ったものだ。

 まともな連中も現状把握すら出来ていない可能性すらある。

 

「だがやつらの富は惜しい。そいつをどうにかして吐き出させる」


 どの道自分は札束で殴る事しか出来ない人間。

 やれる事は限られている。

 それを羨ましいと言うが、貨幣経済は貨幣が使えるウチが花なのだ。

 滅んでしまっては貨幣はケツを拭く紙にもなりゃしない。

そうなる前に知恵を絞って抗う千歳であった。

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